10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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リブラが兵器作成に悪戦苦闘し、泥のように眠る頃、海にかかる残橋で己の拳を握り開きを繰り返す五星がいた。
「あれが蟲神ならば私は……」
「まずいだろうな」
その呟きに背後から返事を返したのは石松から降りた三星だった。
「これは三星殿……」
三星はゆっくりと五星に歩み寄り残橋に足を垂らし海に足をつける。
「前に言ってたよな?蟲神に蟲を入れられて力を奪われたかもしれないって。」
「……えぇ。」
暗く沈む五星の肩を掴み三星は自身の方へと体を向けさせる。海面につけた足を戻し胡座をかいた三星は話を続ける。
「それは蟲神が行うマーキングと言う行為らしい。蟲神が求める強さになれば確実に五星は操られる。あいつの蟲としてな。」
「なれば……なれば蟲神を道連れにするまでです」
「待て、落ち着け。それに一度マーキングされたら強制で操られる事もある…大事なのはここからだ。弓の部族の長であり、主に名を授かった星持ちとしてのお前に聞く」
青面金剛の五星は真剣な面持ちで三星に視線を向ける。
「主の為に…主の為に死ぬ覚悟はあるか?」
吊り上がる三白眼に光を灯し一文字に口を結んだ青面金剛五星は三星を睨みつけた後に言を返した。
「元より主に命を預けた身であります三星殿。それは武人に対する侮辱として受けますが」
その言葉を聞いて三星は少し微笑みうんと頷いた。
「それでこそ五星だ。いいか?俺はあの深淵の主がごちゃごちゃうるさかったんで斬り捨てたせいで話しは聞けなかった。だがな、どうやらあいつは願う力を与えるしか能がないやつでは無いらしい」
「なんの話しをされているのです?」
「まぁ、いいから聞けよ。あいつは力を与える際に、心の奥底から願い、求め続けた力に見合う存在であるかの試練を与え、それを乗り越える事、所謂覚悟を対価に力を与える。」
「それはわかります、私もあの地獄を越えましたから」
「な?正直、深淵の主帝釈天はなんでも屋だ。対価を支払えば願いを叶えてくれる。」
その三星の言葉に五星は大きくため息を吐いてしまう。
「はぁぁ…言わんとする事はわかりました。だがそれは矛盾しておりませんか?私の命では神を消す対価になりえませんし、何よりその神に命を狙われているのではないですか?」
次はその言葉に三星がため息を吐く。
「はぁ…ちゃんと話しをきけよ!!管理者を殺す対価なんて、それこそ世界の消滅以外にねぇだろ?あのお肉ウサギちゃんも言ってたけどよ?じゃなくて、俺が言いたいのは、主が今作ってるあれ、あのデカイ塔みたいなヤツ!あれの話しがしたいわけ」
「あの魔晶石の塔がどう関係あると?」
やっと核心に入れた事に対する喜びか、はたまたリブラのやらんとする事を深読みしている自分への称賛からかは定かでは無いが三星は口の端を上げ怪しく笑う。
「主が作ってるあれな。ヤバイぞ?」
「まぁ、それは想像つきますよ、あれ程のお方があそこまで衰弱する程に術式を施しているのですから」
ふふんと笑い三星は立ち上がる。
「ハウロミって始まりって意味だって知ってるか?」
「なんか聞いた事があるような無いような…ですね」
「この世界が生まれた頃から存在する共通言語の元となった言葉、始祖言語だ。五星、お前アウリファナンティって意味知ってるか?この俺の愛する神域の名前の意味だ」
「いいえ…存じませぬ」
三星は人差し指を五星にズバリと向ける。
「それが本題だ!!アウリファナンティの意味は『-----』俺とお前の命を対価に叶えて貰おうじゃねぇの?」
全てを悟った五星は覚悟を決めて立ち上がり噛み締めるようにその言葉を反復し深く頷いた。
「なればあの主が国を吹き飛ばした場所にある大迷宮を越えましょう。」
「そうだな、まぁどんだけ強いヤツが出ようが楽に超えれるだろ?魔物ぐらい。どうせ最後なら主にありったけ魔力送ってからにしねぇか?俺も一つだけやり残した事あるしさ」
「そうですね、そうしましょう」
死を覚悟した三星と五星の笑顔は何よりも楽しそうであった。


そして二体の鬼が去った残橋に突如現れた人影。そこには赤い地獄絵図が描かれた和服を着た閻魔が嗚咽を漏らしながらむせび泣いていた。





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