部の中心的な弓道部員だった私が異世界に転生したら長耳族でした
第四十三話 「隔絶銀河世界」
月神の試練を二つとも終わらせた私は、神から授かった神器、シエラガレストを扱おうとしていた。弓とはいえこれには「殲滅」が内蔵されている訳なので、当然考え無しに放つとこの月神の世界が崩壊するので撃てない。そんなわけで、どうにかして使う事は出来ないだろうか…、と悩んでいる算段である。そうして悩んでいると剣聖が話しかけてきた。
「どうしたんですか?」「え、あぁ。シエラガレストを使っては見たいのですが、内蔵された魔力が魔力で思うように放てないんですよ」「あぁ、それだったら」
シエラガレストを貸してください、というような仕草をしてきたので貸してやる。剣聖は受け取った後、ある場所を捻りだした。そこからプシッと音が鳴り、一瞬魔力回路が光ったかと思ったら消えていった。魔力が切れた…?
「あの、何をしたんですか?」「私が今捻った所は、シエラガレストの魔力回路が最も集合している、所謂核です。回路の接合部が合わなくなるとそれで魔力接続が途切れるので、安心して放てるんです」「成る程!ありがとう剣聖!」「いえいえ、どういたしまして」
彼女は苦笑いしながら去っていった。さて、今この弓には魔力が宿っていない。よし、なら弓道を始めよう。そう思い、私は立ち上がった。
__________
私は今、旧月神の「月影」により投影された弓道場にて矢を射っている。シエラガレストの使用感はとても良好だ。神が私の為に作ってくれただけはある。そして、月神の「月影」という魔力…素晴らしい。懐かしいこの空間で弓が射てるというのはとても嬉しい。的の中心を何度か射抜き、一息ついた時、旧月神に話しかけられた。
「いやはや、惚れ惚れする弓の扱いだな」「えへへ…これでも結構弓には自信があるんです」「だが、何故お前はあのような小さな的を狙う?シエラガレストは大軍をも退ける神器。あのような小さな的ではシエラガレストの性能は分かるまい?」「あぁ、それはですね。これが弓だからです。弓は遥か遠方の敵をも射抜ける武器。幾ら大軍を退けられる神器と言っても、これは弓で一人の相手を射抜くものには変わりない事だからです」
と、自分で言ってみたものの、いまいち私も分かってない。しかし、旧月神はそれで納得したように、頷いてこう言った。
「一人を射抜くもの…か。成る程な。ならばちょっとした催しに付き合って貰うとしよう。」「催し?」
月神が手を掲げ指を鳴らす。すると空間が歪み、黒い霧で覆われて行った。この強大な魔力は…「月影」の魔力…いや違う。もっと歪な何かだ。見る見るうちに空間は変わり、銀河のような空間に変わっていた。
「此処は?」「俺の決戦場、と言えば分かるか?隔絶された銀河世界。一対一の試合舞台、外部からの侵入は許されず、勝負が決まるまで出ることの出来ない空間だ。変革概念ではないので「殲滅」では滅びない」「……何を企んでいるんですか?」
そんな空間に連れてきて何をする気だろうか?一方的な勝負を仕掛け、私を殺す気だろうか?いやまさか。彼の様なお人好しがそんな事をするだろうか?しないだろう。まさか単純に勝負がしたいのか?
「そろそろこの世界にも飽きたのでな。ここは一つ、弟子に殺められて世を発ちたいと思ったのだ」「えっ、そんな…」「なに、俺は彼此3500年はこの世界にいる神だぞ?そろそろ飽きるものだ。だが、何か刺激を受けて死にたいと思ったのだよ。だからお前に試練を与えよう。最後の試練だ」「…待ってください!それって…」
この世界が崩れる事を意味するのでは、と言いかけたが、その先が出なかった。言えなかった。彼の眼差しが冷酷で。
「俺との一対一との死合で、俺を討て。そして、己が住んでいた所へと帰るがいい。それが俺が最後にお前に出す試練だ」「…っ!」「だが、俺も無抵抗でやられる訳にはいかん。やれるだけ抗うつもりだ。分かったら、弓を構えろ!」「…………分かりました」
私はシエラガレストの魔力回路を接続しなおす。射出に多大な魔力を使うが、その分凄まじい速度で魔力が私に補填されるこの武器は、魔力の少ない私にとってとても相性がいい。この武器の強さがこの戦いで分かるのであれば、私も本気で行こう。此処で培って来たもの全てを出し切って、恩返しとして彼を葬ろう。
「どうしたんですか?」「え、あぁ。シエラガレストを使っては見たいのですが、内蔵された魔力が魔力で思うように放てないんですよ」「あぁ、それだったら」
シエラガレストを貸してください、というような仕草をしてきたので貸してやる。剣聖は受け取った後、ある場所を捻りだした。そこからプシッと音が鳴り、一瞬魔力回路が光ったかと思ったら消えていった。魔力が切れた…?
「あの、何をしたんですか?」「私が今捻った所は、シエラガレストの魔力回路が最も集合している、所謂核です。回路の接合部が合わなくなるとそれで魔力接続が途切れるので、安心して放てるんです」「成る程!ありがとう剣聖!」「いえいえ、どういたしまして」
彼女は苦笑いしながら去っていった。さて、今この弓には魔力が宿っていない。よし、なら弓道を始めよう。そう思い、私は立ち上がった。
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私は今、旧月神の「月影」により投影された弓道場にて矢を射っている。シエラガレストの使用感はとても良好だ。神が私の為に作ってくれただけはある。そして、月神の「月影」という魔力…素晴らしい。懐かしいこの空間で弓が射てるというのはとても嬉しい。的の中心を何度か射抜き、一息ついた時、旧月神に話しかけられた。
「いやはや、惚れ惚れする弓の扱いだな」「えへへ…これでも結構弓には自信があるんです」「だが、何故お前はあのような小さな的を狙う?シエラガレストは大軍をも退ける神器。あのような小さな的ではシエラガレストの性能は分かるまい?」「あぁ、それはですね。これが弓だからです。弓は遥か遠方の敵をも射抜ける武器。幾ら大軍を退けられる神器と言っても、これは弓で一人の相手を射抜くものには変わりない事だからです」
と、自分で言ってみたものの、いまいち私も分かってない。しかし、旧月神はそれで納得したように、頷いてこう言った。
「一人を射抜くもの…か。成る程な。ならばちょっとした催しに付き合って貰うとしよう。」「催し?」
月神が手を掲げ指を鳴らす。すると空間が歪み、黒い霧で覆われて行った。この強大な魔力は…「月影」の魔力…いや違う。もっと歪な何かだ。見る見るうちに空間は変わり、銀河のような空間に変わっていた。
「此処は?」「俺の決戦場、と言えば分かるか?隔絶された銀河世界。一対一の試合舞台、外部からの侵入は許されず、勝負が決まるまで出ることの出来ない空間だ。変革概念ではないので「殲滅」では滅びない」「……何を企んでいるんですか?」
そんな空間に連れてきて何をする気だろうか?一方的な勝負を仕掛け、私を殺す気だろうか?いやまさか。彼の様なお人好しがそんな事をするだろうか?しないだろう。まさか単純に勝負がしたいのか?
「そろそろこの世界にも飽きたのでな。ここは一つ、弟子に殺められて世を発ちたいと思ったのだ」「えっ、そんな…」「なに、俺は彼此3500年はこの世界にいる神だぞ?そろそろ飽きるものだ。だが、何か刺激を受けて死にたいと思ったのだよ。だからお前に試練を与えよう。最後の試練だ」「…待ってください!それって…」
この世界が崩れる事を意味するのでは、と言いかけたが、その先が出なかった。言えなかった。彼の眼差しが冷酷で。
「俺との一対一との死合で、俺を討て。そして、己が住んでいた所へと帰るがいい。それが俺が最後にお前に出す試練だ」「…っ!」「だが、俺も無抵抗でやられる訳にはいかん。やれるだけ抗うつもりだ。分かったら、弓を構えろ!」「…………分かりました」
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