部の中心的な弓道部員だった私が異世界に転生したら長耳族でした

クラヤシキ

第五十一話 「デミングポート」

 街道を歩いていたら、気づけば夜が明けていた。夜の街道っていうのは安全っていう訳でもないらしく、たまに魔物が現れる。それを狩って、何らかの素材を得て金にしようというクレスの考えを賛成した私達は魔物を狩っていたのだけど…
「少しくらい手加減と言うものをだな…」「いやぁ…ははは」「うーん…跡形も有りませんね…」
 私が矢を一つ、槍を一本撃ったり、投げたりすると魔物が粉微塵になる。理由は『殲滅』によるものなのだけど…もうちょっとどうにかならないのだろうか?ここまで結構魔物に出会ったけど、未だに収穫0。ここまで来ると私でも『どうにかならないのか?これ』ってなりますわ。
「(おーい、神様ー)」『はいはい、どうかしたかな?』「(この『殲滅』って魔力を弱めたいんだけど。概念ごと根こそぎ吹っ飛ばすってちょっとやり過ぎ感あるし、どうにかならない?)」『概念?いやいや、概念は飛ばせないよ』「(は?)」『『殲滅アポカリプス』が根こそぎ滅ぼす事が出来るのはあくまで物質だけだよ』「(そうなの…?月神が言ってたのは?)」『嘘っちゃ嘘だけどまぁ概念と物質を間違えただけだから気にしないでやってくれ』「(まぁそれはいいか。これがあるとやりすぎちゃうんだよ。どうしようかな?)」『剣聖に頼めばいいじゃない。彼女なら金目の物を』「(持ってるんじゃなくて、作れるの?)」『うん』
 はぇ…。そんな力があるなんて夢にも思わなかった。すごいな剣聖…。
「ねぇ剣聖、貴方金目の物を作れるって聞いたんだけど本当?」「え?あぁ、まぁはい。一応今私が持ってる2本に加え998本なら作れますよ」「本当か!?」「はい、ですがそれはここで作ると結構持ち運びがキツイので、着いてからにしましょう」「分かった」
 剣聖が持ってる2本ってもしかして、もしかしなくても剣だから、剣を998本作れるって事!?すげぇ!先程まで呆れて目が死んでたクレスの目がキラキラしてる。
「よし!そういう事なら、さっさとこの街道抜けてデミングポートに急ぐぞ!」「うん!」「二人で勢いよく走って行きましたね…」「似た者同士なのだ…」
 置いていかれた剣聖とチャゼルの二人はそんな二人をゆっくりと追いかけるのだった。
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 私はデミングポートという街を街道を降りる山から見た時、こう思った。『ギリシャみたいな街並みだなぁ…』と。白を基調にした家屋が並んでいて、蒼い海が見える景色。誰もが息を飲むであろう景色がそこにはあった。
「わぁ…すごいのだぁ!」「綺麗な街並みですね」「そうだな…」「こんな景色は初めてだよ!」
 当然私達もその景色に圧倒された。ていうか誰でもこの景色を見れば、わぁぁ…!ってなると思うんだよね。わぁぁ…!って!
「さて、景色も堪能した事だし、街に入るとするか」「そうですね」「…」「…?おいラルダ。置いてくぞ?」
 私が景色を見てボーッとしてると、もう進み始めるらしいクレス達が呼びかけてきた。いかんいかん。意識が飛ぶ。
「うん、今行く!」
 私は急いで進んだ。あの街には恐らく7日ぐらい滞在するだろう。その7日間をどう過ごすか、迷うなぁ。

 一方で、デミングポート上空、一体の白龍が飛んでいた。その白龍は三人の男女を乗せており、その内男二人が話していた。
「『戦殺』がまさかデミングポートに行きたいって言うとはねぇ。ビックリだわ」「何、不思議な事ではあるまい。いい歳こいたジジイだってたまには海に行きたくなる事はあるのだ」「今のアンタは充分若えだろうがよ…」「おっとそうであった、ははは」
 そんな話をして盛り上がっている傍、一人の灰髪の女の子は黙って、デミングポートから臨む海を見ていた。
「(私としては、ウェインさんも連れて来たかったんだけれど…用事があるって言うから仕方ないですよね)」
 そんな思いを持ちながら少女は小さく、ため息を吐いた。

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