現実で無敵を誇った男は異世界でも無双する
やはりラブコメの主人公は鈍感である
(悪い!エリーゼ!)
俺は内心で謝りながらもエリーゼを強く抱きしめる。今俺は一体何をしているのか。簡単に言うと、エリーゼの吐息で呼吸をしている。空気中に含まれる酸素の割合は約20%。対して人の吐息に含まれる酸素の割合は約16%。そう何度も循環させることはできないが、今の酸欠のこの体を動かせるようにするには十分...!
「...!」
冷静な思考が戻ってきた俺は周囲にある気体の結合を強めると、まとめて蹴り飛ばす。そうすることで押し退けられた気体は俺の所に流れ込んできた。ロザリアがさっきまで俺の周囲の気体をどうにかして弄っていたようだが、やつは今俺が蹴った気体の塊をくらって吹き飛んでいて、気体操作どころではないだろう。
俺は今度は油断なくロザリアを見据える。と、同時に周囲の気配も探った。相手の仲間がいないか確認するためだ。ちなみに今回、俺は自分の作った気塊をロザリアに向かって蹴り飛ばしたが、別に俺の周囲をいじくったのはロザリアの仕業という確信があった訳ではない。ただし、可能性はあった。戦っている際、確信を持ってから動くのでは遅いこともままある。特にこの世界では、そんな慎重に戦っていたのでは判断が遅れて命すら落としかねない。それに、ロザリアはかなり強そうだったからあの程度の攻撃じゃ絶対に死ぬことはない。それでも、もし間違っていたら当然どんな贖罪でもするつもりだったが、こうして俺の周囲の作為的な変化が止まった以上、黒幕はロザリアだったと考えて間違いない。そして、どうやら周囲に敵影はないようだ。
「ちょ、ちょっと何をしてるんですか!?」
俺が周囲を探っていると、かなり慌てた様子でリーシャが詰め寄ってくる。残りの3人は何がなんだかという感じだ。
...そういえば銀雪のメンバーがこの場にいることをすっかり忘れていたな。
彼女たちからすれば、俺は突然苦しそうにしたと思ったらエリーゼにキスをして、おまけに攻撃(?)をロザリアに加えただけに見えているはずだ。
(あ、そういえばエリーゼは!?)
と思ってエリーゼの方を見ると、彼女は両手で真っ赤になった顔を抑えていた。もしかしたらめちゃくちゃ怒っているかもしれない。そしてそれを精一杯抑えているのかも...!
とにかく、どう説明したものか。そしてエリーゼには何と謝ればいいのだろう!と俺が悩んでいると
「どうしてお分かりになったのか、教えてもらっても?」
やはり大してダメージを受けていない様子のロザリアが徐に立ち上がり、話しかけて来た。しかしそれに俺が明確な答えを持っているわけでもないので、
「企業秘密だ。」
といって濁しておく。すると彼女は薄く目を開けて笑うと銀雪の方に向きなおる。
「申し訳ございませんでした。今のは私が先に陽翔様に手を出したのです。」
「え?マスターが?いったい何をしたんですか?全く気づけなかったのですが。」
「それについては申し上げられません。しかし、正直、私も見破られるとは思っておりませんでした。」
謝罪したロザリアに、聞き返すマリーベル。最後にこちらに向かって流し目を寄越すロザリア。対して俺は軽く肩を竦めただけだった。話すつもりがないことさえ伝わってくれればそれでいい。さて、次は俺の疑問だ。
「ロザリア。なぜこんなことをした。」
俺はやや威圧的な態度で言う。本気でおどかすつもりはないが、話せ、という意思は伝わったはずだ。
「ふふ。そんなに怖いお顔をなさらないでください。ちゃんとお話しいたします。」
絶対ビビッてないだろ。
「まず、私は先ほども申し上げた通り、王女の護衛隊長を務めております。」
ふむふむ。
「そしてリスタルテ様は明日、ついに18歳となります。彼女は非常に聡明で心優しく、わがままも言わない、立派な方なのですが...。」
ふむ。
「今年、生まれて初めてあの方が今年は誕生日プレゼントが欲しいとわがままを申されたのです。内容は『理想の殿方とお付き合いしてみたい。』というものでした。」
は?
「そこで滅多にわがままを申さない王女様の願いを、なんとしても私たち王家の者は叶えてあげたいと思いました。」
いや、諌めてあげないとだめだろう。そこは。
「しかし、この世界の男は皆ダメダメ。ブサイク、デブ、性格が悪い、弱い。この3つのどれかに必ず当てはまります。」
これは仕方ないか。何せ男は数が少ないから、ということでどうやら特権階級的な立場にいるらしい。そうなると社会的に男が上だと決まっているのだから、女性に対して態度が雑になってしまうし、前に出て戦わないのだから、弱くもなるし、性格も悪くなる。
「半ば私たちが諦めかけていた時。とある噂が我々のところまで流れてきたのです。」
「それが俺のことか。」
「はい。曰く、空前絶後の美少年。背は高く、引き締まった体つきをしており、程よく筋肉質。おまけに行動を共にしている女性に自然にしている気配り、優しく分け隔てのない態度。それに見ただけで安心させられる笑み。おまけにリントブルムをソロで討伐するほどの実力者。正直私も眉唾だと思っていたのですが、まさか本当にいらっしゃるとは...。私も見た瞬間鳥肌が立ちました。」
「いやその噂尾ひれつきすぎだろ。」
と俺が突っ込むと、女性陣(エリーゼ除く)は首を一斉に傾げて
「「「「「「え?どこがです?」」」」」
と一斉に答えた。もういいや...。
「まあ、理由はわかった。しかしお前のやろうとしていたことは立派な犯罪だ。そう簡単に許される行為ではない。」
「はい。誘拐のようなものだとわかっております。ですので当然王宮で目を覚まされたら事情を説明しようと思っていました。」
「普通連れさる前に言うべきだろう。それに王宮についてからNOと言われたらどうするつもりだったんだ。」
「王女様にお会いすれば、絶対にお付き合いを拒む方などおりません。と断言します。」
ふむ。
「要するに、事後承諾でもいいか。って思ったわけか。」
「そうなりますね。」
俺は無言で立ち上がると、ゆっくりとロザリアに近づく。彼女は俺が近寄って来て困惑しているのか、戸惑いの表情を浮かべている。そんなロザリアに俺は───
「アホ」
デコピンをした。なんの変哲もないデコピンだが俺がやったらかなり痛いはずだ。事実ロザリアはオデコを抱えて蹲り、涙目でこちらを見上げている。
「そんなに安易に命をかけに来るな。そんな理想の男性なんて言われる人間なら、話くらいしてくれるだろう?そうして解決すればいい。俺だったから良かったものの、もしこれが俺じゃなかったら、今頃お前は何をされていてもおかしくなかったんだ。」
俺の言った言葉にロザリアは一瞬目を見張る。あまり深く考えていなかったのかもしれない。彼女は間違いなくこの世界でもかなりの強者だったのだから。
「だから、もう、するんじゃないぞ?心配だからな。」
反省している様子のロザリアを見た俺は、微笑みながら頭を撫でてやる。俺は別にロザリアをいじめたいわけではなくて、反省してほしいだけだからな。反省したなら、何時迄も落ち込んでないで早く立ち直ってほしい。そう思ったのだが、当のロザリアは動く様子がない。
(まさか、想像以上に傷つけてしまったか...?)
と心配になり、ロザリアの顔を覗き込むと 、彼女は
ボンッ!
とでも音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、すぐに立ち上がりマリーベルの背後に隠れてしまった。
(馴れ馴れしくしすぎたかな...?)
━━━━━━━━━━━━━━━━
鈍感ここに極まれり。
ちなみに簡単に落ちすぎだろっ!て思ってる方。この世界は実は男性の容姿のレベルが低く、おまけに陽翔君の推測通り 、性格もよくありません。というかぶっちゃけかなり悪いです。ですから、女性は男性にこうして慰めてもらったり、優しく微笑みかけられるといったことはありません。でも、どんな人だって(例外を除く)相手の容姿は良いほうがいいし、性格だって良い方がいいです。そしてそういう人物像は、この世界にある勇者の物語などに残されています。しかし勇者だからこんな人間ができているんだ。と、皆諦めていたら、ある日その勇者すら超えるほどの素晴らしい人間に出会ったわけです。日常生活で言うなら...なんでしょうね。自分の大好きな何か。アイドルだったり、アニメキャラだったり、手の届かない所にあった欲しいものに、ある日現実で出会った感じでしょうか。でまぁ、結果的に簡単に落ちると言う訳ですね。というか、そもそも出会う前から落ちていたと言う方が正しいかもしれない...。
男子にブサイクが多い理由※あくまでこの物語内での設定です。
この世界では、遺伝子の優生、劣勢は容姿に現れます。端的に言うと、ブサイクとイケメンや美人が交配したら、イケメンや美人の形質が色濃く現れることになります。つまり、イケメンや美人の性別に近い特徴が現れるわけです。そしてこの世界にほぼイケメンはゼロ。ということは、男はブサイクとブサイクとの間にしか男は生まれない→男が皆ブス!
というわけです。
俺は内心で謝りながらもエリーゼを強く抱きしめる。今俺は一体何をしているのか。簡単に言うと、エリーゼの吐息で呼吸をしている。空気中に含まれる酸素の割合は約20%。対して人の吐息に含まれる酸素の割合は約16%。そう何度も循環させることはできないが、今の酸欠のこの体を動かせるようにするには十分...!
「...!」
冷静な思考が戻ってきた俺は周囲にある気体の結合を強めると、まとめて蹴り飛ばす。そうすることで押し退けられた気体は俺の所に流れ込んできた。ロザリアがさっきまで俺の周囲の気体をどうにかして弄っていたようだが、やつは今俺が蹴った気体の塊をくらって吹き飛んでいて、気体操作どころではないだろう。
俺は今度は油断なくロザリアを見据える。と、同時に周囲の気配も探った。相手の仲間がいないか確認するためだ。ちなみに今回、俺は自分の作った気塊をロザリアに向かって蹴り飛ばしたが、別に俺の周囲をいじくったのはロザリアの仕業という確信があった訳ではない。ただし、可能性はあった。戦っている際、確信を持ってから動くのでは遅いこともままある。特にこの世界では、そんな慎重に戦っていたのでは判断が遅れて命すら落としかねない。それに、ロザリアはかなり強そうだったからあの程度の攻撃じゃ絶対に死ぬことはない。それでも、もし間違っていたら当然どんな贖罪でもするつもりだったが、こうして俺の周囲の作為的な変化が止まった以上、黒幕はロザリアだったと考えて間違いない。そして、どうやら周囲に敵影はないようだ。
「ちょ、ちょっと何をしてるんですか!?」
俺が周囲を探っていると、かなり慌てた様子でリーシャが詰め寄ってくる。残りの3人は何がなんだかという感じだ。
...そういえば銀雪のメンバーがこの場にいることをすっかり忘れていたな。
彼女たちからすれば、俺は突然苦しそうにしたと思ったらエリーゼにキスをして、おまけに攻撃(?)をロザリアに加えただけに見えているはずだ。
(あ、そういえばエリーゼは!?)
と思ってエリーゼの方を見ると、彼女は両手で真っ赤になった顔を抑えていた。もしかしたらめちゃくちゃ怒っているかもしれない。そしてそれを精一杯抑えているのかも...!
とにかく、どう説明したものか。そしてエリーゼには何と謝ればいいのだろう!と俺が悩んでいると
「どうしてお分かりになったのか、教えてもらっても?」
やはり大してダメージを受けていない様子のロザリアが徐に立ち上がり、話しかけて来た。しかしそれに俺が明確な答えを持っているわけでもないので、
「企業秘密だ。」
といって濁しておく。すると彼女は薄く目を開けて笑うと銀雪の方に向きなおる。
「申し訳ございませんでした。今のは私が先に陽翔様に手を出したのです。」
「え?マスターが?いったい何をしたんですか?全く気づけなかったのですが。」
「それについては申し上げられません。しかし、正直、私も見破られるとは思っておりませんでした。」
謝罪したロザリアに、聞き返すマリーベル。最後にこちらに向かって流し目を寄越すロザリア。対して俺は軽く肩を竦めただけだった。話すつもりがないことさえ伝わってくれればそれでいい。さて、次は俺の疑問だ。
「ロザリア。なぜこんなことをした。」
俺はやや威圧的な態度で言う。本気でおどかすつもりはないが、話せ、という意思は伝わったはずだ。
「ふふ。そんなに怖いお顔をなさらないでください。ちゃんとお話しいたします。」
絶対ビビッてないだろ。
「まず、私は先ほども申し上げた通り、王女の護衛隊長を務めております。」
ふむふむ。
「そしてリスタルテ様は明日、ついに18歳となります。彼女は非常に聡明で心優しく、わがままも言わない、立派な方なのですが...。」
ふむ。
「今年、生まれて初めてあの方が今年は誕生日プレゼントが欲しいとわがままを申されたのです。内容は『理想の殿方とお付き合いしてみたい。』というものでした。」
は?
「そこで滅多にわがままを申さない王女様の願いを、なんとしても私たち王家の者は叶えてあげたいと思いました。」
いや、諌めてあげないとだめだろう。そこは。
「しかし、この世界の男は皆ダメダメ。ブサイク、デブ、性格が悪い、弱い。この3つのどれかに必ず当てはまります。」
これは仕方ないか。何せ男は数が少ないから、ということでどうやら特権階級的な立場にいるらしい。そうなると社会的に男が上だと決まっているのだから、女性に対して態度が雑になってしまうし、前に出て戦わないのだから、弱くもなるし、性格も悪くなる。
「半ば私たちが諦めかけていた時。とある噂が我々のところまで流れてきたのです。」
「それが俺のことか。」
「はい。曰く、空前絶後の美少年。背は高く、引き締まった体つきをしており、程よく筋肉質。おまけに行動を共にしている女性に自然にしている気配り、優しく分け隔てのない態度。それに見ただけで安心させられる笑み。おまけにリントブルムをソロで討伐するほどの実力者。正直私も眉唾だと思っていたのですが、まさか本当にいらっしゃるとは...。私も見た瞬間鳥肌が立ちました。」
「いやその噂尾ひれつきすぎだろ。」
と俺が突っ込むと、女性陣(エリーゼ除く)は首を一斉に傾げて
「「「「「「え?どこがです?」」」」」
と一斉に答えた。もういいや...。
「まあ、理由はわかった。しかしお前のやろうとしていたことは立派な犯罪だ。そう簡単に許される行為ではない。」
「はい。誘拐のようなものだとわかっております。ですので当然王宮で目を覚まされたら事情を説明しようと思っていました。」
「普通連れさる前に言うべきだろう。それに王宮についてからNOと言われたらどうするつもりだったんだ。」
「王女様にお会いすれば、絶対にお付き合いを拒む方などおりません。と断言します。」
ふむ。
「要するに、事後承諾でもいいか。って思ったわけか。」
「そうなりますね。」
俺は無言で立ち上がると、ゆっくりとロザリアに近づく。彼女は俺が近寄って来て困惑しているのか、戸惑いの表情を浮かべている。そんなロザリアに俺は───
「アホ」
デコピンをした。なんの変哲もないデコピンだが俺がやったらかなり痛いはずだ。事実ロザリアはオデコを抱えて蹲り、涙目でこちらを見上げている。
「そんなに安易に命をかけに来るな。そんな理想の男性なんて言われる人間なら、話くらいしてくれるだろう?そうして解決すればいい。俺だったから良かったものの、もしこれが俺じゃなかったら、今頃お前は何をされていてもおかしくなかったんだ。」
俺の言った言葉にロザリアは一瞬目を見張る。あまり深く考えていなかったのかもしれない。彼女は間違いなくこの世界でもかなりの強者だったのだから。
「だから、もう、するんじゃないぞ?心配だからな。」
反省している様子のロザリアを見た俺は、微笑みながら頭を撫でてやる。俺は別にロザリアをいじめたいわけではなくて、反省してほしいだけだからな。反省したなら、何時迄も落ち込んでないで早く立ち直ってほしい。そう思ったのだが、当のロザリアは動く様子がない。
(まさか、想像以上に傷つけてしまったか...?)
と心配になり、ロザリアの顔を覗き込むと 、彼女は
ボンッ!
とでも音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、すぐに立ち上がりマリーベルの背後に隠れてしまった。
(馴れ馴れしくしすぎたかな...?)
━━━━━━━━━━━━━━━━
鈍感ここに極まれり。
ちなみに簡単に落ちすぎだろっ!て思ってる方。この世界は実は男性の容姿のレベルが低く、おまけに陽翔君の推測通り 、性格もよくありません。というかぶっちゃけかなり悪いです。ですから、女性は男性にこうして慰めてもらったり、優しく微笑みかけられるといったことはありません。でも、どんな人だって(例外を除く)相手の容姿は良いほうがいいし、性格だって良い方がいいです。そしてそういう人物像は、この世界にある勇者の物語などに残されています。しかし勇者だからこんな人間ができているんだ。と、皆諦めていたら、ある日その勇者すら超えるほどの素晴らしい人間に出会ったわけです。日常生活で言うなら...なんでしょうね。自分の大好きな何か。アイドルだったり、アニメキャラだったり、手の届かない所にあった欲しいものに、ある日現実で出会った感じでしょうか。でまぁ、結果的に簡単に落ちると言う訳ですね。というか、そもそも出会う前から落ちていたと言う方が正しいかもしれない...。
男子にブサイクが多い理由※あくまでこの物語内での設定です。
この世界では、遺伝子の優生、劣勢は容姿に現れます。端的に言うと、ブサイクとイケメンや美人が交配したら、イケメンや美人の形質が色濃く現れることになります。つまり、イケメンや美人の性別に近い特徴が現れるわけです。そしてこの世界にほぼイケメンはゼロ。ということは、男はブサイクとブサイクとの間にしか男は生まれない→男が皆ブス!
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コメント
ノベルバユーザー179677
3つではなく4つですよ
けせらとてん
早く次が読みたいです。
ハジメ
続き楽しみにしてます!
ノベルバユーザー241481
文章力学校ほかの人とは段違いで上手いですね 頑張ってください!応援してます
爽健美茶1205
続きが気になります!頑張って下さい!