異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題
第二十五話
まずは下絵が大切です。
一生のものなのでよく彫師と話し合いましょう。
「ダメか?招き猫」
「なんでそれチョイスなの?」
専用の薬剤を塗って施術箇所に下絵を写します。
位置もちゃんと話し合いましょう。
「こんな感じになるが良いか?」
「どうせならもう少し上の方が良いかな」
そしていよいよスジ彫りです。
まずは本数の少ない針を使ってアウトラインをなぞって行きます。
ビィィーーーーーーーーーン。
「い、い、痛いぃ!!!!!」
「我慢しろ!!刺青はがまんとも読むんだぞ!!」
「とれる!腕の肉がこそぎ落ちるよ!」
「とれねぇから動くな!!こそぎ落ちるって良く今言えたな」
スジ彫りが終わったら色を入れていきます。
本数が多い針でザクザク刺していきます。
「ちょ、まっ!これも痛い!痛い!」
「だまらっしゃい!!」
通常両肩に色まで入れるとなると完治する期間も入れて長く時間がかかりますが、ここは流石の剣と魔法のファンタジー世界。
指先でなぞるように治癒魔法を施して行き、傷を塞ぎインクの色落ちもせずに美しい色が入ります。
これなら普段入りづらいと言われる白でも綺麗に入ります。
化膿しないようにケアをしながらお風呂でもそっと流したりするのもがまんの一つなのですが、そこは多めに見てあげましょう。
「じゃあ、目を入れるぞ」
「うん、もう痛くても良くなってきた」
一通り絵が完成したら目入れ、魂を入魂します。
『魔力炉付与』
ビィィーーーーーーーーーン。
「サカエさん……だめだ!痛いとかの話じゃない!!死んじゃう」
「意識を飛ばすな!!阿吽の呼吸で魔力の循環をする回路を体に強引に定着させてるんだ、死んでも起きとけ」
「が……んば……る」
アルストの左肩から空気中の魔素を吸収して右肩に抜けると魔力に変換されて体内で循環する。
エーテルをマナへと変換する機能を強引に組み込んだのだ。
これでアルストは劣人から俺たち古代種と呼ばれるプレイヤーレベルの魔力供給が可能になる。
欠点は一つ、脱がなきゃ発動しない。
「どうだ?なんか感じるか?」
「すごい……体の中に青い光が渦を巻いて巡ってる」
「それが魔力だ。それを必要分千切って理に乗せて魔法を発動する、やってみろ」
アルストはうんと頷くと集中を始める。 そして指先へ魔力を集中させる。
『点火』
だが、指先に点火に必要な魔力が発現したと同時に霧散してしまう。
「ダメだ……確かに術式が起動したのを感じたのに…」
『鑑定士セット・解析』
即座に調べると原因がすぐにわかった。 アルストの周りに黒い魔素が充満してるのだ。
「これはひどいな」
「え?なんかわかったの?」
これは本来魔物や魔族が必要とする魔素で反魔素と呼ばれる魔素だ。 恐らく肌がきめ細かいと言っていた原因だろう。
人族が魔素を使い魔法を行使すると、魔素は反魔素へ変換される、そして魔族が反魔素を行使すると魔素へと返る。
それが世界の循環だ。
だが、元より魔力も気も持たない劣人であったアルストは食性の強い反魔素の巣になっている。 これは確か魔素と反魔素が均等であろうとする為に濃度の濃い魔素と反魔素が互いに作られる現象の最たる例だろう。
人族の多い街中で、唯一反魔素が濃度を保ちながら魔素を喰うには劣人は最高の環境という事だ。
しかしこれは厄介な事になったな。
ド定番の人魔大戦での落とし所がこれだった為に今では大国同士の王様と魔王様が仲良く飲み会的な事もあるだろうが、一般人レベルで考えると迷惑でしかない。
そして魔素や反魔素はどかしたり出来るような物じゃない。
だがこのままだとアルストが魔法行使しようとする度に最高の状態、所謂喰いやすい魔素をひたすらくれる反魔素飼育員のお兄さんになってしまうわけだ。
理には理で抜け道を探さなければならない。
そうなれば出る答えは一つだ。
一つだけ方法があるが…命の保証ができん。
職能を彫るしかないか。
「まだ大丈夫だ、大丈夫なんだが」
「痛い?」
「それだけでは済まんかも知れん、職能を丸ごと絵に起こして彫るしか道がないんだ、それなら反魔素も関係無く発動出来るはずだ、だが、死ぬかもしれんな」
「死ぬのは…やだな」
そりゃあそうだろう。 今お前には希望が見え始めてきたんだからな、死にたくないはずだ。
別に方法はいくらでもある。
不死鳥の羽を使えば死んでもすぐ生き返るしな、気絶したぐらいの感覚しか無いだろう。
だが、生きる覚悟、生き抜く覚悟が必要だ。 それに俺はイジメっ子達に見返させんと力はやらんと言ったばかりだからな。
「ならお前はやっぱりイジメっ子達をギャフンと言わせて来い、今のお前じゃ負の感情が強すぎて危険だ」
嘘だがな、なんとなくそれっぽい事言っておけば信じるだろう。
「うん、僕やってみるよ」
その時スタジオのドアがノックされた。
「サカエさん!開けていいですか?」
「あぁ!入れ」
俺は扉の前にいたのでそっとドアを開けると中を見たシクラが頬を膨らませて立っていた。
「ん?どうしたんだ?」
「一緒に住んでるのに何もしてこないって思ったらそう言う事だったんですね!!」
「はい?どゆこと?」
「きゃーとか痛いとか何してるのかなって思ったら最低です!しかもアルスト君はまだ子供ですよ?」
あぁ、刺青の事か。 それについては賛否両論あるだろう。
「だが、あいつもお願いしますと言ったから入れたんだ」
するとシクラは顔を真っ赤にしながら目尻に涙を浮かべる。
「もぉ!最低です!最低最低最低!!好きだったのに!!挿れるとか聞きたくない!!!」
「おろ?」
「ばかー!!!サカエさんのばかばかばか!!!」
シクラがサンドウィッチの籠を置いたまま走っていってしまった。
なんだと言うんだ。
すると蝶翅の大人しい妖精達がクスクス笑いながら飛んできた。
「楽器工房から出るなんて珍しいなお前ら、どうしたんだ?」
声をかけるがいつも通りの無視をした後に眠そうな目をこちらに向けながらニヤニヤする妖精達。
「メシウマ」「サカエ×アルストね」「あの子素質あるわね」「もう、頭の中が腐りきってるね」「今度工房に呼ぶ?」
つまりそう言う事か?
後ろを振り向くとシャツをはだけさせて肩を隠したアルストが座っている。
「お前いつからそのシャツ着てた?」
「え?ノックしてからすぐだよ?」
「つまり?」
「うん、勘違いしてるよね」
…………………………。
「シクラ待てこらぁぁぁ!!!」
「ちょ!待ってよ!!」
俺が飛び出すとアルストもサンドウィッチの籠を拾ってスタジオから飛び出す。
「あれ?体軽いや」
「そりゃそうだろ。魔力が循環してるんだからな」
「すごいね、僕シクラさん捕まえてくるよ!」
「多分無理だぞ、いくら浴衣でもシクラ普通じゃねぇから」
直後アルストは視界から消えた。
ん?なにこれ?
    なんであいつあんなはえーんだ?    素面じゃ追いつかねぇぞ。
『忍者セット・韋駄天・リアクト解放』
「お前ら待てコラぁぁ!!!!」
ビルから飛び出すと三軒隣のビルの壁を走る二人の姿があった。
「待ってシクラさん!!勘違いしてるよ!!」
「勘違いじゃないもん!!!」
「違う!!僕とサカエさんはなにもないよ!!」
「こないで!!もういいの!!」
「良くないよ!!僕とサカエさんはなにもしてない!!」
シャツのはだけた美男子が泣いている女の子に大声で弁明している姿を見て俺は気絶しそうになる。
「お前らその会話やめろこらぁぁ!!!!」
一生のものなのでよく彫師と話し合いましょう。
「ダメか?招き猫」
「なんでそれチョイスなの?」
専用の薬剤を塗って施術箇所に下絵を写します。
位置もちゃんと話し合いましょう。
「こんな感じになるが良いか?」
「どうせならもう少し上の方が良いかな」
そしていよいよスジ彫りです。
まずは本数の少ない針を使ってアウトラインをなぞって行きます。
ビィィーーーーーーーーーン。
「い、い、痛いぃ!!!!!」
「我慢しろ!!刺青はがまんとも読むんだぞ!!」
「とれる!腕の肉がこそぎ落ちるよ!」
「とれねぇから動くな!!こそぎ落ちるって良く今言えたな」
スジ彫りが終わったら色を入れていきます。
本数が多い針でザクザク刺していきます。
「ちょ、まっ!これも痛い!痛い!」
「だまらっしゃい!!」
通常両肩に色まで入れるとなると完治する期間も入れて長く時間がかかりますが、ここは流石の剣と魔法のファンタジー世界。
指先でなぞるように治癒魔法を施して行き、傷を塞ぎインクの色落ちもせずに美しい色が入ります。
これなら普段入りづらいと言われる白でも綺麗に入ります。
化膿しないようにケアをしながらお風呂でもそっと流したりするのもがまんの一つなのですが、そこは多めに見てあげましょう。
「じゃあ、目を入れるぞ」
「うん、もう痛くても良くなってきた」
一通り絵が完成したら目入れ、魂を入魂します。
『魔力炉付与』
ビィィーーーーーーーーーン。
「サカエさん……だめだ!痛いとかの話じゃない!!死んじゃう」
「意識を飛ばすな!!阿吽の呼吸で魔力の循環をする回路を体に強引に定着させてるんだ、死んでも起きとけ」
「が……んば……る」
アルストの左肩から空気中の魔素を吸収して右肩に抜けると魔力に変換されて体内で循環する。
エーテルをマナへと変換する機能を強引に組み込んだのだ。
これでアルストは劣人から俺たち古代種と呼ばれるプレイヤーレベルの魔力供給が可能になる。
欠点は一つ、脱がなきゃ発動しない。
「どうだ?なんか感じるか?」
「すごい……体の中に青い光が渦を巻いて巡ってる」
「それが魔力だ。それを必要分千切って理に乗せて魔法を発動する、やってみろ」
アルストはうんと頷くと集中を始める。 そして指先へ魔力を集中させる。
『点火』
だが、指先に点火に必要な魔力が発現したと同時に霧散してしまう。
「ダメだ……確かに術式が起動したのを感じたのに…」
『鑑定士セット・解析』
即座に調べると原因がすぐにわかった。 アルストの周りに黒い魔素が充満してるのだ。
「これはひどいな」
「え?なんかわかったの?」
これは本来魔物や魔族が必要とする魔素で反魔素と呼ばれる魔素だ。 恐らく肌がきめ細かいと言っていた原因だろう。
人族が魔素を使い魔法を行使すると、魔素は反魔素へ変換される、そして魔族が反魔素を行使すると魔素へと返る。
それが世界の循環だ。
だが、元より魔力も気も持たない劣人であったアルストは食性の強い反魔素の巣になっている。 これは確か魔素と反魔素が均等であろうとする為に濃度の濃い魔素と反魔素が互いに作られる現象の最たる例だろう。
人族の多い街中で、唯一反魔素が濃度を保ちながら魔素を喰うには劣人は最高の環境という事だ。
しかしこれは厄介な事になったな。
ド定番の人魔大戦での落とし所がこれだった為に今では大国同士の王様と魔王様が仲良く飲み会的な事もあるだろうが、一般人レベルで考えると迷惑でしかない。
そして魔素や反魔素はどかしたり出来るような物じゃない。
だがこのままだとアルストが魔法行使しようとする度に最高の状態、所謂喰いやすい魔素をひたすらくれる反魔素飼育員のお兄さんになってしまうわけだ。
理には理で抜け道を探さなければならない。
そうなれば出る答えは一つだ。
一つだけ方法があるが…命の保証ができん。
職能を彫るしかないか。
「まだ大丈夫だ、大丈夫なんだが」
「痛い?」
「それだけでは済まんかも知れん、職能を丸ごと絵に起こして彫るしか道がないんだ、それなら反魔素も関係無く発動出来るはずだ、だが、死ぬかもしれんな」
「死ぬのは…やだな」
そりゃあそうだろう。 今お前には希望が見え始めてきたんだからな、死にたくないはずだ。
別に方法はいくらでもある。
不死鳥の羽を使えば死んでもすぐ生き返るしな、気絶したぐらいの感覚しか無いだろう。
だが、生きる覚悟、生き抜く覚悟が必要だ。 それに俺はイジメっ子達に見返させんと力はやらんと言ったばかりだからな。
「ならお前はやっぱりイジメっ子達をギャフンと言わせて来い、今のお前じゃ負の感情が強すぎて危険だ」
嘘だがな、なんとなくそれっぽい事言っておけば信じるだろう。
「うん、僕やってみるよ」
その時スタジオのドアがノックされた。
「サカエさん!開けていいですか?」
「あぁ!入れ」
俺は扉の前にいたのでそっとドアを開けると中を見たシクラが頬を膨らませて立っていた。
「ん?どうしたんだ?」
「一緒に住んでるのに何もしてこないって思ったらそう言う事だったんですね!!」
「はい?どゆこと?」
「きゃーとか痛いとか何してるのかなって思ったら最低です!しかもアルスト君はまだ子供ですよ?」
あぁ、刺青の事か。 それについては賛否両論あるだろう。
「だが、あいつもお願いしますと言ったから入れたんだ」
するとシクラは顔を真っ赤にしながら目尻に涙を浮かべる。
「もぉ!最低です!最低最低最低!!好きだったのに!!挿れるとか聞きたくない!!!」
「おろ?」
「ばかー!!!サカエさんのばかばかばか!!!」
シクラがサンドウィッチの籠を置いたまま走っていってしまった。
なんだと言うんだ。
すると蝶翅の大人しい妖精達がクスクス笑いながら飛んできた。
「楽器工房から出るなんて珍しいなお前ら、どうしたんだ?」
声をかけるがいつも通りの無視をした後に眠そうな目をこちらに向けながらニヤニヤする妖精達。
「メシウマ」「サカエ×アルストね」「あの子素質あるわね」「もう、頭の中が腐りきってるね」「今度工房に呼ぶ?」
つまりそう言う事か?
後ろを振り向くとシャツをはだけさせて肩を隠したアルストが座っている。
「お前いつからそのシャツ着てた?」
「え?ノックしてからすぐだよ?」
「つまり?」
「うん、勘違いしてるよね」
…………………………。
「シクラ待てこらぁぁぁ!!!」
「ちょ!待ってよ!!」
俺が飛び出すとアルストもサンドウィッチの籠を拾ってスタジオから飛び出す。
「あれ?体軽いや」
「そりゃそうだろ。魔力が循環してるんだからな」
「すごいね、僕シクラさん捕まえてくるよ!」
「多分無理だぞ、いくら浴衣でもシクラ普通じゃねぇから」
直後アルストは視界から消えた。
ん?なにこれ?
    なんであいつあんなはえーんだ?    素面じゃ追いつかねぇぞ。
『忍者セット・韋駄天・リアクト解放』
「お前ら待てコラぁぁ!!!!」
ビルから飛び出すと三軒隣のビルの壁を走る二人の姿があった。
「待ってシクラさん!!勘違いしてるよ!!」
「勘違いじゃないもん!!!」
「違う!!僕とサカエさんはなにもないよ!!」
「こないで!!もういいの!!」
「良くないよ!!僕とサカエさんはなにもしてない!!」
シャツのはだけた美男子が泣いている女の子に大声で弁明している姿を見て俺は気絶しそうになる。
「お前らその会話やめろこらぁぁ!!!!」
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