After-eve

本宮 秋

kneading 第3章

仕事の忙しさにも慣れてきた頃、突然の有給休暇を頂く。仕事が忙しいので恐縮してしまいそうだが、この、ご時世きちんと有給を取らせないと会社としても大変らしく有り難く休ませて貰う。
折角なので通常の休みにくっつけて3連休にした。別に大した予定も無く、持て余しそうだったが忙しかった分、ゆっくりしようと思っていた。


とりあえず車で1時間の割と大きな街で夏物の服を買い、髪を切り、ある程度やるべき事を済ませた。


ちょうど夕方。夕方と言っても日も長くなってきたのでまだ明るい。
アキさんの店[After-eve ]へ行ってみた。少しお客さんがいたが、丁度お会計をして帰るとこだったのでゆっくり出来そうな感じだった。


「3連休?いいね〜何かする事ある
の?」アキさん。


「別に何も決めてないっす。結構突然有給取れ!って言われたし。」


「最近忙しそうだったから、ゆっくりすれば良いんじゃない?」
殆ど売り切れたパンを片付けながら自分の事を気にかけてくれるアキさん。


「土、日曜日が休みならカオリちゃんでも誘ってデートでもして来たら?(笑)土、日なら彼女も休みだし。」
躊躇いなく言うアキさん。


「またそんな冗談を…カオリさんはアキさんの誘いしか興味無いでしょ。」


「うーん。年齢からすれば俺なんかよりマコちゃんの方が良いとおもうけどなー」


「年齢は関係無いっすよ。アキさん若いし。」


「あら。すっかりお世辞も上手くなって…ふふっ」
と、パンのレシピが書かれたノートを広げ明日のパンを選ぶアキさん。
何気なくノートを見たらビッシリと色んなパンのレシピが描かれていた。


「凄いっすね!全部作れるんすよね。」


「パンはね。意外と難しく無いんだよ。
難しく思われがちだけど基本のパンが作れれば結構なんでも作れるのよ。」
レシピをパラパラ見ながらサラッと言うアキさん。


「何か美味しく作るコツあるんすか?」


「別にないよ。どこのパン屋さんも基本同じよ。ただ色々ね、原価とか効率とかを考えると多少変わるよね。当たり前だけど。」
「そうだねー、ウチはあまりそういう事
考えてないから良い小麦粉良いバターを使って、自分で作れる分しか作らないから贅沢というか美味しくなきゃいけないよね。」
「だから儲けは無いようなもんだよ。」


「やっぱり小麦粉は大事なんすか?」
素人の自分が生意気にも訊いてみる。


「んー確かにね 高い粉は良いんだけど、
要は、その粉に合った作り方その粉に合ったパンを作る事が大事かな?」
「その粉の成分や特性に合わせて、捏ねる(Kneading)事がパン作りの基本だから。」


流石です。何かやっぱり格好いいです。
同時にパンが好きなんだなと感じた。


「革製品を作る事はパン作りと共通する事があるんすか?」何か哲学的な答えが出てくるかと期待する自分。


「…無い。」


「うっ。またやっちまった。」やっぱりアホな自分。


「ぷふふ、マコちゃんらしいよ。革、レザークラフトはね、何か楽しそうだから始めただけ。パン作りも同じだけど。」
「俺さー、何も無かったんだよ。得意な事とかやりたい事。で、とりあえず手当たり次第色んな事挑戦して、この2つが面白いかなって感じただけなんだよ」
アキさんがアキさん自身の事、話すの始めてかなと思いつつ。


「何か意外っすね。アキさん何でも出来そうなのに。」


「ん?またお世辞?何か奢らないといけないなー。」
「そうだ!マコちゃんカレーパン好きなんだっけ?じゃ今度、特別に作ってあげるよ。好みに合うか分からんけど。」


「マジっすか!うれちいです〜」
やっぱりいい人だ、カレーパン好きなのも覚えていてくれた。


サイコーですアキさん。


「うれちいって…いい大人が…気持ち悪っ!カオリちゃんに教えたろ。」アキさん。


サイテーですアキさん。


第3章        終

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