After-eve

本宮 秋

bake 第3章


霜月。まさに字の如く霜が降り寒空に月が浮かび寒さが本格的に始まる時期。
そんな霜月も足早に過ぎ、次期師走を迎える。今年もあと1ヶ月ちょっと。
月日が経つのが本当に早く感じる。

まだ雪残る春の初めに、この小さな街にやって来て夏、秋、そして冬と迎える事になった。

複雑な思いが交錯する中、自分(マコト)には、どうしても確かめなければいけない事があった。
確かめないと落ち着かない、不安が増すばかり。
もしかしたら大した事では、ないのかもしれないが、ちょっとした違和感が残っていた。

でも、どうしたらいいのだろう。誰に聞けばいいのだろう、いや誰から聞けばいいのだろう。
とは言っても、カオリさんに聞くべき事では無いし。それ以上に、自分と話さえしてくれないだろうし。

やはりあの二人に直接訊いてみるしかない。

ユウさんには、この間会ったばかり。

アキさんには…凄く会いづらい。
でも、合わなければいけない様な気がする。それで自分が感じている違和感が解消される筈。

思い切ってアキさんに逢いに行った。
店では無く、夜 自宅の方に。

連絡もせず突然の訪問。
しかしアキさんは、あまり驚いた表情はせず普通に招き入れてくれた。

「すいません、突然。」

「大丈夫。…どちらかが、来そうな気がしてたし。」

どちらか…。自分かカオリさんの事だろう。アキさんは、わかっていたのか覚悟をしていたのか…。

「カオリちゃんにアレから会った?」
普通に、いつものアキさん通りの感じで訊いてきた。

「一度役場に行ってみたんだけど、顔見た途端、避けられました。」

「そっか〜。」
「で、今日は怒りに来た?カオリちゃんをあんな目にあわせてって。」

「いえ!カオリさんとアキさんの事に口を出す気は…無いです。ただ…」

「ん?ただ?」

「アキさんもユウさんも何か変です!
違和感を感じるんです。」

   ……

「自分は、カオリさんに振られた訳だしカオリさんだって自分だって、いい歳した大人なのに…アキさんにしろユウさんにしろ自分にカオリさんを見続けてとか、見守ってとか。まるで二人が居なくなるみたいに…。」

「そうだね。余計なお世話って奴だったね。マコちゃんだって色んな想いあるのにね。ごめんね!」
アキさんが自分に頭を下げながら言った。

「正直、アキさんが自分に遠慮しているのでは?っと思いもしました。アキさんが、カオリさん見続ければ済む事だし今までの様に。なのに…」

「俺が、本当にマコちゃんに気を遣ってカオリちゃんの事、あの様になったと思ってる?」

「無いと…アキさんはそんな人では、ないと…。でも何か気になって、自分がカオリさんに告白してから…こんな事になったから。」

「うーん。マコちゃんは、そこは気にしなくていいと思う。ただ意外と、何かが動くと周りも動く事は、よくある。それが意図的だったり偶然だったり。改めて言うけど、マコちゃんに遠慮してカオリちゃんの想いを断った訳じゃ無いよ。」

「はい。そうだと思うし、そう願いたいです。ただ…もう四人で楽しくは、無理なんですかね?」

「そんな事ないと思うけど。俺が、言える立場じゃないけど。さっきマコちゃんが言った様に、みんないい歳をした大人だから色々あっても良い付き合いは、出来なくも無いと思う。それぞれの思い方次第だけど。」

「アキさんは、どうしても駄目なんすか?カオリさんの事。カオリさん…凄くアキさん好きなんです。やっぱり…過去が…まだ引きずってるんすか?自分は、カオリさん好きなので幸せになって欲しいし、笑っていて欲しいんです。カオリさんには…」

アキさんは、無言のままだった。

言い過ぎたかなと思った自分だったが、色んな不安感を拭い去る為にも言っておきたかった。

「マコちゃんがカオリちゃんの事、想う
様に 俺も想う事がある。でもそれはカオリちゃんの事ではない。前にも言った様に、好きだけど上手くいくかどうかは別の話。」

アキさんが、ハッキリ言った。『カオリちゃんの事ではない』と。

ショックだった。

アキさんから聞きたく無い言葉だった。
同時にカオリさんの寂し気な表情が、頭に浮かんだ。

「カオリさんが…可哀想…です。自分じゃどうにもしてあげられないし…。
やっぱり、アキさん…が…。」

「あれ?俺とカオリちゃんの事には、口を出す気は無いんじゃなかった?」

わかってます。わかってますよ。そのつもりだったのに…。余りにも、カオリさんが…。

「マコちゃんは何故、自分じゃどうにもしてあげられないと思うの?好きなのに。何か言葉を掛け無くても、何か行動しなくても、その人の事を想うだけで
十分、力になってるかもしれないのに。
自信持ちなよ!マコちゃんはいい男なんだから。」

アキさんの言葉が痛かった。

振られたからと言って、早々と諦めてしまっていた自分を見透かされた様で。
自分は、結果を求め過ぎていたのでは?

アキさんやユウさんが言った見続ける事、見守る事は、そう言う事なのか…。

アキさんが、自分を呼んだ。

アキさんの寝室に。

前に見た、小さな仏壇。花が飾られ綺麗にされていた。
「この人がね、2年前に事故で失った人。大好きだった人。自分のせいで、事故に遭って…。だから簡単には忘れられない、というか忘れては…いけないと思ってる。」

花の横に置かれていた写真。綺麗な女性。
その写真を愛おしく、少し切なそうに見るアキさん。

何故か、アキさんを想うカオリさんの表情と重なった。
辛い過去、辛い生き方をしているアキさんを思うと…

あまり過去を語らないアキさんが、わざわざ話してくれて申し訳なく思った。

自分は、ただ自分自身の不安感を拭い去る事だけを考えていて…
信金さんの言った言葉。
『相手の気持ちを察する。』
まさに今の自分に足りない物だと思った。

話をしてくれて ありがとうございます、アキさん。
そしてアキさんの気持ちを察する事が出来なくて…ごめんなさい。

霜月の最後の満月が、冷たい空に浮かんでいた。

第3章     終

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