狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

病んでる砂糖

十五『真』

『んじゃ、時間も時間だし帰りましょうか。』

更紗が急に手をパント叩いて言った。

『…そうですね。栞さん、借りてくよ。』

真と呼ばれた男性が分厚い紙の束を手にとって言った。

『あ、いいですよ。』

碧斗が言っていた先生という人が返事する。

『んじゃ、お嬢様たちも帰りましょう。』

更紗がこちらにむきなおる。

『うん。』

『そうですね。』

凛華は少し面白くなさそうに言った。何故だろう。

『では気を付けてね〜。』

先生ー栞さんが見送ってくれた。

『更紗はあの人とどれくらい昔から知り合いなの?』

『栞さんの事ですか?どれくらいでしょうか。もう四百年くらい前のことに思いますがね。』

『え!?あの人も、もしかして…』

『どうでしょう。』

更紗が私の言葉に重ねるように言った。無駄だ。ばれている。

『じゃあこの人は?』

私は更紗の隣の男性を指さす。何故か男性は私たちについてきていたのだ。

『怪しいものじゃないぞ。』

『じゃあ何者なんですか。』

『…者。』

『え?』

男性が何か言ったのだが声は風の音と混じって聞こえなかった。

『聞こえなかったか。お前の先祖だよ。』

『え?』

今度は聞こえなかったのではない。

『…っぷ、あはは、真さんストレート過ぎません?』

急に更紗が爆笑し始める。

『いいだろう、俺は無駄な労働力を払わない主義なんだ。』

更紗はあっけらかんと笑っているが花梨はそれを呆然と見つめる。先祖?そんな訳ない。私の先祖は魔王を倒した勇者で…そこで糸の顔が思い浮かんだ。
糸の両親はどうなったのだろう。銀さんの記憶で見た限り勇者の性格だと糸達が去った後にさんざん拷問して殺しそうだ。
一瞬でも脳裏に浮かんだ拷問の一場面にぞわりとする。

『それにしたってストレートすぎますよ。』

更紗が未だ収まらない笑いを堪えながら言う。

『俺は先に行く。』

私の家の先祖だと名乗った人は家の屋根にひとっ飛びで乗って姿を消した。

『はい、ではまた後で。』

更紗は男の人がすっかり姿を消してしまってから言った。

『本当にあの人は誰なんですか?』

『今から話すことを私とお嬢様だけの秘密にして頂けますか?』

『う、うん。』

私は今まで見たことないほどに真剣な顔をした更紗に気圧されて返事をした。

『では…』

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