グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第51話 アメリカンフィッター 中編


 金髪の少女は、エイミー。 薄い紫の少女は、中居屋銃子なかいやじゅうこ
 エイミーが、銃を銃子じゅうこに向ける。 音も無く、弾が発射され銃子に飛んで行く。
 弾の先の銃子は、フワッと躰を動かし避ける。 そんな、光景を見ているのは賢治と乙姫。
 「ねえ、賢治首席?」
 「何だい?」
 「エイミーって子やばいわね」
 「そうだね、やばいね」
 話をしているとオペ子が話に入ってくる。
 『彼女は、我が米国が誇る優秀な適合者フィッターですから』
 「エイミーって子の能力は、弾を無限に出せるって所かな?」
 乙姫は、右手で丸をつくりレンズを眺める様にオペ子に聞く。
 『さすが、首都圏首席。彼女は、銃と弾を出せる最高の兵士です』
 「そうね、兵士としては最高。適合者フィッターとしては、最低」
 『なっつ』
 「最初から、自らの能力を分からせるのは悪手」
 『悪手?』
 「底が見えてしまう。相手の子は銃を出したけど、能力は使ってない」
 『っつ!』
 オペ子は、エイミーの方を見る。 エイミーは、銃で気持ちよくパンパンと撃っている。 相手の少女は普通なら、当たってしまう弾を躱す。
 「何で、当たら無いのよ!」
 エイミーは声を荒げ、文句を言う。
 「貴女の能力は、これだけ?」
 避けなら、銃子はエイミーに質問を投げる。
 「そうよ!凄いでしょ!無限の弾で撃てるのよ」
 「そう残念……同じ銃のメンタルギアだから楽しみだったのに」
 銃子は、エイミーに向け銃口を向ける。 トリガーを引いた瞬間、銃口が火を吹き銃子の姿が消えた。
 「当たら無いわ!一体何処に!」
 エイミーが、周りを見たとき背後から声が聞こえた。
 「此処よ!では、先ずは両脚」
 背後に、銃を持った銃子が姿を現す。 同時に、エイミーからくぐもった声を出し膝を床に着く。 両脚から、血を流している。
 『エイミー!!』
 「まだ、勝負は付いていない」
 「ぐっつ、一体何を?」
 「次は、両腕」
 残酷な宣言がされ、エイミーの両腕の場所が吹き飛ぶ。 両腕から赤いシャワーが舞い散る。
 「最後は、頭それとも心臓?」
 静まり返った、訓練室トレーニングルームに残酷な声が響く。
 『エイミー!!みんなエイミーを助けて』
 オペ子が、周りの兵士達に指示を飛ばす。 兵士達が、エイミーに向かって走り出す。
 「邪魔しないで、欲しいですね」
 兵士達が、床に倒れる。 彼等も肢体から血を流し呻き声を上げる。
 『乙姫首席、賢治首席、彼女を止めて下さい』
 乙姫は、溜息を吐きながらオペ子を見る。 半分、落胆している様にも見える。
 「えーでも、彼女は一発も撃っていないよ」
 『でも、彼女の銃は火を噴きました』
 「噴いただけで、撃っていない」
 『!?』
 オペ子は、困惑の表情を浮かべる。
 「なぁ、賢治首席?そうだろ?」
 「……」
 「沈黙は、肯定と取ろう」
 乙姫は、嬉しそうな顔をし賢治を見る。 賢治は、笑顔を浮かべているだけ。
 (流石、乙姫首席。相手の能力を直感的に理解している)
 っと内心賢治は思っているが、顔には出さない。
 「銃を使うからと言って、弾を撃つとは限らない」
 『どういう事で?』
 「撃たれた弾を使うという選択肢も有る」
 『つまり、彼女の能力は弾を使うという能力?』
 「エイミーは、弾を生成し撃ちまくった。弾は何処に消えた?」
 『エイミーの弾は、消えなッツ』
 「君達の国●●●●では、銃弾●●は消えないだろ?」
 折りたたむ様に、話を進める。
 「なぁ、そうだろ?」
 乙姫は、銃子に顔を向ける。
 「まぁ、能力の一つはそうです」
 銃子が返答し、放たれた弾が現れる。 乙姫は、満足した顔をしオペ子に再度向ける。
 「我が国では、魔砲弾は消えます。銃大国の米国とは精神メンタルが違う」
 日本は銃刀法が有る為、実物を見ることは無い。 多くの人は、アニメを通して銃という物を学ぶ。
 アニメの中で、銃の弾は魔法で作られた能力者の力を圧縮という設定が多い。 その為、能力者が意識を失うと同時に弾も消えるという設定が成り立つ。 悪が死ぬ前に主人公へ弾を撃つが、悪が死に主人公が生き残る展開が出来る。
 一方、銃大国のアメリカは、銃といえば物理。 鉛の弾が、消えるという事は無い。 だから、映画で死にかけた主人公が悪役に意識を失いながら撃つ展開が出来る。
 『ッツ!何とか止められないのですか?』
 「分かった!あの子を惹きつけるから、その間に助けなさい」
 乙姫は、大剣を出し銃子に向かって走る。
 「今度は、私とお手合せ願おうか?」
 「ハイ、喜んで」
 銃子は、新しい遊び相手が増え嬉しそう声を上げる。
 「ヤレヤレ、2人とも建物を壊さないでくれよ」
 (乙姫も暇過ぎて、ストレスが溜まっているな……) 賢治は、肩を落とし諦めた声で注意する。 どうやら、2人には聞こえていなかった様だ。
 乙姫が大剣を振るうと壁が吹き飛び、警報が鳴り始めた。

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