グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第45話 暴食の女王赤城


 名古屋空港内で、赤城朱音あかぎあかね副首席は腹を空かせている。 富山にて、業火絢爛ゴージャス・オブ・ヘルファイアを使った為である。
 業火の女神ヘルフレイアの呼ばれる彼女だが、燃やすには燃料が必要。
 必要な燃料は、姉川の自衛隊陣地で食べた5年分の燃料・食料・資材。 関西連合の絶対防衛要塞で食べた、約1年分の食料と食料と燃料・武器・資源。 此れが、1回の業火絢爛ゴージャス・オブ・ヘルファイアで必要な燃料である。
 グンマーにいる時は、ビーストを食べて満足させている。 ある意味で、ヘラクレス症候群の様な状態。 食べて燃やし、躰を持たせる事が出来ない。
 どっかの、擬人化空母とは違う事は彼女の名誉の為に言っておく。
 「お腹すいたなーー夜食、夜食」
 朱音は、呟きながら口にボーキサイトのインゴットを運ぶ。 パリパリポリポリと小気味よい音が響く。
 「流石、関西随一の名古屋空港、工場から空港まで全部有る」
 呟きながら、眼下に広がる風景を見る。
 表には、一般旅客機。 裏には、自衛隊や関西連合の戦闘機。
 更に奥に、ひっそりと何か置かれている。
 「フーンこれは何だろう?」
 朱音は、白い包装紙に包まれた物を見つける。 気になった彼女は、包装紙をペリペリと捲る。
 黒くて、曲線的なシルエットの全翼機。 B2戦闘機が、姿を見せる。
 「こ、これは……京都名物の生八つ橋!胡麻風味!」
 オイっとミリタリーファンなら言うだろう。 同重量の金と同価値といわれ、非常に高価な機体だ。 半世紀以上のステレス戦略爆撃について、朱音は知識はあった。 だが、空腹で生八つ橋の胡麻風味に見えた。
 「いただきます」
 この場に、責任者がいたら号泣するだろう。 朱音は、端からポリポリと食べていく。
 「オイシー、独特のタレに、ワッフルみたいなハニカム構造。流石、関西」
 タレというのは、レーダー波を吸収するグラファイト/エポキシ複合剤である。 ハニカム構造は、レーダー波を吸収する為の構造である。 そんな事を考えず、朱音はポリポリと戦闘機を食べていく。
 完食するに僅か30分……。
 「美味しかった」
 大量の食料を食べ、ようやく満足した様だ。
 「でも、もう少し食べたいな」
 朱音が、見つけたのは自衛隊の戦闘機。 現在の自衛隊が、使っているのはX2の心神と呼ばれる形。
 「始めて見る機体……美味しそう」
 別な機体にも目をやる。 垂直尾翼を持たず、下向きの水平尾翼で、双発クリップドデルタ翼機。 名称は、i3と名付けられている試験機。
 「いただきます」
 機体の翼をもぎ取って食べた。
 「ウェーー不味いーー。でも好き嫌いは駄目だね」
 我慢しながら、戦闘機をパリパリと食べる。 日本政府と技術者が、心血を注いだ機体が少女の口に入っていく。
 研究者達が見たら、発狂する光景であろう。 10分も持たずに、機体は食べられた。
 「口直しに何か食べたいなー」
 キョロキョロと周りを見渡す。
 彼女の瞳に映るは、遠くの製鉄所。 クンクンと鼻で匂いを嗅ぐ。
 「良い鉄とアルミの匂い、美味しそう」
 二ヘラと笑う口からは、ヨダレが流れ出す。 朱音は、脚元から炎を出し製鉄所の煙突に飛ぶ。
 高炉の投入口から中に入り、溶鉱炉の前に立つ。
 「今度は、熱燗でいただきます」
 息を吐き吸う。 大量のアツアツ溶けた金属が、朱音の喉を通る。 ジュルジュルジュルっと音と共に溶鉱炉内の金属が消失する。
 「オイシー、鉄の滑らかさ。流石、車で栄えた都市だけあるわ」
 朱音は、お代わりをする。 アッという間に、溶鉱炉内の溶けた鉄が消滅していく。
 「ハーツ、お腹一杯」
 ビールを飲んだおっさんの様に、声を上げる。
 「次は、入港した船かな?」
 呟いているとウーウーとサイレンが鳴り出す。 どうやら、溶鉱炉の異常を機械が知らせた様だ。
 「さて、帰りますか?」
 朱音は、周りの機械部品を取り敢えずつまみ食いし、逃げ出す。 逃げた後の高炉は、機械の制御を失い暴れだす。 高炉内で溜まった水蒸気が、大爆発を起こす
 名古屋随一の名古屋鉄鋼所で、爆発事故が起こる。 2100年4月17日23時30分の事であった。

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