10年間修行した反動で好き勝手するけど何か問題ある?

慈桜

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 時系列としては少々遡り、リブラ達が東の森で覇を唱えている頃、世界融合で出現した非道たる英雄に対しての対抗手段として円卓会議が行われた直後、今は手を取り合いこれを鎮めるが急務とし、ここにエリミガリア大陸連盟が樹立される。
 アイルセム教国 アインシュタット王国 ヨルムンガルド王国 ロウエント共和国 ビーステイルダム首長国 カルディアン帝国 ノースウォール神聖国 これらに追随する小国家群
 大陸屈指の名立たる大国が連盟に名を連ね、此度の英雄乱生にて生じた度重なる混乱への鎮静化への急務にあたる。
 強大なる力をもった不死者3万と数千による暴虐に対応すべく駆り出された人員は各国総計で100万を越す事となった。
 しかし、その大軍を持ってしても各国は増え続ける被害に忙殺される事となる。
 だが………。
 多大なる被害を被ってでも成し遂げなければならぬ急務、それが英雄の捕獲である。 この方法を初めに確立させ、各国に齎したのはカルディアン帝国が皇帝、イグニス・ブラド・カルディアンであった。
 世界融合の後に乱立した新たな村や新たな街にて何度でも蘇る英雄達に違和感を感じたイグニスは多勢の諜報を送り法則性を調べた。 次第に自国にまで侵入してきた英雄達を撃退すると、自国の地でまで蘇る事が発覚した。 そして共通点を見出した。 自国で非道たる英雄達が生き返る場所はカルディアン帝国の象徴とまで言われる不寝番の女神像の前で、新たに出現した街々にも見られたのは、見知らぬ神を奉る祭壇や石像や銅像等の偶像、または神秘的な光を放つ噴水など世界に干渉し得る奇跡の遺物が関係する事を突き詰めた。
 イグニス・ブラド・カルディアンは帝国総意の反対を跳ね除け不寝番の女神像をいち早く撤去し城内の地底深くに眠る堅牢へ運んだ。
 天運はイグニス・ブラド・カルディアンに味方し、死を迎えた非道たる英雄はカルディアンの堅牢にて蘇る。 非道たる英雄達は、怒りに身を任せ牢獄内で不寝番の女神像を破壊しようと武器を振るった。 だが英雄達は如何に攻撃をしようと不寝番の女神は破壊不可オブジェクトとされ、その姿を美しいままに残す事に成功した。 これはイグニス皇帝にも嬉しい誤算であった。 次に脱獄不可と呼び声の高いカルディアンの堅牢は、英雄達の大いなる力を持ってしても破る事は叶わなかった。 それは一重に、かの賢人、世界救済の英雄が一柱、錬金術師チャリクスが施した失われた術式 相殺結界の堅牢がゆえの奇跡であろう。
 余談ではあるが当時の数少ない資料の中に、龍王を封じた堅牢と記されているが真偽は定かでは無い。 だが、広大たる堅牢は龍王を封じ込めたとの記述に納得をせざる得ないのは確かであった。
 各地に散らばる遺物を100万の軍で牢獄へ集める作業は熾烈を極めた。
 幾度と無く壊滅に追いやられ多大なる被害を出しながらも、遂には7つの遺物を集める事に成功する。 たった7つだがされど7つだ。 この偉業で捕らえる事に成功した英雄の数は1000を越える。 エリミガリア大陸連盟に加わる各国の代表は、この功績に歓喜し3000年もの間この牢獄を守り抜いた帝国を賞賛し感謝した。
 だが………。
 かの皇帝イグニス・ブラド・カルディアンは、悪辣な笑みを浮かべ堅牢の前に立っていた。
 かの英雄、錬金術師チャリクスが遺したもう一つの国宝をその手に。
「おい!!ここから出しやがれ!!」
「『火炎槍フレアランス』だめだ、やっぱり消えちゃう。」
 蠢く1000を越える捕らわれの英雄達の前にたまらず高笑いをはじめるイグニス・ブラド・カルディアン。
「ふふふ、ははは!!あーっはっはっはっはぁぁ!!!さぁ、非道たる英雄達よ、我に隷従し覇道の駒となるがよい!!!」





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