Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

The place that I want to go together

「...わぁ、きれい...!ほら見て、綺麗だね、バロン!」

僕は、旅行中の愛斗君から送られてくる写真を彼らの飼い犬で、今やチャーチの名犬となったバロンと一緒に見ていた。そこには風景の写真や、街の様子なんかが撮ってあった。

「...きれいな景色だな」

脇から声をかけられて見ると、最近僕のそばにいてくれる優樹が覗き込んでいた。
優樹は僕達2人だけの名前だ。他の人には「灰斗かいと」と相変わらず呼ばれている。

「その写真は?」
「海斗君と愛斗君が今軽井沢に行ってるんだ、その写真!」
「へぇ、いいところそうじゃないか、結月と行ってくるといいよ」
「結月と、かぁ...行きたいけど...難しいかもね」

僕は苦笑した。

なぜ難しいか。

それは結月が忙しいのも然り、僕自身の体の問題もあるからだ。

僕は体が弱くなってしまった。何かが変わるだけで体調を崩し、その上、自分のせいではあるも、一生歩けない体にもなった。
でも、最近はそんなに体調を崩すことも無くなった。神楽坂さんによると、「何かしらのストレスがかかってたからだと思うなぁ。ほら、藤瀬君?がそばにいないとかさ?」ということらしい。
確かに最近は結月の代わりに優樹がそばにいてくれる時間が増えたし、結月も任務中でも連絡をくれるようになった。そのおかげもあってか安定しているんだと思う。

「...行けないのか?」
「うーん...。結月忙しいし、僕もほら、こんな体だから...。結月に迷惑かなって」

そう言いつつ僕はバロンを撫でた。
特に撫でる意味は無いけど、バロンも心配そうに僕を見つめてくる。

「...そんなことはないと思う」
「...え?」
「...もうすぐ帰ってくる」
「...結月が...?ほんと?」
「...あぁ、早くて明日、遅くとも明後日までには」

長く任務に出ていた結月がやっと帰ってくる。

やっと結月に会える...!

そう思っただけで僕は嬉しくなる。

「ねぇ、エントランスに来てくれるかな」
「...さぁ、どうだろうな」
「僕迎えに行きたい!」
「...わかった、戻りがはっきりしたら伝える」

そう言うと、優樹は花瓶を持って部屋を出ていった。

「やったねバロン、帰ってくるって!結月に遊んでもらおうね!」

バロンが1回吠え、足の上に転がる。

結月が帰ってきたらきっとまた抱きしめてくれる。

結月と行きたいな、軽井沢。

密かにお土産話を楽しみにしつつ、結月が帰ってくるのを待った。

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