異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題

慈桜

第四十四話


「あは、あはは!!!いまさら?いまさら出てきたんですか社長!!!」
 黄色に近い儚い魔法光を身に纏う花魁姿の美紅は腹を押さえながら大笑いをする。
「あぁ、俺は最近こっちに来たばかりだからな、お前はいつからいたんだ?」
「はは、はぁ、それって遠まわしにレディの年齢を聞いてるって事ですかぁ?ってか、ウチがどんだけ…どんだけ社長に助けて欲しかったか…それが今頃出てきて偉そうに…」
 肩を揺らしながら俯き笑っていたかと思えば、次に顔を上げたと同時に俺を睨みつける。
「美紅?」
「私は家畜に大切な仲間を殺された、蘇生魔術が使えないように仲間達はバラバラにされて消し炭にされた。池袋支社のみんなはもういない、悔しかった辛かった怖かった。一人じゃなんもできないウチはみんなを探そうとした、けど蘇生魔術しか使えないウチはどうする事も出来なかった。でもある時違和感に気付いた」
 美紅は言葉を紡ぎながら光を強め手に持っていた扇子を巨大な鉄扇へと変える。
「社長に貰った黄輝龍の装備が自分の中の何かと共鳴してる違和感に気付いたの、それからは全てが変わった。聖女だなんだの持て囃されるだけのクソみたいな毎日からおさらばして、こんなクソみたいな世界でウチは自由を手に入れた」
 美紅は大きな鉄扇に更に黒い魔力を込めると鉄扇は形状を変化させ生きる黄輝龍の腕を顕現させる。
 そしてその腕は美紅を握り潰す。
「おい!美紅!!」
 グチュっと肉が爆ぜる音が鳴り響くと同時に黄輝龍の腕は一層強く光輝き人型を模る。
『龍化魔装黄輝龍』
 その姿は半龍半人、月と太陽の創造龍としてこの世界に名を残し、いかなる熱運動をも無効化し消失する事のない黄輝龍の鱗を全身に纏う姿。
「この力があれば今の家畜とも戦える、殺せる、そしたら黒眼龍の欠片を奪ってウチはまた強くなる、だから社長はもういらない」
『人形師セット・繰糸』
 美紅が拳を握ると同時に繰糸で全員を繋げて転移石を割る。
「にがさないよぉ!!!」
「いや、戻ってくるよ」
「え?」
 その一言に美紅が呆気にとられたと同時にホテルの部屋に飛ぶ。
「てなわけで子供達ねろー」
「どういうわけだよ!!!」
 チビロイがすかさず突っ込んでくるがとりあえずは無視だ。 予想通りにミクは美紅だったんだが、相当なわからず屋になっていた。 しかも黄輝龍の装備を大事そうにしちゃってたし俺を殺そうとまでしやがった。
 こうも話がこじれるとどうしていいかわからなくなるな。
「で?ロッサのあの女、お前の知り合いだったみたいだがどうするつもりだ?」
 若干思考放置に入りかけていた俺を引き戻したのはロイだ、こいつも若干混乱しているのか顔に焦りが浮かぶ。
「うーん、わかんない!!」
 ズコーっとロイはこけそうになるが必死に踏ん張りこちらに向き直る。 わからんもんはわからんのだ、仕方ないだろう。
 ロイに地面に叩きつけられて放置されていたリンダが高校生達を各自の部屋に行くように促している中、アルストは部屋に残りこちらの様子を伺ってくる。
「どうした?」
 一先ずは意見を聞いてやろうと声をかけるとアルストは小さく唾を飲み込んで口を開く。
「あいつと戦うの?」
「直球勝負だな、まだわからんさ」
 だが本題はそこだろう、今馬鹿正直に美紅の所に行けば間違いなく戦闘になるだろう。 あいつの強さが未知数な上に、何の策も無くガチンコでやりあうような馬鹿な事はしたくないが、現状のままこちらが手を打たなければおそかれはやかれ戦闘は確実だ。
 だが、そうなった場合ロイ達との勝負もうやむやになってしまいそうな気もする。 俺としてはただのおせっかいだが乗りかかった船だ、チビロイに美紅とのギャンブル勝負でなんとか勝たせたい気持ちもある。
 いや、正確にはあっただ。
 兎にも角にもまずはいっぺん美紅を泣かさん事にはそこらの話は進まん。 だが、どうやって泣かすか…。
「サカエさん!!悩む必要無いですよ!!あのひと人造人間を作ってひどい事をしてるんですよ!許せません!!」
 シクラの追い込みだ、確かにさっき言っていた魔道具とホムンクルスの融合体なんて作り出すような研究をしてるなんてのは頭がお逝かれになられたとしか思えん。 高校生を実験素体に使うなんて物騒な話をしてたなんて聞いたら美紅は尋常じゃ無いぐらいの殺しもしてるんだろう。 まぁこんな世界だ、人を殺すななんて偉そうな事言うつもりは無いが、その殺しの対象に俺の知り合いが上げられるのは面白くない。
「どうしたものか…」
 くそう、昔の可愛かった美紅カムバック!!! 恩を仇で返しおって!的な小物臭満開のセリフを言ってしまいそうだ。
 まずは冷静に話し合える状況作り…激昂する美紅。 あいつの趣味、好きなもの。
「あっ、攻略できるかもしんないわ」

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