10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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三星は寝床にしているボロ小屋に入ると、研究所から盗んだ紙に寝る間を惜しんで数百に及ぶ術式を描き続け、五枚の術式を完成させた。
もう日は登り、集落に戻ると頭を抱えるリブラの姿を見て、ホッと息を吐く。
「大丈夫っすか?主っ!」
「ん?あぁ、三星か。いや、ほぼ完成なんだがな…どうしてもうまくいかない」
「それは青魔晶石を界理術を使って術式に変え、自発的に制御させて陰と陽の極大魔法を使い分けて放つ術式が上手くいかないのですか?」
「お前…マジで頭良くなったな。」
「はははは!まぁ、根っこは変わって無いですけどね?それで、その望んでも無く手に入れた知恵を振り絞って考えたんすけど、青魔晶石そのもので術式の形を象って加工すれば上手く行くんじゃないかって思ったんですけどね」
三星の言葉にリブラはうーんと考えこむ。
「そうか!そう言う事か!!魔晶石に術式を刻み込むんじゃなくて魔晶石そのもので術式を作る!すげぇな!おめぇすげぇ!じゃあ今から組み合わせて答えを作らないといけないな」
リブラが踵を返して研究所に向かおうとした背中を石松の巨大な手が止める。
「ボス、大丈夫、三星、頑張った。」
三星が懐から出す羊皮紙に描かれた五つの界理術の制御式を見てリブラは目を丸める。
「え?お前界理術まで使えるようになったの?」
その言葉に三星は笑ながら首を振る。
「そんなはずないっすよ!今では失われた術ですが、3000年より昔までは界理術しかない世界だったらしいですよ?知識として知ってるだけっす、なので、出来ればその術式を使って欲しいですね」
リブラはその羊皮紙の術式をなぞりながら空中に式を書いて計算し、何度も小さく頷く。
「完璧だ。お前完璧だわ。俺でもここまでの答え出せなかったかもしんねー」
「よっしゃー褒められたぁ!!じゃあ主、魔力を送ります」
「あぁ、頼む。」
三星は俯きながらリブラの胸に手を当て全開で魔力を送る。そしてついには膝を曲げて崩れ落ちる体をリブラに支えられる。
「おいおいおい!無茶すんなって!ってなんでおめ泣いてんだ?」
「いやぁー情けないなぁって思っちゃいまして!なんでもっと力になれないかなぁって」
「は?いやいや、めちゃくちゃ助かってるぞ?ったくもー、ちょっと木陰で休んでろ、後でカルマに朝飯持っていかすから!」
「っ、すいません」
木陰で腰を落としながらリブラの作業を見守っていると三星の肩にそっと手が置かれた。
「三の旦那、どうしたんですか?浮かない顔して!もしかして頑張りすぎちゃいました?」
「四星…、まぁ、そのおかげで恐れ多くもカルマ様に朝飯運んで貰えるらしいけどな」
「それ…本気ですかい?二の旦那に教えてやらねぇと!横開けといてくださいね?俺も今日は旦那に魔力送るの思いっきりいくつもりですから」
「他にも木陰はあるだろが」
「かてぇことはいいっこなしですよ!」
四星の背中を見送ると、次は五星がリブラの近くにより、目があった三星と五星は互いに小さく頷く。
直後に空中散歩を終えた二星が浜辺の砂を巻き上げ集落に天炎竜と共に降り立つ。
そして三星と目が合うと二星は警戒に走りこみ太ももを蹴り上げる。
「いっった!!なんでっ!!」
「なんとなくだ!辛気臭い顔しおってからに!」
「違うっすよ!主に魔力ありったけ送って疲れただけっすよ!」
「どちらにせよ同じ事だ!魔力欠乏を起こそうが平然としていてこそ男であろう!まぁいい、我が見本を見せてくれる!」
「どうでもいいっすけどもう蹴らないで下さいよぉ?」
太ももをさすりながら小さく笑い再び木に背中をさずけると、知らぬ間に目の前に一星が立っていた。
「え?一星様いつからいたんすか?」
「たった今だな。うん、たった今だ。もう魔力渡した?」
「はい!見ての通りです!」
「そか、俺も渡してくるわぁ!!もう地面にビターってなるぐらい渡してくるな!」
いつもとなんら変わりない星持ちとのやり取りに寂しさを覚えながらリブラとのやり取りを見つめていた。
「心配、すんな、三星、俺、ついてる」
「あぁ、頼むぜ相棒」
直後に毅然して真後ろに倒れる二星を五星が支えると五星も膝から崩れおち、それを引っ張り起こそうとした四星がそのまま倒れ、まとめて全員を起こそうとした一星が白目を向いて気絶する。
「貴様らは主君の邪魔をしにきておるのか!!邪魔だ!邪魔だ!」
そしてカルマに投げられて、星持ち達が三星の上に降り注ぐ。
「ちょ!ちょ!ちょ!石松逃げろ!!」
「むり、おれも、うごけない」
そのままになし崩しになりながら目を冷ましたみんなが笑いだす。
リブラもカルマも笑い、近くにいたみんなも笑う。
生きて来た中で一番笑ったなと三星は心の中で呟いた。


カルマが仕方ないと運んだリヴァイアサンの特大ステーキを平らげ、十分に睡眠を取った後に三星と五星は空がオレンジ色に染まる夕刻に待ち合わせていた転移プレートに乗った。
転移プレートに乗る前に、集落のリブラがいる方向に向かい深く深く頭を下げた後に二人は覚悟を決めたのだ。

三星が渡した術式のおかげで完成真近となった兵器に、一段落だと寝てしまっているリブラを他所に三星と五星が転移プレートに乗るのを見届ける4つの影があった。
「じゃあカルマ様、あるじの説得頼みましたよ?」
「姐さんにもう会えないとか辛すぎる…」
「カルマ様…あなたは最高の師でした。」
一星は全てを知った上で二星、四星に事情を説明し、ならば我らも共にと三星達の知らぬ所で話しが決まっていたのだ。
そして星持ちがいない事によってリブラが兵器を使う事を躊躇ったならば、カルマに全てを説明して貰おうと話したのだ。
「貴様らは主君を信じておらぬと言う事か?」
「違いますよ!それは違う!俺達があいつらを助けるんです。対価を分け合うのか、どうなるかはわかんないですけど、なんとかしたいんですよ、帰ってきますよ。ただの保険です」
不真面目な一星が真剣にカルマに話すとカルマは目を細める。
「ならば約束せよ!!主君を信じ、お前ら揃って必ず戻る事を!!」
「はい、約束します」
こうして一星達も後を追うように転移プレートに乗った。

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