グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第63話 地下にて★
3人は、暗い地下廊下を歩く。 ほのかに、光る翠色のライトが不気味さを醸し出す。 多数のケーブルが、床や天井を縦横無尽に走り回っている。
「賢治首席、此処に何があるのか知っているのか?」
「凛書記からは、未確認情報としては聞いている」
「何が有るのだ?」
「それはね……」
賢治は、巨大な鋼鉄製の扉を蹴っ飛ばす。 ガラン、ガランっと扉が中に転がっていく。 3人が中に入る。
「これは……いったい」
乙姫が、呆然とした顔をする。 それもそのはずで有る。 多数の少女達が、ガラス官の中に入っている。
ある者は、頭からツノが生えている。 またある者は、パンダの様な躰をしている。
<a href="//19656.mitemin.net/i235243/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235243/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> <a href="//19656.mitemin.net/i235245/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235245/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
複数の動物の因子が合わさっているのだ。
「ねぇ、乙姫さん。米国が最も得意とするのは何かな?」
「そりゃ、兵器開発と規格化された兵器の製作」
「その通り、米国とはそういう国」
「っという事は、彼女達は適合者?」
「違うな、人とビーストを合わせた人造人間」
賢治に言われ、乙姫は少女達の状態を見る。 適合者の半分……イヤもっとかも知れない。 そう、ビーストと同じ位に……異形な姿形をしている。
「まさか、奴らは……対ビースト兵器として」
「まぁ、そうだろうね、獣には獣という論理と親和性が高い女性を選んだ」
「酷いな……許される事では無い」
「そうだね、だから処分しちゃおう」
賢治は、スマホを制御盤らしい機械に置く。 ピリッとスマホから電気が発生し、制御盤が駆動する。 多数のデータが表示されたが、データ表示は消えていく。
やがて、ガラス管内に翠色の液体が入る。 少女達の躰は、塵の様に消滅していった。
「賢治首席、何をした?」
「全データとサンプルを処分した」
「彼女達を殺したのか!!」
乙姫は賢治の襟首を掴み、言葉を荒げる。
「彼女達に生きる道があるとでも?」
「くっつ!」
適合者でも無く、人間でも無い。 人造人間は、マギウスを微妙に入れ造られる。
人造人間は、人間を機械と合わせるのは合法。 人間と生き物、特にビーストを合わせた研究は違法。
意志ある生命体が2つ存在する状態で、マギウスを使った場合。 どちらか、意思が強いほうが片方を飲み込む。
それが、始めてビーストが発生した時の状況でもある。 人類は、ビーストに世界を破壊された。 危険性を孕む彼女達を世界は受け入れないだろう。
良くて、実験材料……。 最悪で、前線に投入されて駒にされる。
ギリっと乙姫は歯を鳴らす。 分かっている……分かっている。
「しかし」
「しかしも案山子も無い、苛立つ君に提案がある」
「何だ!?」
「此処の施設をまるごと吹飛ばしてくれないか?」
「分かった」
(そういう事か……私に見せたのも納得させる為)
乙姫は、両手で大剣を持ち真上に掲げる。 大剣は黒く変わり、心臓の様に脈を打つ。 床はベキベキと音を立て、ヘコミ始める。
乙姫の口調が変わり、古語を歌うように言い始める。
「汝ら深き深淵にて生まれ、苦しみ死んだ。我れ汝らを天に返さん」
今度は、床の全ての物が上に向かって上がり始める。 機械、書類、瓶詰めされた怪しい物体達。
「ちょ!乙姫さん」
刀を地面に刺し、上に飛び掛かった銃子の手を取る。
「昇天」
短い詞の後に、乙姫の脚元が光り床がメシっと音を立てる。 バリバリゴリゴリっと嫌な音が立て床が、上がり始めた。 再び、乙姫の足元が黒光りすると床は問答無用で上がっていく。 ベキっと音と共に、大地の軛から床が放たれた。
激しい衝撃音、金属が擦れる音から風を切る音に変わった。
「まさか、此処の場所ごと持ち上げるとはね」
「久しぶりに、奮発した」
「さて、大地に降りますか?」
「そうだね」
賢治が差した刀を強く握り、床が塵に変わり穴が空く。
「わぁ、空綺麗っていうか地球は蒼い!此処は、大気圏」
「そうだよ?」
「じゃアレは?」
何処かに飛んで行く、研究所を指差す。
「月に激突かな?」
「まぁ、人が住んでいないなら良いけど」
そんな事を言いながら、3人は大地に降下していく。
「宇宙って綺麗」
降下中に、彼等が見たのは失われた魂達の様に輝く星々で有った。 2100年4月18日22時30分であった。
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