Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

信念の向かう先

卒業を迎えて少し経って、それぞれ離れて任務につくことも増えた。
ちゃんと融合して1人になった最初のうちは不安定で一緒に任務に出た。暴走しないとは限らない。そう分かっていたからこそだ。

少し前、聞かれたことがある。

「この世界は良い方向に進むのでしょうか」と。

俺は正直わからなかった。
俺達がいることで良い方向に進むとは思えない。
でも、ひとつ言えるとするなら、俺達が悪だと思う相手は俺達のことを悪だと思っていて、そして俺達が正義と掲げる事は俺達の自己満でしかない。

「…正義は各々違う…ボスホートだろうと、敵国でも信念があればそれが正義。
でも、いつか…その信念は折れる時も来てしまう。
だから折られないように、俺たちは強く在る。
その先に、光がある…信じよう。
大丈夫だよ、伊織」

力で虐げる国、虐げられる国。
正義を貫き通す人、貫き通せない人。
信念を曲げない人、曲げる人。

でも、俺達は強くあれる。
それはお互い強くあらねばならない理由があるから。
己の信念があるから。
そして、お互いを信じるから。

「...大丈夫、俺はもうひとりじゃない」

そうだよね、伊織。

遠い異国の空の下にいる自分のメサイアに問いかける。
答えは返ってくるわけでもないけれど。
でも、伊織はきっとこう言って笑ってくれるのだ。

―はい、今は私もいます、衛。

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