狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

佐藤 優奈

四『使用人』

魔物とは、遠い昔魔族の魔術の実験によって、突然変異した動物達である。そこから幾度となく生き延びるために進化を遂げ、今の姿になったと言われている。そのことを更紗に聞くと

『まぁ、あながち嘘じゃないですけどね。森の魔物は主が創り出した者もいますけど。そういうものはあらかじめ森の環境にあった姿になるんで、そんなに姿形は子供が生まれても変わりません。』

そこまで更紗が言うと母が感嘆したように言った。

『へえ、森の主ってのは魔物を創れるのか?』

母が聞くと更紗はまくし立てた。

『はい!主は可愛いしかっこいいんです!』

可愛いしかっこいい?私は首を傾げる。

『それにすごく優しいんです!森には人間に虐められて、よく瀕死の魔物が来るんですけど、主はその魔物の怪我を治して、たまに魔力を吸い取られてるやつとかもいるんですけど、そういうとき、自分の魔力を分けてやるんです!!』

森であった、あの少女は一体誰だったのだろうか。

『すごいな…、瀕死の魔物、よく来るのか?』

魔物を傷つけることは五十年程から禁じられている。そして更紗が再度語りだそうとした時、アサレアというカラスの魔物が飛んできた。

『伝令!伝令!皇都から!』

『アサレアどうした?』

『皇都に今すぐこい!だって!』

『そうか、そういえばお前は森の魔物だよな。お前は森の主についてどう思う?』

アサレアは急に聞いてきた母に特に疑問を持つわけでもなく答えた。

『主!優しい!大好き!』

自分の主について聞かれたのが嬉しかったのか、アサレアはぶわっと羽根をふくらませた。魔物はゴブリンとかごついのばっかだと思ってたけど、こういう魔物を見た時は本当に魔物か疑った。とても友好的ですぐに仲良くなれた。けれど、前にアサレアが言っていた。

「ここにいる魔物やつらは一度は人間に裏切られたやつばかりだ。それは森にいる魔物も変わらない。だけど、ここにいる魔物は人間をもう一度信じようと思った奴ら。だからお前と私は仲良くなれたけれど森の魔物達はお前を見つけた瞬間食いちぎろうとする奴もいる。」
 
要するにもう一度人間を信じることを選んだ魔物が人間のいるこの街で働いていて、森に居るやつは人間をとても嫌っているのだろう。

『アサレアも人間にいじめられて森にきたの?』

『うん。人間に…いや魔術師を名乗るヤツらの実験台になって最初ただの烏だったのに魔物にされた。そこで酷い実験を受けて…』

そこまで話すと、アサレアはぶるっと羽根を震わせた。けれど、

『でも、そこに主が来て魔術師のヤツらを倒して私を助けてくれた。実験の時に魔力を奪われてしまったけど、主がわけてくれた。』

明らかにしゅんとした空気になってしまったので私は話題を変えた。

『そういえばアサレアは人間の姿になれるの?』

『なろうと思えばなれる。』

『えっ、見たい!』

『別にいいぞ。』

アサレアは拗ねたようにいった。

『ほら。』

そう言って次の瞬間にはアサレアは、短い髪の毛の銀髪の少女、性格には十六歳くらいの子になっていた。

『銀髪か。これだけの魔力を主に分けてもらったのか?』

『うん。このペンダントをかけろって言われて。』

アサレアは胸元のペンダントを見せる。二本の糸が輪状になっていて真ん中には綺麗な石がついていた。

『これは魔石のペンダント…?』

『うん。主が作ってくれた。魔石も。』

『魔石を作れるのか!?』

母は驚く。そういえば前に本で、魔石は掘って出てくるものだが、魔力が多いものは魔術で作れるって書いてあった。しかし作れるとしてもその一つだけでかなりの体力を消耗するとも書いてあった。

『このペンダントは、主の髪の毛と主が作ってくれた魔石できてる。森に来た魔物の中には怪我をしている上に魔力も奪われているという状態で来るものも少なくない。そこにこのペンダントをつければこれくらいの魔力が貰える。最初は、身につけていないとダメだけど十年くらいつけてれば自分の魔力になる。』

『あ、そうそう私もそのペンダント持ってますよ。』

そう更紗が急に話に入ってきてアサレアと同じのペンダントを見せる。

『うわ、お前達の主ってすごいな。』

母が素直に感嘆した声で言うと、二人は目を輝かせた。自分の主を褒められたのが嬉しいのだろう。

『まあ、主は銀髪に地面につくくらい長いんですけど、千年くらい前から森にいて、魔物達にこうやって魔力を与え続けて、あの長さだから、初めて知った時すごい衝撃でしたね。』

『せ、千年?』

『そうそう、魔神族は約一万年くらい生きるらしくて、魔物でも長く生きて三百年から二千年くらいしか生きないんですけど』

いや三百年のとこでもうすごいわ。

『すごいなお前らの主、会ってみたい。』

『ま、外見的には少女ですどね。街にいても髪さえ隠せばあんまり目立たなさそうだし。』

そう更紗が言うと、アサレアが言った。

『でも主、千年前に魔神族の屋敷を追い出されてその時に魔力封印されて、今黒髪だよな。』

『あ、そうでしたこれなら心配いりませんね。』

勝手に話を進めているが、良いのだろうか。

『てか、千年も前から国の問題になってたってことか?』

『いや、たしか五百年前くらいですね。私が使え出したのも五百年前くらいですし。』

五百年前くらいと言ったらこの家ができたくらいの時だ。

『じゃあ更紗は御初代様の時から仕えていたの?』

『なんて言ったって、この家の使用人第一号はこの私なんですから。』

『え!?』

更紗って意外にすごいんだ。と今更ながらに言った。五百年前の家ができた時から仕えていた上にこの家の使用人第一号…。

『あと人間の街で働いた魔物第一号でもある…』

そうアサレアがボソリと呟いた。そして次の瞬間ひぃっと顔を引き攣らせて笑った。

『『き、霧殿…』』

『お前ら、なんで主のこと普通にペラペラ喋ってるの?』

急に現れた青年はこないだ、森であった青年だった。

『え、と、そ、それは…』

更紗が目を泳がせる。

『ペンダントそんなに見せびらかすな、って主は言ってたよな。』

『はい…!だから今のところ見せたのはお嬢様とご主人様だけですよ!本当です!』

更紗が手をひらひらと振りながら、無実を主張する。

『いやそういう問題じゃ…』

『お前らが街とかで問題起こすと、全部俺が怒られなきゃいけないの。だから主だって注意してるのに…』

『『はい。すいません。』』

二人は声を揃えて言った。

『あ、お前ら逃げようとしてんな、待て!』

『あ、すいません!この件については一切他言にしませんので。あとこないだの件、本当にありがとうございました!』

母が青年に謝る。何故だろう。こないだの件というのは私の家出のことだろうか。

『ああ、こちらこそすいませんね。まあ、こっちだって、街で魔物を働かせて何も問題が起こらないと思ってる訳じゃないですけど。』

『働く条件として、街で問題を起こさ無いとか言ってたくせに。』

更紗が小声で言った。

『ま、今回のことは下らないし、主もそんくらいにしろって言ってるから引き上げるよ。』

そう言って青年は窓からぴょんと飛び下りた。私が驚いて窓に駆け寄ると青年はもうどこにも見つからなかった。

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