だんます!!
第三十四話 説得と人間ダーツ?
はいこんにちは、みんなのダンマスです。
とりあえず俺たちは今、カラオケの一室で秘密会議中だ。
北朝鮮の動きを全てモニターに映し出し、アルガイオスと松岡君に見せているのだ。
「うひゃー、えげつないなぁ」
「物語とかで見る人体実験とは違うな、リアルで人がこうなると気分が悪い」
人間が薬物投与により鬼の姿を象った異形となる過程を見ると2人はあからさまに顔を歪める。
「てなわけでお前らこれ狩ってこい」
「いやだな」
「えぇぇ!?メイズ勘弁してくれよ!羽やるからよぉ!!」
だが、2人は難しそうな顔を浮かべる。
わからんでもない、人間だった者が進化した魔物だと言われれば忌避感は生まれるだろう。
「まぁ、綺麗事に聞こえるかも知れんが、あんな奴らを苦しみから解放してやるのも冒険者の仕事だ」
「そりゃ確かにメイズが言うようによ、理性も無くなっちまってるってんならわかるけど、さっきの奴喋ってたじゃねぇか」
「あぁ、だがあいつらはこの先人間を喰い仲間を喰い感情を失って行くだろうな。今は薬で意識を無理矢理残してる程度に過ぎん、見てみろ」
モニターに映し出されるのは、100の鬼が人間を惨殺し、その死体を喰っている様子だ。
こうなるのは目に見えていた事だからな。
「おえっ」
「松岡君、これ見てどう思う」
「地獄だな…」
「そう地獄だ。こいつら起源の魔物は皆、望まずしてこの力を手にする者が大半だ。病の苦しさから解放されたくて、痛みを忘れたくて、間違った救いを求めて地獄におちる」
そのあまりにエグいモニターをアルガイオスが羽で隠すと静かに呟く。
「なんで俺たちなんだよって思うけど、殺してやるのも救いなのかも知れんねぇな」
「まぁ、そうだな。それに、奴らの心臓はミスリルハートと言ってファンタジーよろしくの金属が採取できる。それがやっかいだ」
そこでとりあえず、ミスリルが冒険者に対する抵抗手段になり得る事を説明する。
「俺らは大丈夫だけど、新人が殺されたなんてなったら人間と冒険者で真っ二つに別れかねんしな」
「ジュピターたんに怪我をされたら世界を敵に回してしまいそうだ」
お二方が徐々に釣れ始めたので、ここらで当初より予定していた松岡君の一本釣りをしておこう。
物で釣るような事はしたくないがと、ミスリルのインゴットを取り出して術式を構築する。
コア、松岡君の喜ぶ形に形成してくれ。
《了解しました》
「異世界にはな、このミスリルの回収を専門とするギルドがある。冒険者を殺す冒険者を狩る罪喰いと対等に、魔物に落ちて繁殖した起源の魔物からミスリルを狩る銀の手と呼ばれるギルドがある」
術式構築にそって、コアが設定を施していくと、ミスリルが液体のように蠢き、ラブブレイブの花火の等身大フィギュアが生み出される。
「うおっす!!今日も特訓だよぉ!!」
「ふごぉほぉおおおお!!!!花火が!!花火がぁ!!!」
「ふあっはっは!!松岡君!!綺麗な花火ですよぉぉぉ!!!!」
目の前で蹴伸びをしてルンルンと部屋の中を歩き回る花火。
「お前が銀の手にならないと、この花火を見ず知らずの男に使われるという事と同じだと知れ」
「き、きたねぇ!!逃げ道がねぇじゃねぇか!」
コア、ドドメをさせ。
《了解しました。コアの声帯を使い、一時的に花火を操作します》
花火は松岡君の前に立ち、刀の柄を腹に押し当てる。
「まっつー!!君の心の剣は飾り物なのっ?」
「キターー!!第6話11分53秒、幼馴染のまっつーが花火に負けて剣を捨てた時にトドメを刺した通称、松岡、慈悲は無い回!!!」
落ちたな。
《はい、ヤツは既にハリボテです》
「どうする?銀の手になるならば、この花火、連れてかえ「やる」そうか。魔力を注入したらMP1に対して一時間活動する。生きてるからな、無碍なあつかい…愚問だな」
「あぁメイズ、愚問だ。花火たんは俺の嫁」
ここに松岡君陥落。
後はアルガイオスだが、既にあいつは別の方向で腹が決まっているようである。
「アルガイオスは?」
「勿論やる。間違った選択だとしても、あれは止めてやらなきゃならねぇだろ」
「そうだな。じゃあお前らを銀の手として認証する。銀の手の儀文が浮かんだら、それを唱えろ。それでお前らは世界に銀の手として正式に認められる」
〝望まむ力を消し去ろう〟
〝彷徨う命を巡らせよう〟
〝我ら銀の手がこの手で救おう〟
「うん、てなわけで行ってこい!」
転移陣の展開をするとアルガイオスが俺を嘴で突こうとしてきたのでとりあえずビンタする。
「いだい!!待てメイズ!!お前いかねぇのか!」
「馬鹿鳥、五月蝿いぞ。メイズは頑固だ」
「だって俺言葉とかわかんねぇし!!!」
うっさい黙れ、行ってこい。
目の前から2人の姿が消える。
ふぅ、静かになった。
これで銀の手は一段落ついたとして、これからどうするかだな。
ハクメイに会いに行くか……いや、それよりもまずは今回の根本の奴らに挨拶しに行くか。
「コア、北朝鮮に飛ばしてくれ。この魔石の関係者が多い所がいい」
《了解しました》
目を開くとそこは静かな街道であった。
美しい静けさでは無く、肝試しをする時のような寒気に近い静けさだ。
整備された街並みと相反して国が死んでいる。
僅かに車が走る大通りで平気で遊ぶ子供。
食料なのだろうか……老人達が雑草をカバンに詰めている。
異様なまでに細い手足の少年。
川で体を洗う兵士
裸足で水瓶を運ぶ子供。
貧困とはここまでも風景を変えてしまうのだろうか。
まるで生まれたての赤子のような小さな子供が文字通りに道草を喰っている。
そいつらを見ていると、突如横に止まる黒塗りの古びたセダンが横付けしてくる。
中からはスーツを着た金持ちそうな男が降りてくる。
この数瞬で人生の縮図を見た気分になるほどには、この国の空気に合っていない男である。
「観光かい?ガイドはどうした」
「つけてないな、ただの散歩だ」
「ほう、言葉がわかるのかい。ガイドはつけていない……か。わかった。呼び止めて悪かったな」
「あぁ、気にするな」
なんだこいつってこの場合明らかに俺の方が怪しいか。
明らかに外国人が黒尽くめの格好で歩いてたら気になるよな。
しかし間髪置かずにあのジジイがなんだったのかは直ぐにわかる。恐らく国の役人かなんかだったのだろう。
今こちらに軍人が慌てて駆け寄って来ているからだ。
「止まれ!!!お前密入国か!!」
「何故ガイドをつけていない!!」
口では一丁前の事を言っているが、こいつらは頬がこけてガリガリの栄養失調のような表情だ。
「食いもんいるか?てかその銃撃てんのか?」
「捕らえろぉ!!この男を捕らえろ!!」
いつもなら真っ先にブッコロちゃんなんだが、このガリガリの兵隊殺すのもなんだかな。
「いやいや、やめといた方がいいぞ、マジで」
「黙れ!!!!お前は処刑だ!!」
「あっ、ごめん。触らないで」
髪の毛触られそうになったんでポイと投げたらピューと放物線を描いて頭から川にズボッ刺さってしまった。
ヘドロなんだな、じゃないと刺さらないもんな。
「う、うわぁぁああ!!」
「並べれるかな?」
首根っこを掴んでさっきの友達の横に刺してあげようと思ったら水切りみたいに水面をバウンドしてお門違いな所に飛んでいく。
致命的なコントロールである。ノーコンとは言わないで。
「飛び火したってヤツだな」
瞬く間に囲まれてしまった件。
しかもご丁寧に発砲までしてくれてる。
暇なんだなこいつら。
「キィエェェー!!!ワタッ!!ワタッ」
なんか中国のお面みたいなブッサイクなオバハンに正拳突きされてるんですけど……。
ちょっと困ったな、俺こんなことしに来たわけじゃないんだが。
とりあえず思いっきりセーブしたビンタしてやろう。
「いぎゃ!!」
ビンタされて顔を抑えて固まってるが、直ぐに正拳突きを繰り出すババア。
「ワタッ!!いぎゃっ!!」
あかん、もう無理。
「飛んでこいやクソババアァァ!!!」
投げてしまった。
もうこうなったらめんどくさいから全員投げてしまおう。
「お前らどっかいけぇぇい!!!コア、こいつらポイントいくらだ?」
『わかりません。泥で吸収されて死んでいないようです』
「あ、逆に?」
まさかの生命力に驚愕。
拍子抜けの一言しか残らない。
こんなにも俺に群がっておいてポイントにもならず、やたらと攻撃してくるし…ダメだ。
マジでムカついて来た。
俺的には魔石の中毒者製造工場の元締めに会いに行こうとしてたんだが、いちいちこいつらやっつけたらキリが無くなる。
いや逆にテンション上がってきた。
「お前ら全員空の旅にご招待してやる」
とりあえず投げる。
ポイポイ投げる。
川に人間投げまくる。
だが、キリがない。
恐らく俺の勝手な感想なんだが、こいつらちょっと楽しんでるような気がする。
何故か、順番待ちで並んでるんだが……ちっちゃい子もニコニコして並んでるし……。
「うぉっりゃっ!!すいません!寝てください!!」
突然俺の目の前にマルコメの少年が現れる。
何の前触れもなくバッタバッタと北朝鮮の兵士を殴り倒して行くんだが、誰だろうか?
「メイズさん!!こっちです!!」
「え?誰お前」
「話は後です!!場所を変えましょう!!」
目を見て冒険者だってのは、わかったんだが、あんな奴いたかな?
《解、中国冒険者ウェイツーです。メイファー、ラオと共に行動を始めたと言えば思い出せますか?》
あー、あの坊主か。
でもあいつ壁の中にいたんじゃないのか?
《調べますか?》
聞くからいいよ。
「メイズさん!!!はやく!!!」
「あぁ、すまんなマルガリータ、行こうか」
「そんな名前ではありません!!」
何故か知らんが中国の冒険者が助けてくれたのでついて行く事にする。
なんか面白くなりそうだな。
「プレイボール!!ってやつだな」
《プレイボーズ、ですね》
「コアちゃん?」
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