10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 ふおぉぉぉ!!!! なんたる事だ!!! 俺の家の横に見知らぬ追跡者が30人ばかり集まっている!!
「イーシェン!!!!」
「ちょ!主!!それどころじゃなくて!!今残党狩りで大変なんだって!!」
「そんな事はスーシェン達にやらせておけばいい!!!何故あんなにも上陸を許した!!」
「いや、あれリャンシェンが拾ってきたらしいよ?ってほら!!ウーシェン苦戦してるから離して!!離してくださいあるじぃ!!」
 身体に光りを放ちながら加速して消えて行くイーシェンを尻目に言葉を反芻する。
「リャンシェンが拾ってきただと?」
 と言う事はだ。 写楽達同様に客人扱いと言う事か? いや、リャンシェンが帰ってきた以上、これ以上穀潰しを増やすわけにはいかんだろう。 まぁ、あそこまで進化する為に150もの軍勢がたった6体だけになったのだから差し引き0か?
 そんなワケあるかい!! あいつらは竜種を6体も連れて来たではないか。 あれがもしエレミアばりに飯を食うとなったら…………。
 ぐぅぅ!!なんたる!!なんたる事をしてくれるのだリャンシェン!!
「あ、あのぉ?大丈夫ですか?」
「い、何時の間に!?」
 俺が気配を感じ取る事が出来なかったとは……こやつなかなか。
 いやぁ、けどリャンシェン帰って来たからテンション高いんだよなぁ、なんでもオッケーみたいな事言っちゃいそう。 しかし、最後は撃墜されたけど時田さんもすごかったなぁ。 単純にあの短時間で一番敵の船落としたのあの人だもんなぁ。
「あのぉ?聞いてますか?」
「あぁ、すまない少年。忘れていた。」
「ええ?この短時間で??いや、あの、リブラさんですよね?」
 大太刀を腰に差した侍風の少年は恐る恐るといった感じで俺に問いかける。
「いかにも。リャンシェンに聞いたのか?」
「えぇ、恐らくあの家にいるだろうから挨拶をして来いと言われて。」
 いや、リャンシェン…。 急いでたのはわかるけど、もし本当に家にいたら俺ビックリして攻撃してたかもしんないよ? まぁ、いつも通り高みの見物決め込んでたから大丈夫だったけど。
「そうか。それで?」
「あの、これの中身で、僕たちをしばらくここに置いてもらうよう頼めとリャンシェンさんに言われて。」
 確かに少年が後生大事に握りしめていたであろう手汗びっしょりの指輪は俺がリャンシェンに渡したものだ。
「どれどれ。」
 フェアリーランドに入れて中身を確認する。
 まぁ、色んな肉肉肉肉肉肉。 ドラゴンの肉肉肉肉肉。
 ふっ、甘いなリャンシェン。 こんな量の肉、今の集落は一瞬で無くなるんだよ。
 他もどうせ肉まみれだろ?って……………え?
 え?
 ええ?
 何これ?
 ソートで表示しきれないぐらいの金銀財宝と武具の数々。 見た事もないような魔道具と……。
 超高密度魔晶石×とにかくいっぱい
 とにかくいっぱい??? 俺のフェアリーランドの超精密と名高い真面目な妖精達がとにかくいっぱいだと? まてまてまて。

 これはとんでもない事だぞ? こいつらの面倒を見るだけで、この中身を俺に献上すると言うのかリャンシェン。 あいつ価値わかってなさすぎだろ。
「君…名前はなんと言ったかな?」
「まだ…申し上げておりません!!僕はマサツグです!!」
「そうか、マサツグ君、そしてお仲間の皆さん、自分の家だと思って好きなだけ暮らして下さい!!!」
「あ、ありがとうございます!!」
 いーやっほーい!!! この財宝をシェルルに売りつけて、米とか酒とか買いまくるぞぉぉ!!!!
 いや、待てよ?? 俺があまりある在庫を使うのをケチって錬金術でコツコツ魔晶石を作る必要が無くなったって事はだ。 後はひたすら弾丸を造るだけでいいって事だろ? かなり作業効率が上がる事になるわけだ。 作業面でも心の面でも。
 うん。って事は、あまった時間で兼ねてより開発していた魚雷が完成するってわけ で……。
 よし、決めた。
 ヨルムンガルドの港湾ぶっ潰して貿易国ごといただいてしまおう。
 あいつらはいい加減俺たちの邪魔をしすぎだって事を気づかさにゃならんだろう。
 この原始的な食料難を貿易で改善する!!
「主君……どうされたので?その、悪そうな笑顔は……」
「おぉ、カルマか。いや、帝国に宣戦布告の意味を込めてヨルムンガルドを貰ってやろうと思ってな」
 その言葉にニヤリと顔を変えるカルマ。
「ふふふ、時は満ちましたな主君」
 そこに本日の立役者時田さんが現れる。俺達の会話を聞いていたのだろう、一言物申すと意見を話す。
「ですがリブラさん、大まかにですが、ここからヨルムンガルドの最果てまでは片道1600kmを超える距離になります。」
「なるほど…行けても帰ってこれんか……」
「ええ、魔素濃縮液は零戦に70ℓしか入りません、よくて2000km程度しか飛べないでしょう…それに、かの真珠湾のように奇襲攻撃を行うのなら、こちらの機体数が圧倒的に足りません。それに向こうも次は対空砲火を可能にしてくるでしょう、やはり決定打に欠けます。」
「そうか……つかぬ事を聞くが時田さん、あなたは空母の設計はできるのかな??」
 その言葉に時田さんの目がキラリと光った。
「実はあの工房には秘密がありまして…と言うのは、私が手掛ける精度の製図で零戦を造る事はLv70でも十分可能でした、ですがリブラさんは私のLvを100まで上げて下さった。それにより追加された自身でも気付かなかった特典・・があったのです」
「特典?どんな特典なんだ?」
「外部ツールのダウンロードシステムです」
 こいつは何を言っているんだ?
「すまん、わかりやすく説明して欲しい。」
「ええ、我々が興じていたゲーム世界ではギルドハウスと言った家がありました。そこで自室を持つ事が出来るのですが、その自室は好きに装飾する事が可能なのです。」
 まぁ、わかる。 アバターで遊ぶ携帯ゲームみたいなもんだろう。
「そこで有料外部ツールを購入して、VR…ゲームを始める機械に読み込むと自室に本を置いたり模型を置いたりと出来るわけです。そこで私はツテを使って軍部から様々な戦闘機や戦艦の設計図をインストールしたのです。いつかこの高みに辿り着く事を夢見て眺めていました…まぁ、戦艦や空母の方は半分趣味でしたが…私は何処まで行っても零戦を愛しているので」
 やはり時田さんはこの手の話をする時は饒舌だ。
「で?結論は?」
「はい……簡単な話です。指定された材料さえ揃えば、瞬時に製造して見せましょう。」
 …………………………………。
「俺やっぱ時田さん好きぃ!!」


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