グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第72話 暗殺と少年の任務★

 2100年4月21日10時00分東京某所。 パシャ、パシャっとフラッシュが焚かれる。
 「ここも、撮っておいてくれ」
 「ハイ」
 刑事に頼まれた鑑識はカメラを向けシャッターを切る。
 『警部、朝から憂鬱ですね』
 「ああ、同僚と家族の死体を見るとはね」
 2人の男達は、シートに掛ける前の死体を見る。 男性が1人、女性1人、少年少女が2人倒れている。 白い白線で囲まれた所には、銃が置かれている。
 『無理心中か?』
 「その様です、食事前に発砲音が4回聞こえたそうです」
 テーブルには、4人分の朝食が用意されている。
 「朝の7時に発砲音がし、住民から通報が有り訪問した警官が発見」
 『で、ガイシャに悩み等の問題は……』
 「まだ、発見されていません」
 「後は、我々が捜査をしよう」
 言葉を遮ったのは、黒縁メガネに黒いスーツの男達。 冷たい目で、2人を見つめている。
 『お前らは……本庁の……』
 「分かって貰えて何よりだ!後の捜査は我々に任せろ」
 リーダらしき男が、部下達に指示を出す。 一目散に、私室に走り出す。
 私室にいた鑑識が、大声で何か叫ぶ。 【あんたら一体何を!証拠を!】 警部の部下が脚を向けるが、警部が腕で止める。
 「警部!」
 『分かった、所轄は下がらせて貰う』
 部下を引きずりながら、部屋から出ていく。
 乗ってきたパトカーに乗ると堰を切った様に部下が口を開く。
 「警部一体!彼等に任せたのですか?」
 『よく聞け!アイツ等は俺たちごと消す気だった』
 「どういう事で?」
 『あれが、自殺で無いという事だ……』
 「殺人……っというのですか?」
 『しかも、内部の上層部が関わっている』
 「警部はどうするのですか?」
 『様子をみる』
 そう言いながら、警部はアクセルと踏むと車を発進させた。
 ◆  ◆  ◆
 その頃、1人の少年が首都圏首席の部屋に呼ばれていた。 白と金が基調とした机や椅子は、派手であるが気品も備えている。
 「柳生鉄斎やぎゅうてっさい、出頭しました!」
 敬礼をするのは、柳生少年。
 <a href="//19656.mitemin.net/i235611/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235611/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 『躰は大丈夫か?元グンマー中等部首席君』
 銀髪を揺らし、朱い瞳で柳生少年を見る。
 「ハイ、白虎乙姫びゃこおとひめ首席。お陰様で心身共に大丈夫です」
 『では、君に依頼を与えよう』
 「行きなり僕に依頼ですか?」
 『そうだよ、我が校への忠誠を確かめようと思う』
 忠誠と聞いて、少年の顔がピクンと引きつる。 多くの場合は、非合法な任務等を依頼される。 少年には、まだその様な任務はした事が無かった。
 『安心したまえ、非合法活動では無い。護衛任務だ』
 「護衛任務ですか……ありがたいです」
 ほっと胸を撫でおろした所で爆弾が落とされる。
 『ただ、護衛対象が性犯罪者なんだよね……』
 「!?どういう事です」
 『これを見てくれ』
 部屋が少し暗くされ、映像が投影される。 先日までネットで話題だった、【少女ポルノ映像】の購買者一覧である。 大企業の関係者から、法を預かる司法関係者までラインナップされている。
 最後に、数名の中年男達が7名ほど写真が残る。
 「彼等は一体」
 『警察上層部と司法関係者……法の元に裁く必要がある人間』
 っと言葉と同時に2人の写真にバッテンが付く。
 『そして、2人は既に死んだ。家族を道連れにして……』
 「自殺ですか?」
 『ウン、表面上はね!ただ、奇妙なんだよね』
 映像が変わり、映し出されたのは信じられない光景。 【殺したくない!頼む!何でもする】銃を持った本人が叫んでいるのだ。 言葉に反する様に、手に持った銃が手足を縛った子供に向けられる。 発砲音と悲鳴と共に血しぶきが飛び、映像が消える。
 『こう言っている人が、妻と子供を惨殺しちゃうんだよね』
 「自殺じゃ無いじゃないですか!」
 『でも、死んでもいい人間だし。世間的には、自殺でも良いよね』
 笑顔で、柳生少年にいう。 乙姫は暖かい笑顔でなく、冷たい吐き捨てる様な笑顔を見せている。 思わず、柳生少年は後ろに飛び退く。
 が、後ろから誰かに掴まれる。
 「っという訳だ、柳生君。受けてくれるよね」
 「山手誉やまのてほまれ副首席、いつ間に」
 『で、受けてくれるよね」
 「は、はい」
 トストスっと柳生少年の足元に矢が刺さる。
 「よかった、君を処分し無くて済みそうだ」
 黒髪ロングに紫の瞳ヴァイオレットを笑わせ言う。 柳生少年は、思わず尻餅を着く。
 「男らしくしろ!では姫、ブリーフィングに行ってきます」
 『行ってらっしゃい!』
 ほまれは、柳生少年を引きずりながら出ていく。 残れた乙姫は、1人椅子に深く腰掛ける。
 『さて、グンマー首席……柳生少年を育成させて貰うよ』
 呟きながら見るのは、【勇者育成計画】。 【第一ステップ:適切な絶望を与えよう】っと物騒な事が書かれている。
 これは、首都圏を舞台に始まる物語プラン

「グンマー2100~群像の精器(マギウス)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く