だんます!!

慈桜

第八十九話 バカと鬼子は使いよう?

  鬼さんこちら手の鳴る方へ。 美しいとは思わないか? 光輝く命の森の中に、異形の怪物達が息を切らしながら必死に逃げ回っている、きっと今頃、なんで私が!なんで僕がこんな目に!と嘆いている頃だろう。
 さっさと捕まえろ? ナンセンス、全くナンセンスだわ。 命の森の空を雨雲が覆って、その水滴に光が反応して、森の精がふよふよ浮いて見えるんだぞ。
 ワテクシこれでもダンジョンマスター、儚いものにはそれなりの嗜好がありやんす。 中でも桜と森精と人の命たるはなんと脆く美しいのでしょうかと、えーえー 、ヘローヘロー、大丈夫です。此処にいます。
 ふざけ過ぎたが、ようはちょっと綺麗だったから歩いて追いかけてますって事です、はい。
「でさ、綾鬼くんだっけ?なんで逃げないの?」
「漏れが死んだら樹鬼と紗鬼は助かるンゴ?」
 顔面騎乗上等のパーカーの子。 こいつはパーカープリントの印象が強すぎて否が応にも覚えてたんだが、なんと高尚な事でしょうか。 お仲間の為に命を差し出すなんて。 あぁ、どうか綾鬼君に神のご加護がありますように。
 けど、こう言った自己犠牲の境地に達してる奴ってのは、正確な判断が難しくなったりするよな? まるで保育士や看護師や歯科衛生士が自己犠牲の上に成り立つ恋愛中毒者が多いってのと同じようにってこれは関係ないか。
「よし気が変わった。お前には仕事をしてもらおう。鬼っ娘を生かすも殺すもお前次第だ」
「……何をしたらいいンゴ?」
「そうだな、じゃあお前は今から露国に飛ばす。そこである事をして貰いたい。それが成功したなら、お友達を解放してやろう」
「なんでもやるンゴ、だから樹鬼と紗鬼の命は助けて欲しいンゴ」
「じゃあちょっと頭触らせろ」
 チョロい。 非常に都合のいい手駒が手に入った。別に首だけガパガパ人形にしてもよかったんだが、襲いかかってこないならハクメイにカッコつけた意味ないしな。
「指令書はお前の頭の中だ。良き任務結果を待ってるよ。じゃあな」
 ぶっ飛びぃ。 やる事が多いと口説明は長いからな。 脳内にスクロールを埋め込んでやった。 古典的な洗脳方法だが、拒絶しなければ効果がある。 カルト教団とかが、神のお告げだ!とか言って乱用してたんだが、全員のスクロール抜いて教皇に祭壇で自慰させたら壊滅したのはいい思い出だ。
「んばぁ!!」
「ひぃやぁっ!!」
 すげぇな、樹木のゴーレムみたいな鬼だ。 バラしたい、どうなってるんだろ。 けど、どうせ中の人が必要な感じのくだらない内容だろうな。 俺なら冒険者を好き勝手改造できるなら最終的に構成式を抜き取って量産するけどな。 犠牲1に対して戦力無限とか胸熱だろ。 樹木鬼の種子とかアイテムショップで売ったら爆売れしそう。
「あれ、腰抜かしちゃった?」
 目の前で鬼の姿が解けて、下着姿の女の子が腰抜かして泣いている件。 小ぶりながらも多少の膨らみがある推定Bダッシュ。 ここは一つ安心させる為にも揉んでみた方がいいのだろうか?
「そのワキワキした手を止めなさい!!」
 おぉ、こっちが紗鬼か。 ダブルヒットでござ。 こいつも面白いな、中身だけ成長させて、甲殻系の鬼の外皮で全身を覆ってる。 パワーファイトにも、防御にも優れた理に適った鬼と言えるだろうな。 まるで豆腐がネギを纏っているようだ、俺が醤油になってもいい。
「私が相手になるわ! 樹鬼は逃げなさい!」
 とりあえず殴りかかってきたので、優しく、もうそれは優しく。 まるで卵の黄身を箸でそっと持ち上げるように優しく外皮を剥ぎ取ってみる。
「きゃあぁっ!!」
 おぉ、なんたる。 外皮はアーマー化されていて、中身は成長した女子のままのようである。 肩と太ももと腹の部分が黒い管で一体化してる感じか。 ナイス女子、ナイスおっぱい。 いくら紳士の私でも細身のEカップ美乳となると、手加減は出来なくなる。
 ダメだ。ダメだダメだ。
 いくら人質にせねばならぬからと言って、ここで下ネタに走っていては、長年コアを愛でる熟練の紳士としての矜持が最も容易く崩れ落ちてしまう。
 しかし俺は摩天楼ほどの世界の頂点と言っても過言ではない程の風俗店を経営している真の変態とも言え…。
「よしお前、この下着姿のペチャパイは人質で預かっといてやる。お前には一つ仕事をして貰う。成功したらペチャパイは解放だ。どうだ?やってみるか?」
「その前に胸のアーマーを返して欲しい」
 外皮の一部を俺が持っているから、胸を隠しながらしゃがみこんでいるので、話し合いに応じずを得ないようである。 俺の知る女戦士たるは、乳を放り出しても剣を振るう奴ばかりなのだが、以外と乙女で尚良しである。
 しかし外皮を返して、こいつが鬼化を解いてしまうのはコアたそ復活フラグなんで、この外皮は俺が預かっておきたい。 今は全権委譲状態の方が都合がいいのだ。
 くそ、テンション上がって狼の奴殺したのは間違いだったな。 角折って放置しときゃよかった。
「じゃあ邪魔にならない部分のアーマーを寄越せ。腕でも足でもいいぞ?」
「足のアーマーをどうするつもりなの!?」
「腕でもいいって言っただろ」
 悍ましい変態を見る目で言われた。 角なしにされるよりはマシだろうに。 泣きたい、クンカクンカ。
「腕でもにおうの?」
「まぁ、いい。行くぞ」
 とりあえず転移します。 そろそろハクメイ達も正座から解放されたいだろうし、命のストックを把握してるとは言え溺死二回目のジンジャーも人生のハードさを思い知ってるだろう。 オリハルコンはプレゼントだハクメイ。 加工できるなら好きにするがいい。 この世界にはまだない金属であるし、ドワーフがいなければどうにもできんだろうがな。
「ここは?」
「ここはQ国だが、最近ここらで、あっ、いたいた」
「多々羅様!!」
「違う違う、多々羅が作った偽物だから」
 ターゲット発見しましたオーヴァ。 やり取りも面倒くさいので、早速ちょんぱします。
「多々羅様っ!?」
「だから違うっての。あー、面倒くさいなぁ」
 えーと、ナージャのミスリル反応を捕捉、周囲の生物の視界共有、最適化、ビジョン投影。
「ほれ、多々羅いるだろうが」
「ほ、本当にこれが偽物なの?」
 首ちょんぱの偽物多々羅が、未だ偽物だと思えないようだ。
「だとしたらナージャとかも此処にいるはずだろ。ミスリル人間の偽物は作れないから、多々羅とヒルコとカルラの偽物だけなんだろうよ」
 周囲を検索、ヒルコとカルラの偽物も発見、こんにちわ、お疲れ様でした。 これでとりあえずアイテムゲット。
「おい、紗鬼とやら。お前は今から、この3つの首を持って、ハクメイ達の所に行け。それで頼め。ダンマスにジンジャーさんと多々羅を天秤にかけろと言われて、多々羅さんを殺しました、露国に仲間が捕らえられているんです。ハクメイさんとジンジャーさんを連れてきたら解放してくれると約束してくれたんです、一緒に来て下さいって泣きすがれ。できなきゃ樹鬼も綾鬼も狗鬼・・そこの偽物と同じにしてやる」
 おそらく多々羅の作戦は、鬼子達を呼び戻すついでに偽物を狩らせて、ジンジャーに取り入らせて、葬儀屋アンダーテイカーを遠ざけようとしていた、はず。
 じゃないと、こんな中途半端な場所に偽物を設置する意味がない。 本来ならばうんこデバイスを使って、指令を出すまでの間に力を蓄えさせて、鬼達と戦わせて真実味を増した方が得だ。 鬼達を疑おうにも、状況が本物だと思わせる可能性もある。
 だが、それを逆手に取らせて貰おう。 ハクメイまでは釣れずとも、ジンジャーは今頃相当キレてる。 奴をそのまま露国に嗾けたら中々面白い事になりそうだろ?
「ジンジャー、ハクメイどっちでもいい、あいつらの何方かが、露国に入れば、人質は終了だ。簡単だろう?」
「わかった。やるわ」
「よろしい。じゃあ少し頭を触るぞ」
 念の為、通信機能を停止しておこう。 下手に裏切られて手間がかかるのもだるいからな。 しかし確かに世界式は良く似てる。 コピーペーストで管理者だけ変えたような乱雑な式だ。
「痛いっ!」
「よし、じゃあ鬼化が辛くなったらこれを飲め。魔力の回復薬だ。ちゃんとやり遂げたら、お前の腕も返してやる。鬼化したまま死にたくなかったら頑張れよ」
 鬼娘が上司の首3つ持ち上げて走り出した。 なんてシュールな絵面だろうか。 あ、アイテムボックスに入れたな。 今頃気付いたか。 さぁ、次にとりかかろう。 その前にペチャパイを預けなきゃな。 ……殺してしまおうかな?邪魔だし。 しかしゆるふわ系のショートボブ女子in下着姿をちょんぱできる程、俺は男を捨てたつもりはない。
「あのぉ、ここどこですか?」
「知り合いの家だ。奥さん、奥さぁん!!」
 とりあえず太郎ちゃん家に放置する。 危ないんじゃとか思うだろ? その心配はない。
「あっ!ダンマス!! おばちゃんなら買い物行ったよ!!」
 このジャリに跨る黒肌青眼の魔族ボーイことミュースに預けておけば心配ないのだ。 こいつは俺が強化しまくってるからな、こんな鬼程度は捕らえられた蜻蛉程度には無力だ。
「おいミュース、お前最近家出ばっかしてるらしいな。太郎ちゃんから毎日ライナーが来るんだぞ?」
「違うよ? 松岡くんと遊んで貰ってるんだよ!」
「お前なぁ。渋谷区と千代田区って結構あるんだぞ」
「え? 近いよぉ?」
 このペチャパイ、どっちかが喋るたびにキョロキョロするから面白いな。 元はコアが選んだ奴なんだから、いい子なのはいい子なのかも知れんな。 もう、他所の子だから知らんけど。
「ミュース、とりあえずこいつ預かっといてくれ。変な事したら殺してもいいぞ」
「うん、わかった! じゃあお姉ちゃん、とりあえずおばちゃんの服着よう!寒いでしょ!」
 ミュースは遊び相手を見つけたと言わんばかりにペチャパイの腕を引っ張って行く。 託鬼所の完成だ。 ペチャパイはおとなしいっぽいから心配は要らんだろうが、ミュースに預けておけばバッチリだ。
「じゃあ次に行こうか。その前に」
 あぁ、俺が動いただけで、こうも容易く積み重ねた物が崩れ落ち、強者が弱者に成り下がる。 これを俺Tueeeと言わずになんと言おうか。 気持ちいぃeeeee!! これだこれ、この万能感あってこそのダンジョンマスターだ。
「エクスタシィィィイイ!!」
 これだ、この天に掲げ手を交差させ、足をクロスさせながら全身で2つのXを掲げる、究極の俺tueeeポーズ。 決まった、キマリすぎてしまった。
「えくすたしー!!」
「な、みゅ、ミュースいたのか!?」
「うん、いたよぉ!」
 気付けば俺は転移していた。 なんだろうか、この本気でエアギターを覗かれた感。 いや、それよりも自慰行為を覗かれたようなそんな。
「まぁ、いいか。」



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