After-eve

本宮 秋

mixing 第5章

1ヶ月半が過ぎ、徐々にこの地に慣れてきた。仕事もドンドン忙しくなってきた。暖かくなり農作業が活発な時期に入り、ウチの会社はまさにかき入れ時。
時には山奥の農家に出向いたり会社の中で事務作業に追われたりと仕事中心の生活。
しかし嫌な感じは全くなく、むしろ色んな経験、色んな人達との出会いがあり、楽しい毎日を送れていた。


季節が進んだせいか、この小さな街も少し活気づいている感じ。
とはいえ、小さな街(田舎)なので娯楽が少ない。車で1時間走れば何でも揃う街に行くことが出来るが仕事も忙しいので、なかなか遠出は出来なかった。
夜、1人居てもつまらないのですっかりユウさんの店(ピッグペン)に通い詰める日が増えた。男1人なのでコンビニ弁当ばかり、たまに自炊するが仕事が忙しく今は、ユウさん頼み。
なんだかんだ色んな料理を出してくれて夕食代わりに、させて貰ってた。
ユウさんの店でも顔見知りの客ができ、1人でユウさんの店に行くことに抵抗は、無くなっていた。
アキさんの店(アフター イブ)も忙しいみたいだ。地元だけでなく周りの街からも噂を聞きつけ、すっかりここらでは有名なパン屋さん的存在になりつつあった。
おかげで自分は、なかなかパンにありつけない日々だったが…。


いつもの様に夕食ついでにユウさんの店に行ったら団体客が宴会していた。


「ごめん。団体さん入って相手出来ないから勝手に飲んでて。」と、ユウさん。


8人位の団体さんだが、ユウさん1人で料理を作って出していた。おもわず、
「1人で大丈夫ですか?グラスでも洗いましょうか?」と、カウンターに並んだ飲み終えたビールジョッキを見て言ってみた。
「大丈夫よ。うちに来るお客は、オレが1人でやってるのわかってるから料理が出来るのが遅くなっても文句言わないし。
オレもそういうスタンスでやってるから、気使わなくても全然OK!」


何か如何にも田舎の店らしい感じがしたけど、それがまたフランクというか良い所だなっと思った。
と、団体客の1人の女性が飲み干したビールジョッキを持って来てカウンターに置き、ユウさんにビールのおかわりを注文。そして、おもむろに自分の顔を覗き込む様に見て、
「もしかして転勤で来た方?」
自分が飲んでたウィスキーの水割りで、一瞬むせそうになる。同時に急に女性に話し掛けられたので少し緊張しながら
「へ⁈ あっ、…俺すか?まぁ、はい。あっ、そうです。」
あたふたした返事にも、程がある言い方で返した。


女性、
「 [After-eve] 知ってるでしょ?」
「アキさん とこ。」
「アキさんから少し聞いたんだよね〜。1度あの店でチラッと見かけた事あるし。」


「えっ、俺の事すか〜?」と女性の顔をチラッと見る。おっ、キレイ⁈カワイイ感じ!
この街にもこんな女の人がいるんだなあと少し驚いたと同時に嬉しい気持ちになった。


「アキさんから同じ位の歳じゃないかな?って聞いてさ〜。」女性。


「俺、33ですけど。」
「あ〜同じだ。タメだね。よろ〜」
酔ってるのか、軽めというか気さく⁈というか…でもカワイイのでトキめいた。


会社には若い女性がいなく、おばちゃんしかいない。普段この街で見かけるのは、お年を召してる方か、子供を連れた母親ばかりの気がして…そりゃ普通の女性もいるよな、と少し納得していた。
と、考えているうちに女性は自分の席に戻ってしまった。
キョトンとしてる自分にユウさんが、
「役場の集まり。役場の人だから結構、平気に声掛けてくるよ。それも仕事みたいなもんだから。(笑)」


ユウさんの言葉に少しガッカリというか、それが当たり前かと落ちつかせる様にグビグビと飲み干す。
珍しく他にもお客さんがチョコチョコやって来て、賑やかな店になっていた。
流石にユウさんが忙しそうなので早めに切り上げ帰ろうとした時、さっきの女性がユウさんに「おしぼり もらいま〜す。」と、カウンターの端にある、おしぼり器から取り出していた。その姿をチラッと見てると、
「あ。私、役場に勤めているので困った事有れば何でも聞いてください。役場に居るんで。」おしぼり片手に女性。


「あ、はい。」と返事をするかしないかのタイミングで
「アキさんと、ここで飲んだ事あるんでしょ。今度アキさんと3人で飲もうよ」と、意外なお誘い。社交辞令かなと思いつつ、ユウさんの店を後にした。


帰り道
ん⁈
アキさんの彼女では、ないよな?
アキさんと仲の良い関係?
久々に女性に話し掛けられ勝手に色んな事を想像しながら、正直 うらやましさとドキドキとワクワクが入り混じった中学生のような幼い…33歳    独身、彼女なし


第5章          終

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