グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第49話 朝の愚者は頭を抱える

  衆愚政治の高級玩具箱トイボックス、首相官邸。 執務室に浮かぶモニタには、多数の映像が映る。
 「昨日、現首相の孫が婦女暴行で逮捕された件で」 「保護された少女達は、グンマー校所属」 「現在は、NEO埼玉の国連軍基地に収容されています」 「この件で、凛書記は断固たる措置を取ると発表」
 映像には吊るされた少女達。 注射器を持ち笑顔で、【僕のソフが誰かか知っているのか?】と言う少年。
 自分の若い時に生き写しで、高校生時代から事業を立ち上げた自慢の孫だった。 既に過去系、過去形である。
 『で、私の愚かな孫は、生きているのか?』
 「はい、閣下」
 画面越しの見えない相手に、話しかける。 
 『此処で、食い止めないと我が政権は崩壊する』
 「ですが、閣下!政財界からも逮捕状が多数出ています」
 『分かっている』
 モニタでは、多数の名前と所属企業が映っている。 何れも、首都圏を拠点とする大企業の役員達。
 『馬鹿な奴らだ!あれ程、地下ポルノには手を出すなと言ってたのに』
 「どうします?」
 『息子含め適切な、法の裁きを受けさせる』
 「分かりました」
 通話が終え、フーっと現首相で阿倍野見玖須あべのみくすは息を吐く。
 (メディアがグンマーに同情的とは、不味いですね)
 グンマー校とメディア各社は、仲が悪い。 10年前の内戦時に、国営放送を含めメディアは政府を支持した。 結果、報復とも言える大規模空襲を受け社屋と人材を失った。
 それ以来、メディアはグンマーを目の敵にし非難をしている。 グンマーもメディアの無責任さを上げ、立ち入りを禁止している。
 それを煽り、自分の政権を維持して来たのが阿倍野見玖須あべのみくす。 今度は、メディアの目が一斉に自分の方に向く。 思わず、歴戦の政治家である阿倍野の顔が強張る。
 (だが、私はまだカードが残っている)
 っと思った阿部野は余裕な顔に変化させる。 モニタに映るは、日光Nikkyo安全Security保障局Agency、通称:NSAの情報。 情報によると兵士の招集や編成で、2週間を要するという事。
 (――2週間っつ!この間をやり過ごせば、政権を維持出来る)
 『愚かな国民は、気がつくまい。』
 人間という生き物は、和な時代は、内側の負を見る。 多くが権力者、有名な芸人や声優のスキャンダルだったりする。
 特に日本人は社会安定化の生贄として、誰かを犠牲にする。 それは、世間一般に虐めとして社会問題に挙げられる。
 『グンマーを悪にする事で、日本は纏まる』
 10年前、グンマーは廃墟から急成長を遂げた。 10年間、日本もグンマーに対する憎しみで第2次高度経済成長を遂げた。
 再び、世界2位の経済大国に返り咲いた。 グンマーを倒し、日本を一つにする。
 多くの政治家が、抱いてきた夢。 が5年前は、首席の暗殺を謀ったが返り討ちに有った。
 『今度は、グンマーを倒せば能登半島も手に入る』
 阿部野は、脳内で妄想を始める。
 グンマーを倒し、同時に能登半島を手に入れる。 それにより、グンマーの人材技術を奪える。 奪った人材や技術は、財閥系企業に渡せば友好活用できる。
 (財閥関係者も反攻作戦に、誘ったからな仕方が無いな)
 『そうすれば、私の政権は安定する』
 この場に、グンマーの凛書記が居たなら噴飯物だろう。 未だに、グンマーを攻める気でいるのだから……。 凛書記は、そういう甘い人間では無いのだから。
 そんな、甘い妄想を中断させるノック音がする。
 『入れ!!』
 「入ります」
 入って来たのは、精悍な顔つきの統合幕僚長。
 『珍しいな!君が来るとは』
 「ハイ、首相閣下。国連軍から内々に要請が有りまして」
 さっと便箋を渡す。
 『ほぅ、機密指定の紙媒体か……』
 封を切り、中身を読む。
 『何だと、こんな馬鹿な事が許されるとでも』
 「正式な国連の要請です。我が国に、拒否権はありません」
 阿部野は、頭を抱える。 便箋には、一体何が書かれていたのだろう。
 パラッと机に置かれた紙から、文章が見える
 ~~要請~~
 国連軍は、栃木の旧古河市を接収する 自衛隊の代替え地は、奥秩父。
 グンマーと話し合いで、古川を国連軍が管理する事で合意。 古河が、国連管理地に合わせ、グンマーは館林を国連軍に開放する。
 日本政府及び、南関東連合は速やかに移譲する様に! 移譲しない場合は、国連軍が強制執行を行う。 期間は2ヶ月を目処としている。
 ~~以上~~
 要請という名の命令。 思わず、朝から頭を抱える。
 だが、愚者の頂点しゅしょうは、ポジティブに考えた。
 (そうだ!2週間後にグンマーを倒し、古河を譲渡すれば良いんだ)
 時にポジティブな考えは、最悪な結果を産む。 阿倍野見玖須あべのみくすは、まだそれを知らない。

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