５

あれから１週間。
いつもの毎日から少し不思議な毎日へ変わった。オバナの数も順調に増やし、狩りに対しても足長おじさん的な何かだと思われているようで、集落のみんなで分け合って助け合う感じだ。意地汚く没収しようとする奴は黒い人間の集団に襲われてもらった。イエスウィーキャンだな。初日で半数程の数を減らしたのは驚いたが、逆に半分生きてた方が驚きだった。死んだオバナはＳＰに変換されて体内に帰ってきていた。表現が非常に気色悪いのは、この際置いておこう。ふと思った素直な感想。ある意味、ワガママを言わなければ無敵艦隊だ。基本３０人程度で動いてもらっていて、消えたら補填の繰り返し。ＳＰが人間にとってどれぐらい重要なモノなのかは不明なので、ＳＰの没収は基本行商や救援の兵から貰うようにしている。こんな辛い環境で頑張ってる集落のみんなにいらん迷惑はかけたくないのだ。後は、オカンが摘んできた薬草をさりげなく増やしたりして、なんとかオカンの食費を捻り出した。
で！！
３歳になった。謎の集団が冒険者から武器を没収して狩りを続ける日々のおかげで、かなり潤ってきた集落。食物に困る事は無くなってきた。
「あら、今日は猪豚が４匹もあるわ」「今日はご馳走だね！」
この頃になるとオバナの目撃情報も多数あるが、気にしたら負け的な強かさで村全体で甘えまくっていた。そんなこんなで俺も普通に話せるようになり、あまり心配させないようにしているのがバレているのか、意外としっかりしてきて安心してるのか、一人の時間もとれるようになってきた。相変わらず過保護に抱きしめられてはいるが、自由な時間が出来た事に喜びを隠せない。と、言うのもママウエは集落のみんなで農園を始めて自給自足に力を入れているからである。余裕が出来だした頃から種子などを買い取って畑を開拓したのだ。耕すのは夜中にオバナ達に手伝わせたけど。強いよ異世界人。俺ならすぐに諦めているような環境でも強く生きてる。
「コナン、いってくるわね？」「うん、行ってらっしゃい！僕も行ってくる！」「…うん。気をつけてね？無理は駄目よ？」「わかってるよ！大丈夫！」
テントが立ち並ぶ難民集落で、最近お手伝いを始めた。となりの婆ちゃんの畑の種植え作業だ。ヨボヨボのウエーブの癖毛が特徴のある白髪交じりのババアはいつもの優しい笑顔で迎え入れてくれる。
「コナン。ちゃんと来れたのかい。」「よゆーピースピース！！」「ったく、なんであんたはシルビアがいる時はいい子なのに離れたらこうなのかね・・・。」「気にすんなババア。早く種植えしようぜ！」「ったく。シルビアに告げ口しようかねぇ。」「そんな事してみろ！「棺桶に両足突っ込む事になるぜ」」「でしょ。はいはい。ったく誰がこんな言葉教えたんだろねぇ。」
うちの集落は最近になってテントの区画毎に町内会のような派閥が出来始めた。俺が住んでる区画の長はこのババアで魔物の毛皮や魔石の販売売上げを管理してくれてるババアだ。よく出来たババアでみんなの小屋を建ててもらう為の貯蓄をしてくれてる。こう見えても魔法が使えて一番安全なのだ。派閥内での話し合いで俺がお手伝いをしたら半銅貨１０枚貰えるようにしてくれた。価値的には１０円ぐらいだろうか。小さい黒パンが買えるぐらいの微々たるお金でしかないが、暇潰し感覚で楽しくやってる。
「はい、助かったよ、ありがとう」「うん！ありがとう！」銅貨１枚を受け取りホクホク顔になってしまう。昨日から行商がきてるからオカンに何かプレゼントするんだ。今貯蓄は銀貨３枚分。なんでそんなにあるかって？オバナクオリティとしか言いようがない。初期の頃に武器を手に入れる為にオバナ達は冒険者を襲ったりしてたのが響いて、最近になると未確認の魔物として討伐依頼が出るほどになった。そこで、数回討伐されてからあまり強くないって言う事で、結構ランクの低い冒険者が狩りに来るみたいで、なにやら経験値的なのがおいしいらしい。流れの冒険者のお兄ちゃんに聞いたから詳しくはわからないけどそんな事を言っていた。
話は戻るが。
重要なのはオカンへのプレゼントである。いきなり銀貨３枚なんて当然使える筈も無く、家の地面に埋めてるわけだが、銅板一枚ぐらいなら余裕で使える。お金についてババアに教えてもらっててよかった。わからずに使ってたら大問題になるところだったが価値を日本円に感覚的に換算すると・・・。
半銅貨＝一円銅貨＝十円銅板＝百円半銀貨＝千円銀貨＝一万円銀板＝十万円半金貨＝百万円金貨＝一千万円金板＝一億円白金貨＝十億虹貨＝百億
こんな感じだ。単位はギリス、３歳児がこんな難民の村で３万も持ってたら事件になる所だった。もしかしたらオバナ達は結構溜め込んでるかもしれない。この銀貨だって死んだオバナが持ってたお金だって言ってたし。まぁ、気にしないでおこう。行商へレッツゴーだ。