Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

A nightmare and despair and torments

「...伊織、寝ないの?疲れたでしょ?」
「...眠くありません...」

最近伊織は寝なくなった。寝るのが怖い、と言う。
それは多分俺が殺したから。
そして、俺を殺そうとしたから。

「...じゃあ俺も起きてる」
「...衛...」
「...怖くない。俺が守るから。だから大丈夫」

そう強がってみるけど、俺も寝るのが怖い。
目を閉じた瞬間にあの瞬間が蘇る。伊織に向かって銃を向けたあの時。
目が覚めて叫ぶこともあった。
ふとした瞬間に泣いていることもあった。
その度に昴は「大丈夫」と言った。
大丈夫なんかじゃない。だってこんなに怖くて怖くて仕方が無いのに。

伊織がいなくなられることが今はとても怖い。
どうしてあの時伊織を撃てたのか、自分でもよくわからない。
元々そんなに寝る方でもなかった。それは寝なくてもいいと思ってたから。

伊織を取られたくない。
いなくなって欲しくない。
ずっとそばにいてほしい。

そればかりが渦巻く。

伊織の中では今でも絶望が広がってる。それは俺が撃ったことに対する絶望と、俺を殺そうとした自分への責苦。

そっと肩を抱き寄せて頭を撫でる。落ち着かないことは知ってる。だけど、俺にはこれしか出来ない。

...ごめんね、伊織。

抱きしめたまま静かに目を閉じる。

今日も、自分の悪夢と戦うのだ。

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