グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第28話 富山大掃除 前編
21世紀は、米と新鮮な魚、酒の産地。 22世紀は、ビーストの生息地に変わった。
2085年、旧富山県はビーストの侵略が、九州と同時に起こる。 人々は、為す術無くビーストに襲われる。
自衛隊も対応する間もなく、撃退され長野方面へ撤退を開始する。 15年間に渡り、富山はビーストに支配されている。
街はビーストの糞や餌のゴミで、埋まっている。 占領しても、汚物を占領するような物で有る。
「全く、もって嘆かわしい。無能な大人のせいだな」
靴のウラから炎を出し立っているのは、赤城朱音副首席。 彼女の瞳に映るは、多数のビースト達。 右目の紅い瞳がより輝きを増し、躰が紅く光る。
「さて、まずは有峰ダム!」
右手に、朱い剣が生まれる。 朱音は、剣はダムへ向けて投げた。
投げた先には、有峰ダムが有る。 北アルプス・立山連峰から富山湾に注ぐ1級水系。 明治時代に、オランダ人技師のヨハニス・デ・レーケがこう言った。
『これは川ではない、滝である』
上流は急流で、豊富な水源地域と同時に暴れ川である。 有嶺と書き、【うれ】と呼ばれる程の【憂い】に通ずる地域。
そんな憂いが、2億2,200万立方メートル。 黒部ダムより10%程大きい。
それが、15年の歳月を経て総量は5倍程に貯まっている。 10億2,200万立方メートルまで、溜まっても壊れないのは奇跡だろう。 最新の技術で、改築されていたのが要因かもしれない。
だが、奇跡というのは、滅多に起きないから奇跡といえる。 ガツンっと音と共に、排水設備に剣が刺さる。 奇跡は砕かれる。
ドーンっと大爆音し、木々に止まっていた鳥たちが逃げる。 バキバキメシメシっと音を立て、ダムの壁が壊れ水が溢れ始める。
ダーンっと圧力が加えられた物が、破烈する音がしダムの壁が崩れる。 最初は、一箇所から始まり、周囲がヒビが入り始める。 メシメシ、ビキビキダダダン。
ついに、水圧に耐えられ無った壁が崩壊を始める。 飛び出した水は、コミケ時に始発から降りて来た人間の様に飛び出す。
時速300km以上の速さで、山々を下り始める。 アッという間に、亀谷温泉を飲み込み、立山線上に走り出す。 濁流は、開けた土地に広がっていく。
日本というのは、地震発生時に海で起こる津波に備えている国。 だが、背後のダムの決壊という所には目を向いていなかった。
アッという間に、立山町まで濁流は押し寄せる。 濁流の中には、ビーストや糞、餌の骨など多数が混ざっている。 汚濁に溢れた津波は、勢いを増し日本海へ爆進していく。
周囲にいるビースト達を巻き込みながら、やがて日本海へ流れる。
「素晴らしい!汚物共が流れていく!」
周囲に多数の剣を出し、朱音は投げ始める。
祐延・熊野川。 神一、久婦須川、室牧。 御母衣、鳩谷、椿原。 祖山、小牧、城端。 臼中、刀利。
全13ダムに剣が刺さり爆発する。 富山に向かい、濁流が押し寄せる。
大小なれど、山から起きた濁流は、廃墟の街々を襲う。 滑川市、富山市、射水市、日本海側へ流れる。
「大分、流れたか……どうだろ」
朱音は、富山市内に降下する。 地面は、水で溢れ多数のビースト達が転がっている。
足元では、魚がビチビチしている。
「わぁ、美味しそうな魚さん」
目を向けると魚が燃え上がり、塵と変わる。
「あら、忘れていたわ」
右目を瞑り、別な魚を手で掴む。
「ワイルドダゼっといえば良いのかしら?」
スマホで魚と一緒に、自撮りをしメールを送る。 暫くしてスマホが鳴り、通話腰にガミガミ怒られる。
「凛ちゃんわかったてってば、仕事するよ!」
通話を終え、スマホで全員に指示を出す、 朱音は右目を大きく開き、上空を見つめる。
上空に、巨大な丸い赤い円が展開される。 半径にして凡そ30km。
「業火絢爛」
その円は、大地にゆっくりと降り始める。 大地は燃え上がり、砂は液状化していく。
「世界は、暖かさで包まれる」
朱音の声と共に、富山周辺半径30kmが真っ赤な世界に包まれる。
2100年4月17日14時00分 旧富山市を中心に、半径30km以内の生命及び物が蒸発。 コードネーム、業火の女神が実行。
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