異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題
第二十一話
「ふぁぁぁ」
あの最終公演から一週間が過ぎようとしている。 予想に反して糸田はまだ現れていない。
あのテアトロは恐らく糸田が操っている高次元の人形、またはそれに近い何かのような気がする。 作られた存在…とでも言うのかな? あの日を境に、この国から逃げようとするテアトロの仲間を捕まえて銀仮面を剥がしたがみんな同じ顔をしていた。
不気味さを感じながらも、次の楔を連れてくる際になんらかのアクションはあると思ったが、これと言って代わり映えの無い毎日だ。
新たに楔が送られてくる気配も今の所は無い。
ゴチャゴチャ考えるのも面倒なので、こちらから出向いて型に嵌めようかとも思ったが如何せん遠いし焦った所で糸田の利息は天文学的数字だ、ケツの毛まで毟る事を考えれば今はまだ放置でいいのかも知れない。
「あれぇ?サカエさん!!ワタシのアップルパイ知りませんか?」
「え?知らねぇぞ、どうせあいつらだろ」
顎をしゃくった先に天井を見つめる白々しいトンボ翅の妖精達が背筋を伸ばす。
「「「「「ビクゥ!!」」」」」
「ほらな?」
「口で言っちゃいましたね…」
そうそう、あれから色々話し合ってシクラが俺の家の横に作った離れに住むようになったんだ。 ゴーウェンのおっさんも最前列でドバドバ鼻水垂らして泣いてたから退職じゃなくて休職ってカタチで上手くやってくれた。
とりあえずは大丈夫だと思うけど念の為にって感じでな。
毎日お菓子作ったり花を植えたり女の子らしい事を楽しんでるみたいだ。
「まぁ、俺の正体怪しんでるのはゴーウェンのおっさんと酒場のマスターのロイぐらいで平和なもんだしな」
「なんか言いましたぁ?」
「なんもないよ、ちょっと散歩してくるわぁ」
解せん。
普通ならこんな異世界転移みたいなわけのわからん物語みたいな事が起きてるなら、物語らしく糸田が現れて詰めまくる!的な流れは確定だと思っていたんだが、こうも平和すぎると眠気が抜けない。
だが、俺はコルツ子爵領での失敗は忘れないぞ。
目立っていい事なんて何も無い。
暇?平和?素晴らしいじゃないか。 若干糸田にはムカつきを覚えるが、俺の異世界LIFEを無駄にしてまで大陸横断なんてありえない。
けど、ムカつく。
むむむ。
「うわぁぁぁ!!!なんだこれ!!めっちゃムカつくぞクソが!空気読みやがれクソ糸田!!」
すまん、取り乱した。
細かい事を気にするのはやめて、楽しもう楽しもう。 大事な事なので二回言っておく。
こんなにもネオスラムの昼下がりは素晴らしいのだから!!
ベチャ。
「え?」
突然足元に聞きなれない音が響く。 ゆっくりと下を見てみると小さな男の子が半泣きで散らばったポテトサラダを見ている。
うん、知ってる。
それそこの角曲がった所のポテトサラダだよね。 よく食べるよ。
「ごめんなさい……」
男の子は目に一杯の涙を浮かべて汚れた手で俺のジーンズについたポテトを取ろうと頑張る。
「大丈夫だ坊主、結構な量だが出前か?」
コクンと頷く男の子を見て、これは可哀想な事をしてしまったと俺も頷き返すしかできない。
「よし、なら俺の服が食っちまった分は俺が買ってこよう」
「ダ、ダメですよ、そんなの!」
「いいんだよ、いつも食ってるしな!美味しい料理にお礼だわ」
「でもぉ」
一日一膳だな。 元はと言えば俺がボーッとしてるから悪いんだしな、うん。 汚れは着替えれば済むしな。
とりあえず木箱一つ分のポテトサラダを買ってから少年にプレゼントして清々しい気持ちのまま服を着替えた。
かわいい笑顔でありがとうと言われると本当にいい事した気分になる。
ベチャ。
直後だった。
頭の上から鳥の糞が落ちてきた。
うん、これも俺が悪いな、こんな街で路地裏に長くいればそら鳥の糞ぐらいふってくる。
運が良かったと考えよう。
『浄化』
うん、すぐ綺麗になるしな。
ベチャ。
次は犬の糞を踏んでしまった。
あぁ、そういう事か。 今日は家に帰るべきなんだ。 そうだな、間違いない。
キンッ。
「いや、お前それはダメだろう、普通ならグチャってなるぞ?」
「い、いいから金出せよ」
いきなり刺されましたね…いやぁ、ついてないと言うかなんと言うか…。
………………。
……………。
…………。
………。
……。
…。
「ふぁぁっっっく!!!!」
「ひ、ひえぇぇぇぇ!?!」
「とりあえず許してやるから消えろ」
「は、はいぃぃ!!!」
勢い余って壁潰してしまった。 目立ちたくないのに。
これはあれか? 結局あれなのか? 糸田を詰めにいけと言う事なのか?
いいだろう。
行ってやろうじゃないの。
一日では無理かもしれんが、転移石で帰って来てを繰り返せばある程度は行けるだろうし、やってやりますよ、えぇ。
クリーニング代も加算して回収してやりますよ。
韋駄天で突っ走ればそんなにかからないだろうしな。
リアクト全開で行ってやりますよ、まったく。
あれ、エナジーポーション何処だったっけか?
アイテムボックスも拡張すりゃいいってもんじゃないな。
石ってなんだよ。 何に使うんだよ。
「オラッ!!てめぇ早く金出せよ」
「もう、ないよ……」
「それでも貴族かよ!こんな奴と同格なんて俺は認めねぇぞ!!」
「シャンスとこいつは同格なんかじゃねぇよ。侯爵と辺境伯なんて天と地の差だろ?」
「それでもお情けで同格に見られるのは気にくわねぇんだよ、社交界でも一昔前の流行とかのだせぇ服きてくるしな」
「…僕の事を悪く言うのはいい、でも…家の事を悪く言わないでくれ」
「うぜぇんだよ!オラッ!!」
「うぐっ、がはっ」
「落ちこぼれのお前が俺様に生意気言ってんじゃねぇぞ!魔法で焼いてやろうか!?あ?」
うーん、ネオスラムの一画でブレザーの制服を着た貴族の子息達のイジメ。
絵的にすごいおかしい。
だってみんな美形だもんな。 カメラ回ってる? 収録じゃないよね?
この明らかなイベントフラグ、拾うべきか捨て置くべきか…。
うわっ、いじめられてる子のジト目がすごい。
「うわー、いたいよー」
「棒読み!?」
くそっ、突っ込んでしまった。
「だ、だれだ!?」
面倒だなぁ。 しかも侯爵とか言ってたから貴族のイザコザだろ? 定番っちゃ定番だけど目立ちたくないしなぁ…。
なんか、仮面無いかな? あっ、あるわ。 オペラ座のやつみたいなん。 これでいいや。
「なっ!?いつからそこいた!!」
「なんなんだよお前は!どっかいけよ!!」
「タダの通りすがりの仮面ラ○ダーだ」
くぅぅー! 一回言ってみたかったんだよなコレ。 どんな変態だよ!って話しだよな、通りすがりに仮面ライ○ーなんか通ったら。
ただ、オペラ座系の仮面ってのがいただけないけど。
「どっかいけよ!怪我するぞ?」
「そうだ!どっか行けよ!!」
「ネオスラムでそんな事言って大丈夫かな?誘拐して身代金請求して男娼に売り飛ばしてアヌ○ハッスルなホモォな展開が待ち構えてるかも知れないぞ?なんてったって仮面○イダーは強いからな!!ホイっ!!」
デモンストレーションにゴミステーション的な鉄カゴ粉砕してみる。
するとイジメっ子三人はベタに腰を抜かして「はわわわわ」と。
さぁ、言え。 あの定番のセリフを。
「お、お、お、おぼえてろよ!!」
「あっ!シャンス君待って!」
「置いてかないで!!!」
「フハハハハ!貧弱貧弱ぅ!!あーすっきりした。で、お前大丈夫?」
横たわる少年に問いかけてみる。 少年はユックリと体を起こして小さく笑う。 生きてるようで一先ず安心だ。
「見ての通りボッコボコだけど?お礼言った方がいいかな?」
「別に構わんよ、楽しかったしな」
「うん、その感じは伝わってきたよね、ヒシヒシと」
なんだこいつ。 ちょっと面白いぞ。
「近所に最高に美味いポテトサラダを出す屋台があるんだが、それを食べながら少し話さないか?」
「えぇ!口の中切れてるのにポテトサラダぁ!?」
暇潰しみーつけたっと。
あの最終公演から一週間が過ぎようとしている。 予想に反して糸田はまだ現れていない。
あのテアトロは恐らく糸田が操っている高次元の人形、またはそれに近い何かのような気がする。 作られた存在…とでも言うのかな? あの日を境に、この国から逃げようとするテアトロの仲間を捕まえて銀仮面を剥がしたがみんな同じ顔をしていた。
不気味さを感じながらも、次の楔を連れてくる際になんらかのアクションはあると思ったが、これと言って代わり映えの無い毎日だ。
新たに楔が送られてくる気配も今の所は無い。
ゴチャゴチャ考えるのも面倒なので、こちらから出向いて型に嵌めようかとも思ったが如何せん遠いし焦った所で糸田の利息は天文学的数字だ、ケツの毛まで毟る事を考えれば今はまだ放置でいいのかも知れない。
「あれぇ?サカエさん!!ワタシのアップルパイ知りませんか?」
「え?知らねぇぞ、どうせあいつらだろ」
顎をしゃくった先に天井を見つめる白々しいトンボ翅の妖精達が背筋を伸ばす。
「「「「「ビクゥ!!」」」」」
「ほらな?」
「口で言っちゃいましたね…」
そうそう、あれから色々話し合ってシクラが俺の家の横に作った離れに住むようになったんだ。 ゴーウェンのおっさんも最前列でドバドバ鼻水垂らして泣いてたから退職じゃなくて休職ってカタチで上手くやってくれた。
とりあえずは大丈夫だと思うけど念の為にって感じでな。
毎日お菓子作ったり花を植えたり女の子らしい事を楽しんでるみたいだ。
「まぁ、俺の正体怪しんでるのはゴーウェンのおっさんと酒場のマスターのロイぐらいで平和なもんだしな」
「なんか言いましたぁ?」
「なんもないよ、ちょっと散歩してくるわぁ」
解せん。
普通ならこんな異世界転移みたいなわけのわからん物語みたいな事が起きてるなら、物語らしく糸田が現れて詰めまくる!的な流れは確定だと思っていたんだが、こうも平和すぎると眠気が抜けない。
だが、俺はコルツ子爵領での失敗は忘れないぞ。
目立っていい事なんて何も無い。
暇?平和?素晴らしいじゃないか。 若干糸田にはムカつきを覚えるが、俺の異世界LIFEを無駄にしてまで大陸横断なんてありえない。
けど、ムカつく。
むむむ。
「うわぁぁぁ!!!なんだこれ!!めっちゃムカつくぞクソが!空気読みやがれクソ糸田!!」
すまん、取り乱した。
細かい事を気にするのはやめて、楽しもう楽しもう。 大事な事なので二回言っておく。
こんなにもネオスラムの昼下がりは素晴らしいのだから!!
ベチャ。
「え?」
突然足元に聞きなれない音が響く。 ゆっくりと下を見てみると小さな男の子が半泣きで散らばったポテトサラダを見ている。
うん、知ってる。
それそこの角曲がった所のポテトサラダだよね。 よく食べるよ。
「ごめんなさい……」
男の子は目に一杯の涙を浮かべて汚れた手で俺のジーンズについたポテトを取ろうと頑張る。
「大丈夫だ坊主、結構な量だが出前か?」
コクンと頷く男の子を見て、これは可哀想な事をしてしまったと俺も頷き返すしかできない。
「よし、なら俺の服が食っちまった分は俺が買ってこよう」
「ダ、ダメですよ、そんなの!」
「いいんだよ、いつも食ってるしな!美味しい料理にお礼だわ」
「でもぉ」
一日一膳だな。 元はと言えば俺がボーッとしてるから悪いんだしな、うん。 汚れは着替えれば済むしな。
とりあえず木箱一つ分のポテトサラダを買ってから少年にプレゼントして清々しい気持ちのまま服を着替えた。
かわいい笑顔でありがとうと言われると本当にいい事した気分になる。
ベチャ。
直後だった。
頭の上から鳥の糞が落ちてきた。
うん、これも俺が悪いな、こんな街で路地裏に長くいればそら鳥の糞ぐらいふってくる。
運が良かったと考えよう。
『浄化』
うん、すぐ綺麗になるしな。
ベチャ。
次は犬の糞を踏んでしまった。
あぁ、そういう事か。 今日は家に帰るべきなんだ。 そうだな、間違いない。
キンッ。
「いや、お前それはダメだろう、普通ならグチャってなるぞ?」
「い、いいから金出せよ」
いきなり刺されましたね…いやぁ、ついてないと言うかなんと言うか…。
………………。
……………。
…………。
………。
……。
…。
「ふぁぁっっっく!!!!」
「ひ、ひえぇぇぇぇ!?!」
「とりあえず許してやるから消えろ」
「は、はいぃぃ!!!」
勢い余って壁潰してしまった。 目立ちたくないのに。
これはあれか? 結局あれなのか? 糸田を詰めにいけと言う事なのか?
いいだろう。
行ってやろうじゃないの。
一日では無理かもしれんが、転移石で帰って来てを繰り返せばある程度は行けるだろうし、やってやりますよ、えぇ。
クリーニング代も加算して回収してやりますよ。
韋駄天で突っ走ればそんなにかからないだろうしな。
リアクト全開で行ってやりますよ、まったく。
あれ、エナジーポーション何処だったっけか?
アイテムボックスも拡張すりゃいいってもんじゃないな。
石ってなんだよ。 何に使うんだよ。
「オラッ!!てめぇ早く金出せよ」
「もう、ないよ……」
「それでも貴族かよ!こんな奴と同格なんて俺は認めねぇぞ!!」
「シャンスとこいつは同格なんかじゃねぇよ。侯爵と辺境伯なんて天と地の差だろ?」
「それでもお情けで同格に見られるのは気にくわねぇんだよ、社交界でも一昔前の流行とかのだせぇ服きてくるしな」
「…僕の事を悪く言うのはいい、でも…家の事を悪く言わないでくれ」
「うぜぇんだよ!オラッ!!」
「うぐっ、がはっ」
「落ちこぼれのお前が俺様に生意気言ってんじゃねぇぞ!魔法で焼いてやろうか!?あ?」
うーん、ネオスラムの一画でブレザーの制服を着た貴族の子息達のイジメ。
絵的にすごいおかしい。
だってみんな美形だもんな。 カメラ回ってる? 収録じゃないよね?
この明らかなイベントフラグ、拾うべきか捨て置くべきか…。
うわっ、いじめられてる子のジト目がすごい。
「うわー、いたいよー」
「棒読み!?」
くそっ、突っ込んでしまった。
「だ、だれだ!?」
面倒だなぁ。 しかも侯爵とか言ってたから貴族のイザコザだろ? 定番っちゃ定番だけど目立ちたくないしなぁ…。
なんか、仮面無いかな? あっ、あるわ。 オペラ座のやつみたいなん。 これでいいや。
「なっ!?いつからそこいた!!」
「なんなんだよお前は!どっかいけよ!!」
「タダの通りすがりの仮面ラ○ダーだ」
くぅぅー! 一回言ってみたかったんだよなコレ。 どんな変態だよ!って話しだよな、通りすがりに仮面ライ○ーなんか通ったら。
ただ、オペラ座系の仮面ってのがいただけないけど。
「どっかいけよ!怪我するぞ?」
「そうだ!どっか行けよ!!」
「ネオスラムでそんな事言って大丈夫かな?誘拐して身代金請求して男娼に売り飛ばしてアヌ○ハッスルなホモォな展開が待ち構えてるかも知れないぞ?なんてったって仮面○イダーは強いからな!!ホイっ!!」
デモンストレーションにゴミステーション的な鉄カゴ粉砕してみる。
するとイジメっ子三人はベタに腰を抜かして「はわわわわ」と。
さぁ、言え。 あの定番のセリフを。
「お、お、お、おぼえてろよ!!」
「あっ!シャンス君待って!」
「置いてかないで!!!」
「フハハハハ!貧弱貧弱ぅ!!あーすっきりした。で、お前大丈夫?」
横たわる少年に問いかけてみる。 少年はユックリと体を起こして小さく笑う。 生きてるようで一先ず安心だ。
「見ての通りボッコボコだけど?お礼言った方がいいかな?」
「別に構わんよ、楽しかったしな」
「うん、その感じは伝わってきたよね、ヒシヒシと」
なんだこいつ。 ちょっと面白いぞ。
「近所に最高に美味いポテトサラダを出す屋台があるんだが、それを食べながら少し話さないか?」
「えぇ!口の中切れてるのにポテトサラダぁ!?」
暇潰しみーつけたっと。
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