10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 「こう言うのはどうですか?本来2カ国の承認が要るのですが、ノースウォール神聖国承認の元、非公認ながらに自由国家として建国する、この場合、非公認ながらにもお墨付きとして、国の仮組みは出来た扱いになります。メリットは大きい所で国家間交渉、貿易に関する円滑な取引態勢、税関の設置、税収、そして他国との人材派遣等数えきれない程にあります。デメリットは…そうですね、この場合ノースウォール神聖国の法が適用されてしまいます……」
 あかん。 ホーキボンドが覚醒した。 こいつ俺を子供とか一切考えてない。 有無を言わさずマシンガントーク。 もう何言ってるかわかるけどわかんねぇ。
「ですが、新たにノースウォールで施行された、『属国及び認証国家に関しては互いの法を尊重し、非人道的でなければ両国の裁判官を用いての裁定で両国の得心を得る物とす。』と言うのがあります、これは簡単な話し互いの不干渉を暗黙の了解とし、ムカつけば喧嘩も売れる最高の法なんですよ」
「はぁ、なるほど。」
「では、すべて踏まえた上でお話ししましょう。我々北方同盟はゲーム時代、領地運営を主な活動としてプレイヤーを集めています。ですので、この世界では過剰な程の建築関係の生産職が多い。それが北方同盟なのです。現在、800を超える建築チートが他国からひっきりなしに流れる難民を受け入れ、ノースウォールは日々進化しています。ノースウォール神聖国の認可の元に自由国家の建国を宣言して頂ければ、北方同盟から400の建築生産職の追跡者を派遣するご用意があります。そうですね、400と言えば少なく聞こえるかも知れませんが100人で10000人に影響力を及ぼす規模の人材だとお考え下さい、どうですか?悪い話しではないでしょう?」
「それで全部か?」
「えぇ、此方からのお伝えしたい箇所はお話ししたかと。」
 まぁ、悪い話しでは無いと言うのはわかる。 ただ、正直な感想を言わせて頂ければメンドクサイ、この一言に尽きるのではないだろうか?
 小難しい御託を並べてるけど、要するにノースウォールのお膝元で好き勝手出来る権限を貰えるって事だろ? 柴田さんが、昨日来てたからじゃないけどヤクザの直系的な考え方だ。 上納金だけちゃんと入れてくれたらノースウォールの看板使って商売してもらってかまいませんよと。 その上納金って言うのが、目に見える納金じゃなくて、優先的取引だって言うんだから美味しい話だ。
 それに、放っておいてもポンポン街が出来るのは嬉しいな。 こちらとしても星持ち共がダンジョン潰して手に入れた大陸の経済が傾きかねない財宝があるわけだから、経済面で首輪を繋がれる心配も無い。 まぁ、その辺で縛り付けようとしてるのは見え隠れしてるけど、その心配が無いのであれば利用は出来るわけだ。 モチロン、そんな財宝無くてもあの島の宝を使えばって不粋な話しは抜きでだ。
 こんだけ色んな話しされたけど、一番心に響いたのは流通原価から輸出入原価での取引きに変わるって事だな。
 今はシェルルの国が街で俺達が狩りや漁をした魔物の素材を流してそれで生まれた金銭から2割の手数料を差っ引いた分の米や酒を月に二回送って貰ってる。
 これが、純粋に国家間になれば、国が決める輸出原価での取引となるって事は、俺の集落は常にお腹いっぱいって事じゃないか? いや。今も十分ではあるが、やはり最終的に貨幣経済に辿り着くのだろうから早い方がいいって考えもある。 素晴らしい、素晴らしい提案だ。

「だが断る!!」

 テーブルに肘を着いていたシェルルが手を滑らせ、ホーキボンド氏がブフーーーーと倒れて行った。
「何故ですか?リブラ様!」
 ホーキボンドの上擦った声に笑いを堪える。
「まず一つ、シェルルとはこれからも仲良くしたい、それは受け入れて貰えるか?」
「え?えぇ、それは喜んで。」
 完全に半ばキョトンのシェルルが目を点にしながら小さく頷く。
「ホーキ・ボンド氏から小一時間聞いた話しは、何もかもが俺たちにとっていい話しばかりだ。だが、メリットが小さい。」
 これも素直な感想だ。 面倒事を態々巻き起こしてまで建国する価値が見当たらない。 単純な話し、好き勝手したいからほっといて欲しいって言うことだ。 素直に考えると話は簡単だ。 裏で取引する分にはいい。 俺らも美味い物食えるし、いい酒も飲める。
 たが……。
「まずホーキ・ボンド氏、俺達は魔物と共存する…そうだな、あなた達の世界で言うヒッピーのような存在だ。それがたまたま、莫大な武力を持っているだけでね?先程の話しでは、確かに関心も持てたし素晴らしいと思った。けど思った止まりだ。認証国家だの自由国家だの言えば聞こえはいいが、ただの傘下国だろう?当然武力協力に関しての法整備も整っているはず、此方に土地を渡してでも首輪を付けたいのは武力が欲しい、またはこちらの兵器を独占したいって所でしょう?」
「い、いえ!!本当にそれだけでは!!私はシェルル姫の御心を尊重して!!!」
 ふーん。 どうやらこれは嘘じゃないみたいだ。なんとなくだけどね。 いや、心読んでないよ? 出来るけど気持ち悪くなるから使ってないけど、声の質でなんとなくね。
「うん、だからシェルルに関しては、前にここを使っててもいい代わりに海岸部の防衛って言う契約から始まって今ではいい取引させてもらってるよ?だからさ、わかろうよホーキ君。もっとナチュラルに、こう、本音でぶつかろうよ?」
「本音……」
「そうそう、ゲームじゃないんだから。腹割ってさ?それに自由国家って言うんだったら勝手に俺達が国を主張してもそれは自由国家なんじゃないの?興味無いってのは嘘になるかもだけど、まだそういうのはメンドクサイって思ってるから、その時が来たら一番に相談するよ。それで良いだろ?」
 そこでシェルルが何処かすっきりした顔で立ち上がる。
「私としてはとても嬉しいお返事ですわ!少なくとも国家という枠での考えはノースウォールを一に優先してくれるって事ですよね?」
「そうだね。現状で国と付き合いがあるのはノースウォールだけだ。だから大陸のルールに乗っ取って建国するのであれば、当然シェルルに相談する。それにノースウォールは母……歯ぁーいった。すまんすまん、まぁ、全く関係無いワケでもないしね」
 危な。母ちゃんの話ししそうになった。 まぁ、協力関係ってのが今の俺達に必要な後ろ盾じゃないかな? 素直な話し、もっと血の繋がりにかこつけて強引に来るかと思ってた。 そうなれば丸々ここは捨てて、ヨルムンガルド一本に絞ろうと思ってたし、今回の話しの収まり方なら、まだまだここにはお世話になりたい。 まぁ、サンシェンが神域諦めるとは思えないから助かったって言う感もある。
 後は、交渉で此方が手綱を握るだけだ。
「てなワケで話し戻るけど、今回のお米貰っていい?」
「あっ、ええ」
 指輪とフェアリーランドをぶつけてお米とお酒を移す。
「じゃあ、これが今回の納品ね。」
「はい、また凄い…大蟹の甲殻一式が500と赤鮫の牙300と…この転移プレートと四王黄金鎧とはなんでしょう?」
「転移プレートはそのままで、ここからそこに転移できる魔導具です、それは難民の受け入れの御礼で差し上げます。」
 そして、転移プレートの使用方法と、ワードチップを二人に渡す。
「まぁ、色々ありましたけど、勉強になった部分もあるんでホーキさんもまた遊びに来て下さい。」
 何故か固まって頷いているだけだ。 なんか魔法を覚えれる職じゃないとか言ってるけど無視しよう。
「そして、四王黄金鎧ですが、それは神器、聖遺物と言われる類いのアーティファクトですね。各4つの鎧にそれぞれ属性転化能力、簡単に言えば、雷・炎・氷・岩の魔人になれるビックリ鎧。そちらは市場に流すでも国で買い取るにも好きにして下さい、まぁ、グリムシリーズの後期に匹敵する品ですから、それなりに価値はあるかと」
「そ、そんな……何故そんな凄い物を……」
「いや、まぁ、俺達が所持する宝のほんの一部だし、その程度の物ならば痛くも痒くも…。ちょっと所帯が大きくなったので食糧は要り用でも有るし、お近づきの印ってのを兼ねてって思ったけど、無理なら違うとこ流すけど?」
「でも、そんな高価な物は……」
「ローンききまっせ」
「買い……ます………」
 よぉし、これでノースウォールは完璧に俺の財布だぁ。
 でも、正解だろう? 軍事協力を傘下だと言う理由だけの損な協力では無く、取引の席につける事が出来 るのだから。 それに、こんな俺でも造れるような鎧を買うのに悩んでるような国に俺達が傘下に収まって出兵しても見合う対価は期待出来ない。 ホーキ・ボンドの言葉を借りれば、こちらは1で万にも億にも影響を齎す武力があるのだから。
「じゃあ、さっそくおっぱいをもましてもらってもいいかな?」
「嫌ぁぁぁぁぁ!!!!!」
 ふん、いい右持ってやがる。




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