Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

His determination, his dream

「衛藤さん、ちょっといいっすか?」
「...えっと...君は確か...」
「松原です。松原エレン。神代万夜のメサイアっす」

これが彼との出会いだった。

「衛藤さん、誰にも言わない前提でお願い聞いてもらえますか?」
「...お願い?」

彼を部屋に招いて話を聞いた。
俺は、神代君が照る日の杜の御神体であったことは知っていた。実験で植え付けられた親細胞のおかげで中身がボロボロだということも、力を使えば壊死が進むことも。それは繋がりのあった研究者からの話を聞いていたからだ。

「俺、万夜には生きてほしいんです。だから、もし俺が死んだら、万夜に俺の中身全部移植できたりしませんか」
「...それは出来なくもないけど…君は?」
「俺は万夜のために死ねるなら本望っすね。...俺の夢は万夜とずっと一緒にメサイアを組むことなんすよ。どんな形であれ、ずっと一緒に戦えたら、それでいいっす」
「...だから臓器移植を?でも、今の状況じゃ神代君の命が尽きる方が...」

早い、と言いかけた時、松原君は被せて言った。

「三日後」
「え?」
「三日後に北方の襲撃があります。さっき作戦会議があって、俺と万夜は外で待ち構えることになりました。もちろん、俺が提案して」
「...まさか...」
「俺はそこで死にます」

何を言い出すかと思えば。
どうしてそんなことをサラッと言い出せる。

「何を言って...!」
「だからお願いしてるんです。...俺は三日後に死にます。だから、万夜に俺の中身全部移植してください」

お願いします。

そう言って頭を下げる彼を俺は拒む事が出来なかった。

「...分かった。1つ提案させてくれないか」
「...提案...すか?」

頭を上げた彼を見て提案した。

「俺は伊織や衛を作った人間だ。松原君の遺伝子情報があれば君の臓器が作り直せる。...だから提案する、少し時間はかかるかもしれないが、もう一度生きてみないか、ちゃんと夢を叶えるために」
「...それって...」
「...神代君のそばでちゃんと生きてみないか」
「...できるんすか?」
「出来るよ。時間は少しかかるけど」

そして彼の遺伝子情報を調べ、それぞれの臓器を培養し始めた。

そして三日後、彼は本当に死んだ。
神代君は彼から離れることは無かった。でも、彼は松原君がみえているらしく、そんなに寂しい思いもしなさそうだ。

彼の決意を無駄にするわけにはいかない。
彼の夢を叶えてあげたい。

俺を動かすのはただそれだけだった。

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