After-eve

本宮 秋

forming 第5章

                 
バッグに彫られた小さな花。
その花のお陰で、色々あったが以前の様な仲良い四人の関係に戻った。

カオリさんが、自分の事を気にしてくれて、ユウさんの店で夜な夜な自分を待って居てくれた事。それが本当かどうかは、よく分からないが涙を流したカオリさんを見て、申し訳ない気持ちになった。それが嘘泣きだったとしても…。

以前貰った、フクロウが彫られたキーホルダーとプレッツェル。
今回は、小さな可憐な花が彫られたバッグ。バッグの種類はカオリさんとは違うのに、同じ花が彫られていた。
何か、意味があるのだろうか?
プレッツェルにしても普段アキさんの店には売ってないパンだし…

考えても分からないので、シンプルにプレゼントして貰った事を喜ぶだけに。
カオリさんと同じ花のデザインというのも少し嬉しい気分。

久々の四人の楽しい時間だったが、平日という事もあり早めにお開きに。
名残惜しかったが、何よりカオリさんとまた普通に接する事が出来ただけで、ホッとした。

結果的に、アキさんユウさんのお陰。

まぁ、あの二人に言わせれば、『別に、なんもしてないぞ!』と言いそうだが…。
やっぱりアキさんユウさんは、大人です。カオリさんもある意味では、凄い大人ですけど…(人を操る能力⁈)(お酒を飲むと怖いもの無し)(アキさんをパン屋、ユウさんをジジイと言える。)

やっと仕事も落ち着き、一時に比べたらかなりゆったり仕事が出来る。
今年は、天候が不安定だったので農家の方々は大変だったが、自分の会社は売り上げも良く上司の方々も満足気だった。
秋も終わりに近づき、この夏と秋の忙しさの慰労と言う名目でお食事会が行われた。久々に会社の皆さんで。
丁度、ユウさんの店[ピッグペン]の向かいにある炉端焼きの店で。
ほぼ自分の会社の人達で、いっぱいになり気兼ねなく楽しいお食事会に。

金曜の夜という事もあり、その後は何組かに分かれ二次会に。上司に捕まりスナックに連れていかれる。

スナック[蜃気楼]
上司のお気に入りの店。ユウさんの奥さんの親戚の娘が働いている店。久々だなスナックは。
早速、その娘が付いてくれた。
ん〜、信金さん事件を思い出す。

「ユウイチの友達だよね」
まぁ、言葉使いが雑なのは知っていたがユウさんをユウイチと呼んでるとは…。
でもユウさんの友達という事で、楽しく話してくれた。ほぼ、ユウさんの悪口⁈
で盛り上がってしまったが…。
自分が思ってた以上に奥さんとは、ヤバかったらしい。奥さんの親戚の娘なので、やはりユウさんが叩かれる。
その話の中で、ユウさんが珍しい形のパンを持って奥さんを迎えに行ったらしい。

パン…。アキさんか…。どんなパンをユウさんに渡したのだろうか?
そのパンの珍しい形と美味しさなのかは、わからないが奥さんはユウさんの元に戻ったらしい。

むぅ!食べてみたい、そのパン。
というか、アキさんは何者なのか?
人の心を動かすパンを作るなんて、やはり只者ではないな!妖しい粉とか…入れてる?いやいや、それは無い!そんな事思っただけで、カオリさんにボコボコにされてしまう。

上司が早々と酔っ払ってしまったので、さっさと帰らせて上司のカラオケ地獄から解放。 

外の冷たい風で酔いを少し覚ます。

ふと、道路の反対側を見ると…先生。
カオリさんの幼馴染の先生が居た。
前までは、あまり関わりたく無かったがこの前、四人で会ってから嫌な感じは少し無くなっていた。カオリさんと仲直り出来た事と、あの時のアキさんの言葉がそう思わせたのかもしれない。

ペコリと会釈したら先生が近寄って来た。
「最近、カオリと何かありました?」
いきなり先生が訊いてきた。

「何かって?別に…どうしてですか?」

「いやぁ、最近カオリ付き合い悪くて。名前、マコトさんでしたっけ?マコトさんと何かあったかなって。」

「自分とは、普通ですけど。」
それしか言えなかった。取立て何かあったわけでも無いし。

「そうですか。てっきりカオリは、あなたの事を気になってるのかと思ったけど。」

何を言いだすんだろう。先生は…。
アキさんの事、知ってる筈なのに。

「マコトさん、カオリ好きでしょ?」

また、立て続けに何を言うんだろう。
酔っているのかな?

「カオリさんは、アキさんだけです。」
ビシっと言った自分。

「知ってるけど、何か違う気がするんだよね〜あの人とは。むしろマコトさんの方がね…何となくそんな感じというか」

そういう風に考える人も居るんだと、意外に冷静な自分だった。

「で?マコトさんの本音は?」

え〜、まだ聞く?しつこいなぁ先生!

「俺は前にも言った通り、好きだけど。
いいんですよね?遠慮しませんよ!」
酔っては、いない感じで先生が言った。

本音をぶつけられた事と、自分がまだ酔いが残っていたせいで、つい…むきに…なってしまった。
「好きっすよ!自分、カオリさんが!
駄目っすか?勿論、それが報われない事も承知の上ですよ!でもいいんです、それで…」

うわ、酔ってるな自分。ヤバいな、どうみても言い過ぎた。
ん?先生のリアクションが無い。
何、呆然としてるんすか?先生が訊いてきたから答えたのに。

「カ…オリ…」

へっ?大丈夫?目の焦点合って無いっすよ!何処…見て…る…んす…か?
先生の視線の方を振り返って見る、かなりヤバい感じ満載を予感しつつ…。

静かに両腕を組み、佇む…カオリさん。

固まった。体も心も。どうしていいのか、何を話せばいいのかもわからない。
完璧に自分の思考が、止まった。

そしてその後、思った事は『どうか、自分の言った事を聞いていない様に…』
それだけだった。

「マサユキ!ちょっとマコと話あるから外して!」

先生は何も言わず、行ってしまった。
まだ口を開けず、身動きも取れない自分。

「マコ…今、言った事…本気?」

「な…ん、の事で…しょう…か。」
必死に絞り出した言葉だった。

「はぁ。男でしょ!情け無い。自分の気持ちを言うのは自由なんだから」

「はい、すいません。」

「謝るな!ヘタレマコ!言った事に自信持て!」

「でも〜ちょっと…」

「でもじゃない!根性無し!」

「すいません…す…き…です。」

「良し!えとえと…ごめんなさい。で、いいかな?可哀想だからチューでも しとく?」

えええっ〜。ん?でも、ごめんなさいって言われたよな?夢かな?思わずニヤける自分。

「キモ!する訳無いだろ!エロマコ!
さっさと行くよ!ユウさんとこ。いい酒のアテができたし!ぷっ」

最悪、最悪だ〜。おまけにそれをネタにお酒を飲むって〜⁈  ひどい…。

初めて この小さな街から、出て行きたくなった。

第5章       終

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