とある鋭き針の物語

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無慈悲の熱波

あれっ?針縫ってあんなグロテスクな戦い方するっけ?
俺はリリムを紅く染め上げた針縫を見て、そんなことを思った。まあ、血の量で言えば捕喰竜の噛み砕きの方が上回っているけど…。

現在俺は、完全に観戦ムードだった。針縫の気分を高揚させるにはこうしておくのが一番だと思っているからだ。だが、そんな俺に横やりを入れる者がいた。


『私のことを置いて観戦などできるとでも思ってるのかい?』

それは水鏡だ。奴は澄み切った太刀筋で俺の腕を切断した。


「やっぱのんびりはさせてくれないか。
頼んだぜ、生命竜。」


俺は生命竜に腕を治してもらいつつ、臨戦態勢をとる。


「はぁ〜。捕喰竜は使わない、いいな。
それじゃいくぜ!!」

俺はため息をついてから、奴へと飛び掛った。


すぐさま俺がストレートをお見舞いしようとした時だ。


『武道技ー明鏡止水。』

奴はスキルを発動し、俺の攻撃を容易く躱す。だがそれも計算済みだ。


「纏霊技ー竜の爪!」

すぐさま振り返りつつ力を溜め、治ったばかりの腕に時空竜の腕を纏う。


「おるぁ!喰らえ!!」

そして、その腕を奴めがけて振り払った。攻撃を躱した直後の奴に、この一撃を躱す術など無い。


『ぐあぁぁー!』

奴は直撃し、思いっきり吹き飛ばされ、後ろの柱に激突した。柱にぶつける事が出来たあたり、いい乱数を引けたのだろう。


『げほっ、げほっ、
り、竜の腕を使うとは…』

「対人専門家のあんたにはいい刺激になっただろ、水鏡。

見た目が人間からと言って、そう決めつけてよいものでもないのじゃぞ。」

俺たちは戦意を失った水鏡に対して、適当なアドバイスを置いておいた。奴ならまだ強くなれると信じて。

とか言っていたら、背後から高熱量が近づいてくるのを感じた。


私は突き刺した双翼を引き抜いた。血の滴るその翼を腰の位置に戻すと、彼女が絶命しているかを確認しようとする。が、それをする前にそいつは動き出した。
突然、横から高熱量が接近するのを感じる。


「…!?」

私は急いでその場から飛び退くと、先ほどまでいた場所が、彼女もろとも一瞬にして灰塵と化した。


「それがあんたの能力なの?」

私がそう問いかけると、狼は返答の代わりに強く吠えた。それと同時に、奴の背後に炎の渦が巻き起こる。


「なんて熱量なの。
…はっ!このままじゃブロウスが。」

私は、渦の隣にブロウスの姿を見た。奴があれを動かせば、間違いなく巻き込まれて黒焦げステーキになってしまう。
しかし、この状況どうしようか、とか考える時間もなさそうだ。


「針技ー座標転移針!」

私は、予備の座標転移針をブロウスに投げた。
奴は自分が攻撃されたのだと勘違いし、その渦を拡散させる。
針が熱量によって溶かされないか不安だったが、幸いにも溶ける前に突き刺さり、彼を転移させる事が出来た。

できればここでホッとしたいところだが、あれに巻き込まれたらこっちがやられてしまう。
私はすぐさま周囲を確認し、ふと目に入った部屋に逃げ込んだ。



俺が感じた熱量を発生させるのは1匹しかいない。無慈悲のヴァルフだ。ただ幸いにも奴の操る程度の熱量なら、生命竜の耐久性でどうにかなる。


「という訳でよろしく、生命竜。

仕方ないわね。私の耐久力、見せてあげるわ。」

私は主と交代すると、全身を防御膜で覆った。これさえあれば、熱などの属性による被害を大きく抑える事ができる。
私はこのまま、炎の渦が通り過ぎるのを待つ事にした。のだが、予想以上に熱い。肌がジリジリ焼かれるのを感じつつ、ひたすら堪えた。
通り過ぎた頃には表面だけ真っ黒焦げになっていた。私はすぐに主と交代し、体を治し始めた。


「おっと、真っ黒焦げじゃないか。あいつ、あんなに強い熱を操れたっけ?

そんな事よりも主、水鏡が。」

時空竜に言われて水鏡の居た場所をみた。そこには水鏡の代わりに、人型の炭が残っていた。


「…まさに無慈悲、だな。

そのようじゃな。」




竜也の性質

一時的に体の主導権を、纏竜に譲ることが出来る。この際竜也本人の能力が損なわれる代わりに、どの竜が体を動かすかによって、それぞれ異なる長所が生まれる。


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