だんます!!

慈桜

第百五十五話 ヤムラ?

  やっほ、俺だよ。 ご察しの通りだんますだ。 でも、俺は多分みんなが知ってるだんますとはちょっと違うんだ。
 俺は八村明路、言えばいつの間にか異世界に送り込まれてダンジョンマスターなんてするハメになったただの日本人だ。
 永遠にも続く長い長い時間を過ごす事に飽きて、だんますはオートメーションって感じにして、自身をこのただ暗い無の空間として眠り続けていたはずなんだけども、何故か幼女が訪れる事案が発生したなうで目が覚めてしまった件。
 ほんで何がびっくりかって、この幼女俺が死ぬ思いでゲットした魔眼をダブルスタンバイしてる案件なんだけど、みんななんでか知ってる?
「そこに誰かいるの?」
 ねぇ、幼女起きたんだけどこの場合どうしたらいいの? 俺ってば一ブス、ニBBA、三幼女が三大苦手女子なんだけど、バッチリ三位にランクインしてるんだよねこの娘。
「うーん、なんだろ。なんも見えない」
 そりゃそうだよね。 この子の右目の鏡の魔眼ってグランアースの空の上にある大陸の由緒正しき王族に発現する魔眼でさ、普通に技コピーするぐらいの鏡魔眼なら貴族らへんでも使えたりするんだけど、この子って今天鏡眼ソラウツスメってっ言う上位の魔眼になってるわけ。 どれぐらい凄いって、この子をシエル、あ、その天空の大陸に連れてったら一撃王族判定余裕でした本当にありがとうございましたってなるぐらいすごいんだよね。
 昔の俺なら本気で戦ってゲットするね、だって魔眼って熱いじゃん?  心の底から湧き上がるなんかがあるじゃん? マ◯毛強いみたいな。 こと所有者が幼女ってなるとお手上げだけど。
 普通なら魔眼持ちってビッシャビシャの高飛車の調子乗りが多いんだよ。 私は選ばれた者であるからしてぇとか我が一族が最強たる所以んんんとかの厨二病末期に拗らせた勝ち組のイケメンが多いもんで、ブ男で童貞拗らせて大魔法使いになった俺が悉くを討伐するに至るまでそう時間は必要としなかったのはお分かりいただけるかな?
 もしかしたら俺とコアはこの子なら天鏡眼を発現する素養がありそうだと思って与えたのかな? いや、そんなわけないな。 どうせ幼女に対する苦手意識で嫌がらせか体良く逃げようとしたんだろうな。
 昔よくこれぐらいの女の子に逆に話しかけられて職質されたしな。
「ねぇ!! 誰かいるよね?! 変な感じするよ!」
 居るって言うか、この空間その者が俺なんですけどね。
 はっ?! まさかこれは開眼イベントではないだろうか? この幼女が天鏡眼を使い熟す為の修行パートにまさかのリアルだんます登場フラグ?
 なんたる。
 これは全力で神を演じねばなるまい。
『よく来たメスガキよ』
「メイズお兄ちゃん?」
 ぬあっほい。緊急事態発生だ。 この幼女は俺の声を聞いてメイズだと勘違いをしているって事は、メイズがイコールだんますだって事実を知らずにお兄ちゃんと呼んでまで慣れ親しんでいる可能性浮上?!
 いや、ありえんだろ。 俺の性格上早々に下手打って俺tueeな感じで生産者達を助けてやっぱだんます素敵やんって空気でワクテカしながら悦に浸るはずだ。 しかも一介の幼女が天鏡眼を発現する程に難易度アビス級の修羅場を潜る世界ってなったらラビリで無双してるはず。
「違うの?」
『違うよ! はーい!ぼくミッチーだよ!』
 くそ! 何故モノマネのレパートリーが少ない。 某ネズミの王国の支配者のネズミの声真似ぐらいしか出来ない自分に苛立ちが隠せない。 それっぽく掠れた声にして、平泉っぽくセイイエス。
『よく来たね、君は天鏡眼ソラウツスメに選ばれたから此処に来たんだよ』
 けど良く考えたなぁ。 左目の吸魔の魔眼と併用して命の森みたいに魔素に満ち溢れた空間で馬鹿ほどコピーしまくれば天鏡眼行けるかって無理だな。 絶対途中で目ん玉へしゃげるの確定。 そう考えたらこの子ってばやっぱり天才とかの部類なのかしら? それとも運が無茶苦茶いいとか、それこそありえんな。
「そらうつすめ?」
『そうだ。世界に影響を及ぼす強大な力が使えるようになる最高峰の魔眼であるが、六花、いや、ややこしいのはなしだ。どう言った能力が発現するかは個々による。まぁ、ここに訪れた事を鑑みるに精神干渉の系統だと思うが、使い熟せるように修行してみるかい?』
「うん、修行する」
『そうか。ならば私の事はヤムラ神様と崇めるがいい!』
「わかった。ヤムラシン様だね」
 何この子馬鹿なの?すんごく楽しい。 こうしてヤムラ神による修行が始まったのだってナレーション入れて欲しい。
 てか天鏡眼の精神干渉系統ってどんなんだったかな? 俺がされてうんこ漏らしそうになったのは王様が使ってたソラウツスメ名前そのままに天空を魔眼に変えてありとあらゆる技を根刮ぎゲットされた奴だな。
 後は王弟の技だけじゃなく存在そのものを完コピするやつな。 シンプルイズベストで反則でしかなかったよ。
「修行ってなにするの?」
 全部で六種類あるんだけども、このちみっ子はどんな天鏡眼なんだろうか。 早急に修行をご所望のようだけど、精神干渉系統の天鏡眼ねぇ……。
 反転かな? いやアレは精神干渉ってより事象のバグだしな。 うぎゃーやられたー! ふふふ、いつから俺にダメージを与えられたと勘違いしていた。ぐふって奴な。 シエルの王妃様、あの時は寝床を城ごと叩き潰してごめんなさい。
 王子とか姫からも魔眼回収したけどガキ達はノーマルの鏡の魔眼だったしな。 なんでそんな事するんだってツッコミは無しね、某有名海賊漫画の偉い奴らならタヒねって感じの風潮あるでしょ?グランアースでもそうしなきゃ下界やばいおってなってたわけ。 言わばヒーローになれて魔眼ゲットのそれこそダブル定額でお得な感じだったわけよ。
 閑話休題。
 このおチビは他人の精神世界に干渉できる新しいタイプなのかもしれんな、まさにニュータイプ。
『眼で見ようとするな。眼に映すのだ、そして写せ。焼き付けて理解しろ』
「技を真似するのと一緒?」
『それは見ているだけだ。映る全てを理解し写し出せばいい』
 なにこれ楽しい。 仙人とかになった気分。 実際仙人でもあるんだけど。
 さて、これで幼女はこの精神と時の違うな、しくじるとこだった。 この精神世界に於いてスーパー集中モードになってしまったから暇なわけだが……。
 コア仕事しろよ、俺起きちまってるぞ。って聞こえるわけないわな。 もう一回ちゃんと寝る為には外の俺がピンチになって、助けてヤムラ様!って状態でロールアウトさせて、再封印してもらうしかないかぁ。 けどそんな時って無茶ぶりばっかりだしな、めんどくなったら丸投げって人として及第点な変なとこだけ俺と同じなんだよな。どっちにしろ俺だけど。
 いや、無理矢理出るか。 でもそれが出来る世界かどうかもわからんしな。
『なぁなぁおチビおチビ、葬儀屋アンダーテイカーっている?』
「おチビじゃない、メイファー」
『ふぁぁ、ファブルスコォ、モルスァ!! じゃなくて葬儀屋アンダーテイカーいる? 棺持ち歩いてて鎖振り回すハードコアなヤンデレっぽい奴』
「いるよ。ジャイロお姉ちゃんとジンジャーお兄ちゃん。でもジンジャーお兄ちゃんはお爺ちゃんの扉がいっぱいの部屋にいるから会えない。外に出たら忘れちゃうし」
 なにその閻魔臭い奴。 てかジャイロってジャイロ? おっぱいメアリーのジャイロかな? って事はグランアースか、いや、それはないな。 グランアースなら此処に起こしにくる奴がいるしな。 って事は兎で別の世界に行ってるって事だろうけど、葬儀屋アンダーテイカーに兎使わせるような事態なんてある?
『なぁモルスァ「メイファー」メイファー、ジャイロって歯がギザギザの赤い髪のおっぱいぷるんぷるんの奴?』
「後お腹がね、ぼこぼこなの」
 確定だな。
『なんでメイファーの世界にジャイロが来たか知ってる?』
「メイファーがね、分身したらキラキラって消えて穴が空いたんだ。そしたら出てきた」
『なるほどわからん』
 だから幼女苦手なんだよぉ!! もっと難しく説明出来るだろぉ!! お前がわかりやすいって思って言ってる内容って古代の解明されてない文字列よりぃ……は簡単だよな。
 分身がキラキラ消えてって事は、世界式の修正が入る必要がある事象ってわけだ。 まず分身ってなんぞや? はっ!? もしやこの幼女は忍者系統なのでは? いかん、いかんぞ。ネタの忍者職で分身となると上忍以上、こやつ魔眼操る忍者とかなんたる猛者って、あれは残像みたいなもんだから世界式の修正なんて入らないよな。
『まぁいいや、お前こっから出たらさ、そのお爺ちゃんとこ行ってこの世界の葬儀屋アンダーテイカー連れてきて』
「でもジンジャーお兄ちゃんはすぐ忘れちゃうんだ。あまり関わり無かったし」
『いけるいける。メイファーは出来る子だよ。気合いでいこ、気合い!』
「でもお爺ちゃん恐い。赤い眼で見られたら死んじゃうんだ」
 すごい、ダブルで閻魔感満載。 死のルーンじゃないのそれ? けど閻魔の世界式が発現したら俺自動的に顕現する仕組みにしてるしな。 多分閻魔に近い強敵に俺は四苦八苦してるんだろな。 乙、頑張れ俺。
 じゃあメイファーの宿敵を仮想閻魔として攻略法を与えよう。
 でもその前に天鏡眼を使い熟すのが先だけどね。 こんなレアな場所に漂流するぐらいバグってるなら本体死にかけだろうし。
 あぁ、暇だなぁ。 こんな暇なぐらいなら寝るなんて言わなきゃ良かった。 たまにピンチで颯爽と現れて、コアにこれまでのログを更新してもらったら、また長生きしたわぁってなって寝れるんだけどな。
 クソ幼女め、まだ眼に力入れて難しい顔してやがる。
 ちょっと遊んでみようか。
『なんでわからないの?』
「わたし?」
 そう、俺はメイファーちゃんの姿を借りてやったのだ。 この方が特別な修行感出るだろい。
『わたしはあなた、あなたはわたし。なんでわからないの?』
「違う! メイファーじゃない!!」
 なんか力を使って抗おうとしてるけど無駄でござる。 ここは精神世界でも深層の深層。 俺の許可が無ければ何も出来ない、今許しているのは天鏡眼の行使だけ。
『わたしはメイファー。うさぎさんのパンツをはいてる。ほれ、ほぉれ』
「メイファーはそんな事しない!」
 でしょうね。スカート捲りあげてほれほれなんて場末のスナックでも無いだろうよ。 ゲイバーあたりならってまた話が逸れたな。
『何故わかっているのにわかろうとしないの? その眼はあなたの眼なんだよ?』
「違うもん。メイファーの眼はこんなのじゃないもん」
 理解しはじめたな。 もう一押しだ頑張れモルスァ! お前が思ってるよりずっと時間は流れてるからな。 早く気付け、そして俺を外に出す為に働け。
『どうして? 力が強すぎるから? 今でも人が努力して手に入れた能力を簡単に使ってきたじゃない』
「でも違うもん。こんなの、誰にも構ってもらえなくなるよ」
 メイファーの涙が俺の世界に落ちる。
 エクセレント! 素晴らしい!
 涙の一滴が俺の無の空間を彩って行く。 大自然の中に咲き乱れる色とりどりの花々、そして可愛らしい妖精にお菓子の家。 デフォルメされた熊や兎に俺。ん? そして大きな木の下で木漏れ日に昼寝する俺、俺ぇ?! すごいな、服装的にメイズだけど俺だ。 メイファーの姿を借りて話しかけてた俺がメイズの姿に切り替わってる。 どう言う事? けど空間としての俺の意識も重複してる。 なんか強引に此処に設置された気分だ。
「思った通りにならないから、そうなるように頑張るから楽しいんだよ」
 そうだよな、まさにメイファーの言う通り、何もかもが思い通りになるならそれは人として、いや演者としては終わりだ。 そうなってしまえば脚本に回った方が良いだろう。
 だが、どんなに神のような力を持っていても何もかもが思い通りになる事なんてあり得ないだろ。
 自分1人で全てをこなして一年かかる演劇に、キャストを用意する事によって3カ月で終わるなら、それはキャストを必要とする演劇だ。
 だが主役が遅刻ばかりしていたらどうする? ヒロインが病気で倒れてしまったら?
 効率を良くするなら人の手が必要となるが、それに関するヒューマンエラーやトラブルも少なからずある。 たかが魔眼で超常の力を得たからと言って、まるで神になったとでも言わんばかりに嘆き悲しむのは烏滸がましいだろう。
 何故例えが演劇かってツッコミは耳栓を用意しておく。
「この場所のヤムラシン様は、ちゃんといるよ。でも今メイファーが話しかけてるメイズお兄ちゃんは、メイファーの心の中にいるメイズお兄ちゃんをヤムラシン様として映してるの。メイファーの天鏡眼は心の中を映せる。本物にできるの」
「ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない」
「メイファーも説明できない。でもこんなのいらない」
 アウトプット型って事かな? じゃあ今の俺は俺の意識三号機って事? 何その活躍を待たずに主人公機にやられる感。 でもソラウツスメならずココロウツスメって感じなら胸熱だよな。
「おいメスガキ、ちょっとアドバンス寄越せ」
「そんなに万能じゃない。なんでも映し出せるけどメイズお兄ちゃんを映して使い切った」
「じゃあ暗闇に戻してポータブル寄越せ」
「やろうと思えばヤムラシン様のココロの中も映せるんだよ。きっとルーンも知れる」
 なんだ、ただの便利な魔眼じゃないか。 ガチの天鏡眼なら空の下に存在する者の全てのルーン強制的にゲットできたし、完コピの奴も一回コピーしたら文字通り完コピだったし、反転の奴も言わずもがなだったしな。 自分の心の中で描いた事象をアウトプット出来て、人の中身も知る事ができるって感じか。 じゃあ夢のチートホムンクルス作れるパティーン? ホムンクルスってある一定から打ち止めだから家事全般的な戦うハウスキーパーって感じで残念感半端ないんだよな、うん。
「良きチートでござる。けどそんな悲観する事ないよ。グランアースで家族みんなそんな魔眼って極悪な奴らもいたしな、それに」
「それに?」
「メイファーは弱いから能力が凄くてもそれに追いつけてない。だから今までとあまり変わらんさ」
 だから俺のお願い聞いてくれ下さい。
「この姿で外に出ると色々問題ありそうだからさ、この世界の葬儀屋アンダーテイカー庭師ランドスケーパー連れて来てくんない? この体を今からルーンに変換するから、ヤムラ様で登録しとけよ、そのおめめに 」
「すごい。これでいつでも会えるね」
 存在のルーン変換なんて初歩の初歩だからね。 こんな空間だけの俺でも簡単に出来る。 対象になる存在があったからだけだけどね。
「いいか、忘れんなよ。どっちも連れてこい。後連れて来る時は広くてなんもない土地選ばなきゃだぞ? それで俺を起こした事はチャラにしてあげるからねモルスァ「メイファー」ちゃん」
 うん、お帰りいただけましたね。 けど外の世界で二、三ヶ月過ぎてるだろうけど大丈夫かね? 起きたら病院で誰もいませんでしたとかテンション下がりそうだけど泣かないでね?
「本当にモルスァちゃんが俺が言った通りに動き回ってくれるんなら、後ちょっと待ってれば来るんだろうけど、スタジオにお返しします」

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