10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

56

  王都に到着すると、かなり多数の追跡者が守りを固めていた。 その中で私の目に止まったのは街の街道を占拠する大蛇だ。
「ありがとうございます、降ります」
「おい!ウーシェン!!くそっ!良さそうなのとられちまった!」
 皆さんには申し訳ないが、今の私はどれだけやれるのか試す必要がある。 以前の海上での戦いから泳いで上陸して来た追跡者にはかなり苦戦をした。 そして悔しい思いをした。 だからこそ、なればこそ。
 死の恐怖とおぞましい殺意で私は恩返しをしたい。
 負けるかもしれない。
 だが、そうであれば自身の強さへの執着は浅はかなものだったと死を受け入れるだろう。
 私は大蛇の前に飛び降りた。
 そこには魔法を連続で撃ち込み距離を取りながら背後を守るマキちゃん殿とイズナ殿がいた。
「遅いよ!ウーシェンさん!もうヘトヘト!!」
「マキさん!!これ殲滅魔法キャンセルしてもいいですか??」
「もう大丈夫!!とめときなさい!!」
 どうやら邪魔をしてしまったようだ…だが。
「微力ながらに助太刀させてもらう」
 そして蛇と融合した女は大蛇の頭から舌を出して此方を挑発してくる。
「魔物が増えた所で何ができる!!」
 その意見には、こちらも同意見だ。 追跡者如きの戯れ言をと考えていたら、私は大敗したのだから。 だからこそ本気で行かせてもらう。
 六本の腕で殺意を高め同時に合掌する。 自身が現在使える最大の破壊力を持つ技だ。
「大蛇の追跡者殿、名を聞いても?」
百目大蛇猫姫ひゃくめおろちねこひめ……お前は?」
 そして背後で守りを固めるマキちゃん殿が叫ぶ。
「ちょっと!!名前に猫とか天使とか†入れるやつってキチガイしかいないじゃない!!あの子はキチガイよ!!」
「マキさんやめてください!!それ以上名前をいじってあげるのはやめてください!!」
「なによ†堕天使イズナ†」
「きゃあああああ!!!」
 まぁ、外野はウルサイが関係ない。
「我は青面金剛・五星と申す、いざ尋常に」
 口上が終わる前に百目大蛇猫姫殿はその大蛇の顎でこちらを噛み砕こうと先制を仕掛けてくる。
「だが遅い」
『滅っせよ我が……』
 他の星持ちの長達はこれまでにどれ程の戦士を失ったのかは計り知れぬ…だが私の兵がこれまでの戦いで一番死んだであろう、それは弱いゆえに他ならない…だが。 石弓の部族は高い知能で矢を造るがその反面家族愛や仲間への思いやりが強い。
 だからこそ、私はこの力を手に入れた。
殺戮兵達ジェノサイドウォーリアーよ』
 六本腕の合掌により世界を殺意で黒く染め上げる。 そして私の死んでいった部族の者達が黒い殺意を身に纏い1000を越す軍勢で止まる事無く強弓を穿ち続ける。
「ぎやっ!ぎやゃあああああ!」
 少しでも戦士達の無念が晴れればと祈り合掌し目を開くと、百目大蛇猫姫の姿は跡形も無く、目前に広がる景色は抉れた更地となっていた。
「ウーシェンさんウーシェンさん!!」
 マキちゃん殿の呼び声に振り向くとマキちゃん殿は手をパタパタと横に振っていた。
「あかんあかん!やりすぎ!」
「私も多少反省していた所です」
 地形を変えてしまったが次の追跡者を探そうと思う。 すると建物の屋根からローブを深くかぶった小さな追跡者が声をかけてくる。
「珍しいねぇ、さっきの。死霊術と殲滅魔法と射手と…いや、根本的に違うのかな?なんかもっと黒い何かを感じた。つまらないな。僕のカラスより強いなんてつまらないな。」
 小さな追跡者はつまらないと何度も呟くと体の周りに複数の黒い魔方陣を浮かべカラスを無数に召喚する。
「我は青面金剛・五星!!破壊者である!!」
「破壊者、破壊者ねぇ、知らないや!!知らないや!!知らないや!!!」
 カラスを此方にまとめて飛ばそうと体を動かすと同時に小さな追跡者の頭に巨大な氷の槍が突き刺さり胴が転げ落ちる。
「氷の!!横取りは関心できませぬぞ!!」
「あれ?五の親方気付いてました?遠目で不意打ちっぽかったんで!!」
 パキパキパキと更に槍を造りだし次々と投擲して行く姿を見て反論を諦める。 これはワザとじゃないだろう。
「心遣い感謝する!!」
「俺が危なかったら助けて下さいね!!五の親方!!」
 氷の茨城童子のウインクに苦笑いで返すしか出来なかった。


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