グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第82話 兎と亀 前編


 ――2100年4月24日09時00分東京某所
 鉄斎少年は目を覚まし、隣の先輩少年を見る。 すでに布団は片付けられ、紙が置かれている。 内容を見ると他の任務に出かけたと書かれていた。
 小腹が空いたので、売店に買いに行くとバタバタと足音が聞こえた。 振り返ると医師や看護師、多数が入口で待っていた。
 ガラス戸が開き、多数の救急車が止まる。
 (一体何が、事故でもあったのか?)
 そう思いながら、チョコミントバーを買い食べ始める。 グンマー校名物アイスのハーゲンゲッツに劣る味に思わず顔を顰める。
 運び込まれた患者に目をやり、思わず声を上げる。 先日のミィーティングで会った人物達であったのだ。 病院前のテレビには、爆炎が上がる建物や道路が映る。
 死亡したのは、護衛対象の犯罪者だった様だ。 自衛隊及び、警察にも多数の死傷者が出ているとアナウンサーが告げる。
 プルプルとスマホが振動し、鉄斎少年は画面を見る。 【犯人はこの少女、確保せよ!生死は問わない】 赤茶色の髪に赤い瞳、ウサ耳少女が土煙の中に立っている。
 (生死を問わずデッドオアアライブとは)
 データをスクロールしていくと報奨金は5億とされていた。 思わず食べていたアイスを取り落としかける。
 (マズイな……誰にどれだけ送られたか知らないが争いになる)
 そう思いながら、鉄斎少年は自室に戻り白に金の首都圏の制服を着る。 向かった先は、爆炎が上がっている現場だ。
 ◆  ◆  ◆
 東京新橋駅、周囲は炎が上がり人々が右往左往している。 装甲車はひっくり返り、銃撃音が響き渡る。
 「ゴー、ゴー」
 銃を持った隊長がハンドサインを出す。  部下達は、慎重に襲撃者へ向かっていく。
 ヒュンっと風切り音がし、隊員の上半身と下半身が分割される。 他の隊員達も同じ様にバラバラと躰が分割される。
 「いったい、我々は何と……」
 隊長の首に糸が巻き付き、大地から躰が離れる。
 『自衛隊の対適合者部隊トゥフィッターの割には弱い』
 彼女は左手で持っていた糸線を右手で弾く。 ボキと音がし、隊長の首が折れる。
 『閲覧室ライブラに有った必殺仕事人的でカッコイイ』
 ブランと揺れる死体を眺めながら呟く。 国民を守る為の隊員とそれを害したウサ耳の彼女。 どちらが、正義の味方かは明らかである。
 「あんたが、極悪な賞金首か?」
 いつの間にか、ビルの上に少年少女達が立っている。 声を上げているのは、血気盛んな少年の様だ。
 『貴女達は、首都圏の警備局員?』
 「そうだ!大人しくお縄にっぐ」
 彼女の姿は消え、少年の目の前に立ち腹に拳がめり込む。 メシメシと音を立て、少年がマーライオンする。 前に倒れ込んだところで、右足で横一閃に頭を蹴飛ばす。 少年は、蹴られたサッカーボールの様に隣のビルに姿を消す。
 『馬鹿ですか?名を上げる途中で相手は待ってくれない、そして』
 隣のビルに堕ちた少年の名前を呼び、右手を出して叫んだ少女の右腕が吹き飛ぶ。
 『攻撃は、一人一人に向けるとは限らない。さらに』
 少女は、流れ出る右腕を左手で抑え止血をしようとする。 悲鳴を上げなかったのは、さすが適合者フィッターという所。  が、それこそ彼女の狙いだった。   ガッツン、骨を砕くような音と共に少女は顎を撃ち抜かれ宙を舞う。
 『世の中には、コンボという物が有ります』
 彼女は、自分の目線に堕ちて来た少女の腹を容赦なく右足で踵落としをする。 ベキベキっと嫌な音と共に、少女は階下に姿を消す。
 『さて、残りの皆さんは?ああ、すでに動けませんでしたね』
 残りの少年少女達の両手両脚には、糸が絡み付いている。 フラフラと揺れる彼等を蹴飛ばし、隣のビル内に蹴飛ばす。
 『首都圏校の警備隊というけど以外に弱い、貧弱、貧弱』
 空を見上げ、つまらなそうに呟く。
 『で、貴方は私を楽しませてくれるかな?』
 見上げた横顔をそのまま倒し、少年に声を掛ける。
 「グンマー校、十番隊隊長、前橋宇佐美まえばしうさみお縄に付け」
 メンタルギアの刀を出し少年は対峙する。
 『同郷の匂いがしたと思いましたら、柳生鉄斎やぎゅうてっさい君ですね』
 宇佐美と名前を呼ばれた彼女は口角を上げた。 

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