褐色男子、色白女子。

もずく。

白崎さんと戸賀くん。

私は今、なぜか戸賀くんに見つめられている。
「な、なななにかご用でしょうか…!」
だめだ、最近レオンくんやさくちゃんとしか話してないからコミュ障に磨きがかかっている。
戸賀くんはニコニコと笑いながら、と思ったら急に神妙な顔つきになった。
「なあ、白崎さん。…教室で、さくはどう?」
「えっっ…とさくちゃん、ですか…?」
「うん、さく。」
答えてもいいのだろうか。この前、何か聞かれても答えないでねと釘を刺されたばかりなのに。いいわけないよね、うん。
「あ、あの、私にはよく分からない…くて。ご、ごめんなさい。」
そう言うと戸賀くんはやっぱりかー!と声をあげて頬杖をついた。
「さくさー、教師でのこと俺になんも話してくれなくてさ!もしかして白崎さん以外に友達いないんじゃないかなって!」
そんなことはない。さくちゃんは愛想がいいわけじゃないけど、すごく頼れる女の子だ。クラス委員長だし、なぜ私に構ってくれるのかも正直よく分からない。
「さ、さくちゃんは、いつも、よく頑張ってて…みんなから頼りにされて、ます。」
「そっかそっか〜!まあ俺の幼馴染だし当然だなっ!白崎さん、ありがとね。あ、お礼にレオンのこと教えよっか?」
「えっ」
「レオンは教室では白崎さんといる時よりかなり愛想悪いぞ!なんなら女子にも優しくない!」
「あ、あの、」
「そんで白崎さん以外見えてない!」
「戸賀くん、」
「あと、基本俺以外と喋んない!」
「後ろ、」
「…トガ?」
饒舌だった戸賀くんは、弾かれたように背筋を伸ばした。効果音をつけるなら、ヒュッ…だ。ギギギギギと音が鳴りそうなほどゆっくり振り向くと、真っ黒な笑顔を浮かべたレオンくんが立っている。
「いい度胸してるな、お前。」
「いいいいえそんなめっっそうもないっ」
「なあ、早乙女。」
「…そうだね。」
さくちゃん、昨日も今日もどこか行ったと思ったらレオンくんといたのか。
「さく!?いや、違う、俺は、」
「はいはい。どうでもいいから、そういうの。」
今まで見たことないくらいドライな対応。レオンくんは何かにツボったらしくケラケラと笑っている。
「トガ、地雷踏み抜いたな…!ははっ!」
「地雷…」
「白崎、気にするな!また今度教えてやる。ははっ…!」
「う、うん?」
私は疑問を抱えながら、戸賀くんのほっぺたをつねるさくちゃんを見つめた。
「仲良し、なんだね。」
さくちゃんは驚いたように私をみて、慌てて首をふった。
「違うから!私が一番仲良しなのは小糸だから!こいつじゃないから!」
さくちゃん、嬉しそうだなあ。さくちゃんは照れたとき、〜から!が多くなる。いつもより少しだけ騒がしい昼放課は、間も無く終わりを告げようとしていた。

「さくのアレは、親愛の証でいいんだよなあ。可愛いやつ。」
最後に戸賀くんは内緒話のように声を潜めて私に教えてくれたんだ。

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