狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

病んでる砂糖

七『家路』

『ちょっと待った。』
  
『ん?』

少女が邪魔そうに声の方向へ顔をむける。そこには狂乱の森の警備兵の格好をしている青年が立っていた。

『ん?じゃないよ、なんでこんな所で、令嬢相手に魔術の勝負始めようとしてるの?こないだのことといい…』

青年が少女に叱り始める。少女は少し顔を逸らす。

『いやあいつが先に手を出してきたんだし。そもそもあの娘が襲われているのをたまたま見つけたから助けたんだけど…』

『いや、それはぜんぶみてたからいいんだ、けどこれはもうアウトだろ。森の外で問題起こしてみろ、一発で地下牢行きだぞ!お前はまあ強いからすぐ抜け出すんだろうが髪色  目立つんだからおとなしくしろよ!』

なんかわかんないけど青年はこの少女の保護者…兄、だろうか。髪を見れば銀髪だからあまり血が繋がっているとは思えない。というかあの人、今うちがやってたこと全部見てたってさりげなく言ったよね。

『てかなんで警備兵の格好してるの?』

『抜け出すにはこの格好が楽かと思って。裏の方みはってる新人倒して服奪ってきた。』

え、このひと警備兵じゃないの?てかその方がアウトでしょ。

『服奪う方がアウトじゃない?』

そんな少女の言葉を青年は笑顔で聞き流した。

『君は大丈夫?さっきこの子に電流流されてたけど。まぁ、君みたいな令嬢は花よ蝶よと育てられるからかすり傷でもきっとかなりの痛みだと感じるんだろうね。』

『え、えぇ、私は大丈夫ですわ。さっきの電流も気にしてないですので。』

いきなり話を振られて少し慌ててしまったが、なんとか平静を装う。電流の件は気にしてないといえば嘘になるが、そんな大事ではない。

『ところで…さっき蓮沼家の娘のことを…』

『あぁ、それについては…そうですね、あなたがその事について反省をする気になったら話しましょうかね。まぁ私らを見つけられるか分かりませんが。』

『霧、こんな娘きっと反省なんてしやしないよ。』

そうだ、私は反省しろという言葉で反省するのも嫌いだし、自分で反省するのも嫌いだ。だが、こいつには言われたくない。だって数分前に会ったばかりだしだいいちこんなヤツらに言われる義理もない。

『じゃあ来れるのなら森の入口に後日くれば教えて差し上げる。かも知れません。』

『…』

『かも、とは?』

『あなたが反省していると私が思ったら、という事です。』

青年が顔をぐいと近づけて笑った。その顔は整っており爽やか系かと思えばそうでもなさそうな不思議な雰囲気を纏っている。顔が赤く染ってしまったのが自分でもわかった。

『そろそろ帰ろう…』

少女が言う。二人の背中を呆然と見送る。

(なんなんですのあの女と男は…!)

少女達が去ってからしばらくしてやっとその疑問が出てきた。なぜあの状況で気にならなかったのか。いやあの状況は疑問に思うところが多すぎた。あの女と男は何者か。あの二人の関係は。そもそも何故私が蓮沼家の娘の魔力を奪ったことを知っているのか。あの影はなんなのか。花梨はあの女を知っているみたいだった。等など

『お嬢様ー!』

遠くから私の世話役の銀という青年の声が聞こえた。迎えに来たのだろうか。

『お嬢様、お帰りが遅いのでこの銀、家を飛び出してきてしまいました。母上様も心配しております。早く帰りましょう。』

優しい銀は私に何が起こったのを聞かずに、優しく帰ろうと言ってくれる。私は小さい頃からお転婆娘で外を裸足で走り回ってみたり、年上の男子に喧嘩を売ってみたりと、銀を色々と困らせてきた。そんな銀だからこそ私の扱いを一番知っている。何故か分からない。涙が一粒零れた。

『うん…』

気高い淑女はうん、などという幼稚な言葉を使っては行けない。上品に微笑んで、えぇ、と言わなければいけない。

『さぁ、帰りましょう。』

私は涙を拭って家路を急いだ。

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