狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

佐藤 優奈

二十三話『魔物の王』

『いつの間に!?』

雅が驚くと、竜は呆れたように言った。

『だいぶ前から見てたけどな。』

『でも、なんで…』

『襲ってこないのかと、言いたいのか?』

竜が雅の言いたいことを先回りして言った。
雅は無言で頷く。
魔物達はその場でじっと立ち止まり、奇妙な目で雅たちを見ていた。

『それはねー、主が力を使ってるからなんですよ!』

竜が何かを言いたそうに口を開いたが、更紗がさきにしゃべりだした。

『力?』

『はい!主はー…』

更紗が主の力とやらについて何かを言おうとした時、更紗の頭に拳骨が落ちた。

『いったぁーっ!』

更紗が子供のように大声で叫んだ。これまたフードを深くかぶったものがどこからともなく現れて更紗に拳骨を落としたらしかった。

『ったく!お前達、無駄話してる場合かよ!主がそろそろつくからお前らは魔物を逃がさないように各場所につけ!そこの人間はあっちの騎士団のとこにいろ、お前達魔物が逃げたら捕獲して森に転送な。』

新しく来たローブの人物は男でその場にいた更紗や霧と呼ばれた人物達にテキパキと指示を出した。

『了解!』

更紗たちは魔物達の近くによって横一列に並んだ。等間隔で並んでいるが真ん中の間隔だけが不自然に空いていた。

『っ!』

不自然な間隔に首をかしげていると強い風が吹いた。思わず目をつぶる。

『みんな!お待たせー!』

少女の声が聞こえたかと思ったら先程の不自然な間隔のところに背の低いローブの人物がたっていた。
今のところ、ここに来た人型の魔物と思われる者達の中で一番小さい。
そしてみんなローブを着てフードを深くかぶっていたが今の風でほとんどのもののフードが取れた。
ほとんどのものが銀髪だった。
王国の歴史の中で銀髪を持ったとされるものは勇者ただ一人のみだ。
銀髪はとても多くの魔力を持っていると言う証で、その色の逆である黒髪は魔力なしと蔑まれた。

『あー…なんでだろう森は結界があるし安全だよって言ったし、森からでちゃダメって言ったのになぁ…』

一番最後に来たローブの少女はブツブツと何かを呟いていたが、前を見て魔物達を見据えた。

『ま、とりあえず原因解明は後でとして、今は皆を返さなきゃな。』

少女はまだフードが取れておらず、顔も髪色もわからない。
少女はその無垢な口調からわ考えられないほどの威圧を放ち始めた。

『ッ!』

魔物達はジリ、と一歩後退した。

『それ!』

しばらく少女は魔物達と睨み合いをしていたが、唐突に掛け声をかけて空に飛び上がった。少女は宙に浮いたまま魔物を見下ろす。
先程よりも強い風がごうっと吹いて私は一瞬目をつぶった。
目を開けた時、少女の姿をみて私は一瞬固まった。

少女は黒髪だった。なのに空中で浮く魔法のようなものを使っている。

『あー、これは出番ないかも?』

更紗が顎に手を当ててつまらなそうにいった。
なんのことか聞こうとするがそれよりも先に少女の黒髪がチラチラと視線の中に入ってきて脳が考えるのを邪魔した。

『@#▲&*$¥#¥&□!!』

少女が私の知らない言葉で何かを叫んだ瞬間、魔物たちはしばらく上空の黒髪の少女を見つめた。
だが次の瞬間魔物たちは踵(あるかはわからない)を返して森の方へ走って言ってしまった。

「あー、力が届かなかったかな?」

少女が言うと、まだ子供のようなイノシシの魔物が何匹か残っていた。

「はい!回収!」

黒髪の少女が手をパチンと鳴らすと、横一列に並んでいたローブの者たちが帰りそこねたらしい魔物たちを拾っていく。
その多くはほとんど子供らしい小さな魔物たちであり、すばやくローブの者たちの手をかわしながら逃げ惑っていた。
妙に和む光景に力が抜ける。

「あー、すいません。もう出てこないようにちゃんと行っておくんで、ご迷惑をおかけしました。」

黒髪の少女が降りてきて、こちらに向かって話しかけてきた。
先ほどとは違う人間の言葉で、だ。
世間話のように話しかけてきたことに私は驚き、後ろにいつからか空気になりかけていた騎士団の面々が警戒を強めた。

「はじめまして。」

黒髪の少女がわざとらしく丁寧に礼をする。そしてニヤリと笑ってこちらを見上げ、これまたわざとらしく自分の胸に手を当てて言った。

「私が、この森のあるじ、糸です。」

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