Bouquet of flowers to Messiah
Do not take an important person
雪に行けと言われて奥で待つ。
迎えに来ると言った。だから信じて待つ。
だけどあの怪我で迎えになんか来れるはずがない。僕は奥に行っても通信を維持し続けた。そこで聞こえてくるのは銃声と怒号。
『何してる、あんたは重傷だろ!』
『…お前も同じ事言うな、こんなところで死ぬ訳にはいかねーんだよ。
…それに、俺はこの生き方しか知らないからな!』
『だからってあの怪我で…!』
『…心配する暇あるならさっさと終わらせるぞ、痛み止めが切れる前に』
『…分かったよ』
痛み止めを飲んでる。雪斗さんやドクター10がもしかしたら置いてたのかもしれない。それは多分この事を予測していたのか、はたまた分かっていたのか…。
でも、僕は1つ疑問に思っていた。
どうして一嶋係長は先輩達を呼び戻さないんだろう?
先輩達を呼べば早いはずだ。
こんな手薄な状況なんか簡単にひっくり返せる。
なのに何故...?
『...いい加減くたばれ!』
雪のその声を最後に、敵の反応が消えた。
百瀬さんが急いで雪斗さんやドクター、黒咲さんに無線を飛ばしていた。僕はいてもたってもいられなくて静止を聞かずに渡された銃を持ったまま外に出た。
雪を探さなきゃ...!絶対どこかにいる...!
少し探し回って、見つけたかった人を見つけた。
「...雪!」
駆け寄って確認すると意識はなかった。重傷で、治りかけの傷も全部開いていた。
「...止血...!止血しなきゃ...!」
僕はコートを脱いで雪に着せた。できる部分の止血をしなきゃ…!雪が...!
すると、僕の肩に手が置かれた。顔を向けると、そこには見慣れた人がいた。
「...昴、さん...?」
「遅くなってごめんね。1番重傷だね、運ぼう。ここじゃ治療はできない。安心して、必ず助けるから。そのために来たよ」
「...え...?」
「とにかく医務室に運ぼう。...紘斗!」
そう呼ぶと、久しぶりに見る人がいた。
「いたか。だいぶひでぇな、俺が背負う」
「...紘斗さん...?」
「久しぶりだな、前谷」
「どうして...ここに...?」
「なに、雪斗の呼びかけだ。安心しろ、怜や悠隼、遥人に理貴、光樹もいる。今手分けして負傷者探しをしてる。雪斗やドクター10、衛藤も黒咲もいる。必ず助かる、大丈夫だ」
意識のない雪を紘斗さんが背負うと、すぐに医務室に連れて行ってくれた。
皇浦くんや浅葱くん、神代くんもすぐに見つけだされて医務室に運ばれる。
「雪斗、遥人、1番の重傷だ」
「知ってる。痛み止め飲んで特攻したんだろ」
「その痛み止め置いたの誰だったのかなぁ?」
「良いから手を動かせ。雪斗は皇浦、俺と遥人は雛森、衛藤は浅葱、黒咲は神代を頼む。怜、悠隼、理貴、紘斗、光樹はそれぞれ手伝いを頼む」
「毒専門の俺達が何ができるかわからんがな」
「分かりました」
「はい!」
「手伝えるのはたかが知れてますけどね」
「いいからやるぞ」
テキパキ治療をしていくこの人達はチャーチの人間じゃないことを忘れる。それくらいドクターの指示に従って動いている。
「...どうして...」
「雪斗さんが僕達に呼びかけしてきたんですよ」
悠隼君が話しかけてくる。
僕よりも少し高いその声は相変わらずだった。
「剣幕がすごかったんです、雪斗さん。お兄ちゃんははるちゃんがいるって聞いて嫌だって言ってたんですけど、そうも言ってられない事態だって聞いたので」
「多少なりとも僕らも関わりありますしね」
「呼び出された時は何事かと思ったけどー」
「でもまぁこの国も安全じゃないことは分かってるしな」
「あんまり呼ばないでねと言ったのにもう...」
百瀬さんが溜息をつきながら医務室に来る。でもその顔はどこか安心していた。
あまりにも酷かった雪は緊急手術になって、雪斗さんと遥人さんが手術室に連れていった。僕は廊下でただ待つしかできなかった。何十時間の大手術になって、手術室から2人が出てきた。
「雪斗さん、雪は...!?」
「心配しないで、ちょーっと死の淵はさまよったかもだけどちゃんと生きてるよ。これは目が覚めるまで長くかかるかもね」
「と言っても年単位まではかからないはずだ。ただ、数ヶ月は覚悟した方がいい」
「今は...!?」
「ちょっと色々併発しててな、今日がヤマだ。だがそれを越えれば何とか大丈夫だと思う」
「...今日が...ヤマ...」
皆が助かる。
雪が助かる。
また背中を守れる。
今日がヤマでも、大丈夫。雪なら超えてくれる...。
手術室から出てきた雪に寄り添ってその日は寝ずに過ごした。そばにいたかった。手を握っていたかった。もちろんただの僕の気休めだって分かってる。だけど、そばで戦えない分はこうしてたい。
─メサイアはどんな時でも、離れていても心の支えだ。
きっと、雪さんは尋を見たら安心するからさ。
こう教えてくれた人がいた。
その人はもういないけど、でも、たまに僕達を助けてくれる。僕を見て安心してくれるかはわからない。任務が終わる度に迎えに行ってた。でも安心してくれたのかな…。
「...雪、僕は...安心させてあげられてたのかな...雪が帰ってくる度に迎えに行って...安心できた...?」
目が覚めるのか覚めないのか。考えただけでも不安だ。そう思うと涙が出てくる。
「...置いていかないで...雪...!まだ守りたいよ…一緒に戦いたいよ…!」
だから目を覚まして...!お願い...!
僕から大事な人を取らないで、神様...!
迎えに来ると言った。だから信じて待つ。
だけどあの怪我で迎えになんか来れるはずがない。僕は奥に行っても通信を維持し続けた。そこで聞こえてくるのは銃声と怒号。
『何してる、あんたは重傷だろ!』
『…お前も同じ事言うな、こんなところで死ぬ訳にはいかねーんだよ。
…それに、俺はこの生き方しか知らないからな!』
『だからってあの怪我で…!』
『…心配する暇あるならさっさと終わらせるぞ、痛み止めが切れる前に』
『…分かったよ』
痛み止めを飲んでる。雪斗さんやドクター10がもしかしたら置いてたのかもしれない。それは多分この事を予測していたのか、はたまた分かっていたのか…。
でも、僕は1つ疑問に思っていた。
どうして一嶋係長は先輩達を呼び戻さないんだろう?
先輩達を呼べば早いはずだ。
こんな手薄な状況なんか簡単にひっくり返せる。
なのに何故...?
『...いい加減くたばれ!』
雪のその声を最後に、敵の反応が消えた。
百瀬さんが急いで雪斗さんやドクター、黒咲さんに無線を飛ばしていた。僕はいてもたってもいられなくて静止を聞かずに渡された銃を持ったまま外に出た。
雪を探さなきゃ...!絶対どこかにいる...!
少し探し回って、見つけたかった人を見つけた。
「...雪!」
駆け寄って確認すると意識はなかった。重傷で、治りかけの傷も全部開いていた。
「...止血...!止血しなきゃ...!」
僕はコートを脱いで雪に着せた。できる部分の止血をしなきゃ…!雪が...!
すると、僕の肩に手が置かれた。顔を向けると、そこには見慣れた人がいた。
「...昴、さん...?」
「遅くなってごめんね。1番重傷だね、運ぼう。ここじゃ治療はできない。安心して、必ず助けるから。そのために来たよ」
「...え...?」
「とにかく医務室に運ぼう。...紘斗!」
そう呼ぶと、久しぶりに見る人がいた。
「いたか。だいぶひでぇな、俺が背負う」
「...紘斗さん...?」
「久しぶりだな、前谷」
「どうして...ここに...?」
「なに、雪斗の呼びかけだ。安心しろ、怜や悠隼、遥人に理貴、光樹もいる。今手分けして負傷者探しをしてる。雪斗やドクター10、衛藤も黒咲もいる。必ず助かる、大丈夫だ」
意識のない雪を紘斗さんが背負うと、すぐに医務室に連れて行ってくれた。
皇浦くんや浅葱くん、神代くんもすぐに見つけだされて医務室に運ばれる。
「雪斗、遥人、1番の重傷だ」
「知ってる。痛み止め飲んで特攻したんだろ」
「その痛み止め置いたの誰だったのかなぁ?」
「良いから手を動かせ。雪斗は皇浦、俺と遥人は雛森、衛藤は浅葱、黒咲は神代を頼む。怜、悠隼、理貴、紘斗、光樹はそれぞれ手伝いを頼む」
「毒専門の俺達が何ができるかわからんがな」
「分かりました」
「はい!」
「手伝えるのはたかが知れてますけどね」
「いいからやるぞ」
テキパキ治療をしていくこの人達はチャーチの人間じゃないことを忘れる。それくらいドクターの指示に従って動いている。
「...どうして...」
「雪斗さんが僕達に呼びかけしてきたんですよ」
悠隼君が話しかけてくる。
僕よりも少し高いその声は相変わらずだった。
「剣幕がすごかったんです、雪斗さん。お兄ちゃんははるちゃんがいるって聞いて嫌だって言ってたんですけど、そうも言ってられない事態だって聞いたので」
「多少なりとも僕らも関わりありますしね」
「呼び出された時は何事かと思ったけどー」
「でもまぁこの国も安全じゃないことは分かってるしな」
「あんまり呼ばないでねと言ったのにもう...」
百瀬さんが溜息をつきながら医務室に来る。でもその顔はどこか安心していた。
あまりにも酷かった雪は緊急手術になって、雪斗さんと遥人さんが手術室に連れていった。僕は廊下でただ待つしかできなかった。何十時間の大手術になって、手術室から2人が出てきた。
「雪斗さん、雪は...!?」
「心配しないで、ちょーっと死の淵はさまよったかもだけどちゃんと生きてるよ。これは目が覚めるまで長くかかるかもね」
「と言っても年単位まではかからないはずだ。ただ、数ヶ月は覚悟した方がいい」
「今は...!?」
「ちょっと色々併発しててな、今日がヤマだ。だがそれを越えれば何とか大丈夫だと思う」
「...今日が...ヤマ...」
皆が助かる。
雪が助かる。
また背中を守れる。
今日がヤマでも、大丈夫。雪なら超えてくれる...。
手術室から出てきた雪に寄り添ってその日は寝ずに過ごした。そばにいたかった。手を握っていたかった。もちろんただの僕の気休めだって分かってる。だけど、そばで戦えない分はこうしてたい。
─メサイアはどんな時でも、離れていても心の支えだ。
きっと、雪さんは尋を見たら安心するからさ。
こう教えてくれた人がいた。
その人はもういないけど、でも、たまに僕達を助けてくれる。僕を見て安心してくれるかはわからない。任務が終わる度に迎えに行ってた。でも安心してくれたのかな…。
「...雪、僕は...安心させてあげられてたのかな...雪が帰ってくる度に迎えに行って...安心できた...?」
目が覚めるのか覚めないのか。考えただけでも不安だ。そう思うと涙が出てくる。
「...置いていかないで...雪...!まだ守りたいよ…一緒に戦いたいよ…!」
だから目を覚まして...!お願い...!
僕から大事な人を取らないで、神様...!
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