Bouquet of flowers to Messiah
My meaning of life
砂漠のど真ん中。いつきがいたであろう、砂漠には不釣り合いな廃小屋。
そこには何日も放置されたであろう亡骸が転がる。砂漠という状況もあってか、人体は腐り腐敗臭が立ち込める。
そして俺はとある気配に既視感を覚えた。
...この気配は。間違いない。
「...いるんだろう」
「...あっれぇー?バレちゃったぁ?」
やっぱりこいつだ。
「気配で分かる」
「まぁわかりやすい登場だったからぁ?...で、何を探してるのぉ?」
「お前は何者だ」
振り返ってそいつを見る。
前回と同じ服装だった。口元がニヤリと笑う。
「...預言者ムハンマドだよぉ?」
「お前は敵か、味方か」
「...どっちかなぁ?敵だと思えば敵だし、味方だと思えば味方かなぁ?」
「なら率直に聞く。...加々美いつきをどこにやった」
「...それは答えられないなぁ?」
「なら力ずくで聞くまで」
静かに銃を構えて睨みつける。
これが脅しになるなんてこれっぽっちも思ってはいない。
「...脅しにならないけどぉ、仕方ないからぁ手伝ってあげるよぉ?入るまでねぇ?これが望みなんでしょー?」
「...そうだ」
「仕方ないなぁ、分かったよぉ。それ下ろして?」
俺は静かに銃を下ろす。信頼したわけじゃない。だが今はこれが最善策だ。
「力を貸すのはぁ、これきりだからねぇ?」
「分かってる」
するとそいつはとあるものを投げて寄こした。それは、いつきが襲われたであろう組織の人間が必ず着用している怪しいマスクとコート。
「入るまでに死にたくないならこれ着といてぇ?じゃないと怪しまれるよぉ?下手したらここの屍の一つになるかもよぉ?」
「分かった」
素直にコートを着る。こんな暑いのに着てられるかとも思うが身を守っていつきに近づくためだ、仕方がない。地下に繋がる階段から地下に向かう。そこは砂漠のど真ん中とは思えないほどハイテクだった。
「...すごいな」
「そぉ?最下層にある拷問とかの部屋は古代的だけどねぇ?まぁ入るまで手伝いはしたからぁ、あとは頑張りなぁ?」
そう言うとそいつは消えていった。
そこは組織と言うより秘密結社と言うべきだった。地下は嫌という程涼しかった。
...あいつは最下層と言った。
いつきはそこに...?
しばらく歩き回る。歩き回ってもどこに何があるかは詳しくわかりはしない。そしてここの組合員とも嫌という程すれ違う事も見ることもない。
おかしい。おかしすぎる。どうしてこんなに人っ子一人いやしない?
すると数人の組合員にようやく会えた。が、すぐに囲まれた。
「お前は何者だ」
「...見てわかるだろう、組合員だ」
「いや違う。正体を現せ」
「...同じ組合員を怪しむのか?」
「お前は違う」
正直揉め事は起こしたくなかったが仕方ないか。
動きにくいのは昔のメサイアコートで慣れている。
俺は静かに動いて数人を音もなく倒していく。音もなく殺すのは簡単だ。昔から慣れている。
1人は半殺しにしておいて場所を聞き出す。
「...おい、最下層に通じる階段はどこだ」
「...は、そんな...の...」
「言え」
「...教えねぇ...よ...」
そう言って残りの1人も息絶えた。
自力で探すか。
そう思っていた頃。
「掟に間違いは無かったようだ…が、まさか本当に助けに来るとはね」
ふと違う気配が俺の背後に立った。
振り向いて距離を取る。奴の後ろには同じような物を着ている部下を従えている。
「...いつきはどこにいる」
「最下層で拷問させてもらったよ。...最も口を割りもしなかったがね」
「...いつきを返せ」
俺がコートとマスクを勢いよく脱ぐと周りを取り囲んだ。
この俺が臆すると思うな。
相手のひとりが動き出したのに合わせて雑魚を一掃する。最も、雑魚は雑魚、大して手に負えないような手練はいない。そして今の俺はかなり怒っている。
雑魚を全て殺しきると、そいつは感心した様に俺に近寄ってきた。
「...これは驚いた。サクラにはこんな手練がいるとは聞きもしなかった」
「...何が望みだ」
銃口を向け、睨みをきかせ、目をそらさず問いかけた。大方チャーチの情報が欲しいところなんだろう。
「...チャーチの情報を」
「やはりな。言わせたければ俺を殺してからにしろ。その代わり、俺が勝てば加々美いつきの居場所を教えてもらうぞ」
「...いいだろう」
相手の纏う変な空気に飲まれないように見定める。
動き出すのと同時に一気に距離を詰め、バカバカしい仮面を蹴り飛ばす。相手の仮面は吹っ飛び、相手の方から離れていくのを俺は距離を変えずに銃を撃ち続ける。そいつを殺しはしない。殺してしまえばどこにいるかも聞くことが出来なくなるのだから。
のらりくらりと銃を避けられてもその先にはナイフが待ち構えている。そして俺は手の届く距離になったところで殴り飛ばして倒れたところに馬乗りになる。
「...俺の勝ちだ」
「そのようだ」
「...いつきの居場所を教えろ」
「...君はなんのために加々美いつきを助ける?」
「理由を聞いてどうする」
フードの下で口元だけが見えている。その口元がニヤリと笑う。
「...何、聞いてみたかっただけのことだ」
「俺がいつきを助ける理由はない」
「ならば何故」
「だがな、俺はいつきと叶えたい理想がある。いつきがいるから俺は生きていられる。生きて会いたいと願う。いつきも戦うから俺の戦う理由になる。いつきが、俺の生きる意味だ」
「...そうか」
「いつきはどこにいる」
俺は銃の撃鉄を下げて相手の頭に突きつける。引き金を引けば撃てる。
「...加々美いつきはこの先にある階段を下った右から2つ目の扉の向こうだ...鍵はここにある、持っていけ。...さぁ殺せ」
俺は聞くだけ聞いて引き金を引く。相手が死んだのを確認すると鍵を取り、言われた通りの場所に階段があった。そこを下り右から2つ目の扉の鍵穴に鍵を差し込む。そこには壁から伸びている手錠に左手を繋がれ、右足に重りのついた足枷を嵌められて、拷問の痕が痛々しく残るいつきがいた。
「...いつき!」
俺はいつきに駆け寄る。
「いつき、しっかりしろ!いつき!」
足枷と手錠を外して受け止める。
意識がなく、力もないいつきは重力に逆らうこと無く俺の方に倒れてきた。そこで初めて百瀬代理に通信を入れる。
「百瀬代理、敵の殲滅完了、いつきを無事回収しました。かなり危険な状態です」
『分かったわ、ドクターには伝えておくわね。とりあえず戻ってらっしゃい』
「了解」
いつきを抱えて地上に戻る。待ち合わせの場所に行くとヘリが待ち構えていた。それに乗り込んでチャーチに向かう。ヘリの中では応急処置が施された。
応急処置が終わってから、俺は外を眺める。
思えばいつきに出会ってから俺は強くもなったし弱くもなった。
お互いがお互いの半身だと認めるまでにかなり時間が必要だった。時間をかけた。だからこそなのか、メサイアの真の意味が分かる。
お互いがお互いを支え合う存在になり、違う時は枷になり、どんなに酷な状況下にあっても自分が狂う事は許されない。メサイアだけに許された唯一無二の存在。俺にしかいつきは救えない、俺にしかいつきを殺すことはできない。俺が狂ってしまえば半身を助けることも殺すこともできないのだ。
いつきは俺の生きる意味だ。
「...よく頑張ったな、いつき」
担架に乗せられて眠っているいつきをそっと撫でる。こんな事を思っている場合ではないだろうが、こうして触れられる距離に戻れて安心していた。
こんなに感情的になるなんて、俺らしくないか。
俺は苦笑した。
君は「らしくない」と笑うだろうか。
目が覚めたらあの笑顔を見せてくれるだろうか。
俺の名前を呼んでくれるだろうか。
早く話がしたい。
そう思いつつ、俺はチャーチに到着するのを待った。
そこには何日も放置されたであろう亡骸が転がる。砂漠という状況もあってか、人体は腐り腐敗臭が立ち込める。
そして俺はとある気配に既視感を覚えた。
...この気配は。間違いない。
「...いるんだろう」
「...あっれぇー?バレちゃったぁ?」
やっぱりこいつだ。
「気配で分かる」
「まぁわかりやすい登場だったからぁ?...で、何を探してるのぉ?」
「お前は何者だ」
振り返ってそいつを見る。
前回と同じ服装だった。口元がニヤリと笑う。
「...預言者ムハンマドだよぉ?」
「お前は敵か、味方か」
「...どっちかなぁ?敵だと思えば敵だし、味方だと思えば味方かなぁ?」
「なら率直に聞く。...加々美いつきをどこにやった」
「...それは答えられないなぁ?」
「なら力ずくで聞くまで」
静かに銃を構えて睨みつける。
これが脅しになるなんてこれっぽっちも思ってはいない。
「...脅しにならないけどぉ、仕方ないからぁ手伝ってあげるよぉ?入るまでねぇ?これが望みなんでしょー?」
「...そうだ」
「仕方ないなぁ、分かったよぉ。それ下ろして?」
俺は静かに銃を下ろす。信頼したわけじゃない。だが今はこれが最善策だ。
「力を貸すのはぁ、これきりだからねぇ?」
「分かってる」
するとそいつはとあるものを投げて寄こした。それは、いつきが襲われたであろう組織の人間が必ず着用している怪しいマスクとコート。
「入るまでに死にたくないならこれ着といてぇ?じゃないと怪しまれるよぉ?下手したらここの屍の一つになるかもよぉ?」
「分かった」
素直にコートを着る。こんな暑いのに着てられるかとも思うが身を守っていつきに近づくためだ、仕方がない。地下に繋がる階段から地下に向かう。そこは砂漠のど真ん中とは思えないほどハイテクだった。
「...すごいな」
「そぉ?最下層にある拷問とかの部屋は古代的だけどねぇ?まぁ入るまで手伝いはしたからぁ、あとは頑張りなぁ?」
そう言うとそいつは消えていった。
そこは組織と言うより秘密結社と言うべきだった。地下は嫌という程涼しかった。
...あいつは最下層と言った。
いつきはそこに...?
しばらく歩き回る。歩き回ってもどこに何があるかは詳しくわかりはしない。そしてここの組合員とも嫌という程すれ違う事も見ることもない。
おかしい。おかしすぎる。どうしてこんなに人っ子一人いやしない?
すると数人の組合員にようやく会えた。が、すぐに囲まれた。
「お前は何者だ」
「...見てわかるだろう、組合員だ」
「いや違う。正体を現せ」
「...同じ組合員を怪しむのか?」
「お前は違う」
正直揉め事は起こしたくなかったが仕方ないか。
動きにくいのは昔のメサイアコートで慣れている。
俺は静かに動いて数人を音もなく倒していく。音もなく殺すのは簡単だ。昔から慣れている。
1人は半殺しにしておいて場所を聞き出す。
「...おい、最下層に通じる階段はどこだ」
「...は、そんな...の...」
「言え」
「...教えねぇ...よ...」
そう言って残りの1人も息絶えた。
自力で探すか。
そう思っていた頃。
「掟に間違いは無かったようだ…が、まさか本当に助けに来るとはね」
ふと違う気配が俺の背後に立った。
振り向いて距離を取る。奴の後ろには同じような物を着ている部下を従えている。
「...いつきはどこにいる」
「最下層で拷問させてもらったよ。...最も口を割りもしなかったがね」
「...いつきを返せ」
俺がコートとマスクを勢いよく脱ぐと周りを取り囲んだ。
この俺が臆すると思うな。
相手のひとりが動き出したのに合わせて雑魚を一掃する。最も、雑魚は雑魚、大して手に負えないような手練はいない。そして今の俺はかなり怒っている。
雑魚を全て殺しきると、そいつは感心した様に俺に近寄ってきた。
「...これは驚いた。サクラにはこんな手練がいるとは聞きもしなかった」
「...何が望みだ」
銃口を向け、睨みをきかせ、目をそらさず問いかけた。大方チャーチの情報が欲しいところなんだろう。
「...チャーチの情報を」
「やはりな。言わせたければ俺を殺してからにしろ。その代わり、俺が勝てば加々美いつきの居場所を教えてもらうぞ」
「...いいだろう」
相手の纏う変な空気に飲まれないように見定める。
動き出すのと同時に一気に距離を詰め、バカバカしい仮面を蹴り飛ばす。相手の仮面は吹っ飛び、相手の方から離れていくのを俺は距離を変えずに銃を撃ち続ける。そいつを殺しはしない。殺してしまえばどこにいるかも聞くことが出来なくなるのだから。
のらりくらりと銃を避けられてもその先にはナイフが待ち構えている。そして俺は手の届く距離になったところで殴り飛ばして倒れたところに馬乗りになる。
「...俺の勝ちだ」
「そのようだ」
「...いつきの居場所を教えろ」
「...君はなんのために加々美いつきを助ける?」
「理由を聞いてどうする」
フードの下で口元だけが見えている。その口元がニヤリと笑う。
「...何、聞いてみたかっただけのことだ」
「俺がいつきを助ける理由はない」
「ならば何故」
「だがな、俺はいつきと叶えたい理想がある。いつきがいるから俺は生きていられる。生きて会いたいと願う。いつきも戦うから俺の戦う理由になる。いつきが、俺の生きる意味だ」
「...そうか」
「いつきはどこにいる」
俺は銃の撃鉄を下げて相手の頭に突きつける。引き金を引けば撃てる。
「...加々美いつきはこの先にある階段を下った右から2つ目の扉の向こうだ...鍵はここにある、持っていけ。...さぁ殺せ」
俺は聞くだけ聞いて引き金を引く。相手が死んだのを確認すると鍵を取り、言われた通りの場所に階段があった。そこを下り右から2つ目の扉の鍵穴に鍵を差し込む。そこには壁から伸びている手錠に左手を繋がれ、右足に重りのついた足枷を嵌められて、拷問の痕が痛々しく残るいつきがいた。
「...いつき!」
俺はいつきに駆け寄る。
「いつき、しっかりしろ!いつき!」
足枷と手錠を外して受け止める。
意識がなく、力もないいつきは重力に逆らうこと無く俺の方に倒れてきた。そこで初めて百瀬代理に通信を入れる。
「百瀬代理、敵の殲滅完了、いつきを無事回収しました。かなり危険な状態です」
『分かったわ、ドクターには伝えておくわね。とりあえず戻ってらっしゃい』
「了解」
いつきを抱えて地上に戻る。待ち合わせの場所に行くとヘリが待ち構えていた。それに乗り込んでチャーチに向かう。ヘリの中では応急処置が施された。
応急処置が終わってから、俺は外を眺める。
思えばいつきに出会ってから俺は強くもなったし弱くもなった。
お互いがお互いの半身だと認めるまでにかなり時間が必要だった。時間をかけた。だからこそなのか、メサイアの真の意味が分かる。
お互いがお互いを支え合う存在になり、違う時は枷になり、どんなに酷な状況下にあっても自分が狂う事は許されない。メサイアだけに許された唯一無二の存在。俺にしかいつきは救えない、俺にしかいつきを殺すことはできない。俺が狂ってしまえば半身を助けることも殺すこともできないのだ。
いつきは俺の生きる意味だ。
「...よく頑張ったな、いつき」
担架に乗せられて眠っているいつきをそっと撫でる。こんな事を思っている場合ではないだろうが、こうして触れられる距離に戻れて安心していた。
こんなに感情的になるなんて、俺らしくないか。
俺は苦笑した。
君は「らしくない」と笑うだろうか。
目が覚めたらあの笑顔を見せてくれるだろうか。
俺の名前を呼んでくれるだろうか。
早く話がしたい。
そう思いつつ、俺はチャーチに到着するのを待った。
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