とある鋭き針の物語

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素質

私は彼に、ストレートを繰り出す。
さっきの針〔リザレクションピン〕の効果で体を治した事で、万全の状態になっている。それどころか死にかけた時の集中力を知る事が出来た為、判断力が圧倒的に向上しており、結果としてその一撃は、今まで以上に研ぎ澄まされたものとなっていた。


『さすがは那宵に勝っただけはある。いい一撃だ。』

彼もまた調子が出てきたのか、より優れた動きで一撃を躱す。


『ところで、どうして能力を出し惜しむんだ?もっと使えばいいじゃないか。』

彼は攻防を繰り広げつつ、私に問いかける。


「この能力を使う隙がないからよ。最低でも20秒は必要だわ。」

私も負けじと質問に答える。もちろん闘いの方を優先させてるけど。


『へぇ〜。
ますますその力に興味が湧いた。』

彼はいきなり攻防の手を止め、後方に下がった。私は追撃しようとするも、纏霊技ー竜の尾により阻止される。





『みんな、悪いが捕喰竜を使わせてもらう。


はぁ〜…要するに、あれを暴れさせるな、と。


そゆこと。いつも通り任せたよ。』

俺は捕喰竜を使うことを告げると、彼女に接近する。程よい間合いまで近づいたところであの技を発動する。


『纏霊技ー捕喰竜2型!』

それと同時に俺は、右腕に捕喰竜の頭部を纏わせる。彼女は驚いた表情を見せるが、俺の好奇心にそんなものは関係ない。
俺は右腕を前に構え、その口を大きく開けた。


「見えすぎた攻撃だね!!」

もちろん彼女は横に避ける。


『引っかかったな!よいしょっと。』

俺は腕を横に倒し、思い切り喰らいついた。



完全に予測外だった。まさか横に開けるとは思っていなかった。
私はかろうじて地を蹴り上に跳ぶことで、胴体を喰い千切られるのを防いだ。が、両足は犠牲になってしまう。


「痛ってえ、そんな使い方もあるなんて…」

私は地に伏したが、すぐに回復用の針を作ろうとする。


『…なろほど、能力ではなく特能〔特殊技能〕だったか。』

また何か物々言ってる。とりあえず針はできたので、体に突き刺した。


『…性質は〔形状ー針ーを形成する〕か。
…ん?まだあるな、どれどれ…』

「よし、治りきった!」

彼がぶつぶつ言っている間に、私は足を元通りに治し終えた。
そして、とびっきりの一撃をお見舞いするために地を蹴ろうとした時だった。


『えっ!?消費MP10%!?それにまだ…』

彼が何かに驚いた。それと同時に、彼がこちらに向けていた警戒心が消えた。


「今だ!おるぁぁぁ!!」

私は急接近し、強力な一撃を繰り出す。


『主、奴の攻撃だ!!

えっ?』

彼は全く反応できず、もろにその一撃を喰らい、ぶっ飛んでいった。
着地点で受け身を取った彼は、先ほど傷ができた時と同様に、竜のような模様を纏って回復を試みる。だが今回はその隙など与えるつもりはない。


「もう一発喰らえ、おるぁぁぁ!!」

私はすぐさま追撃を行う。だが、私が拳を当てる直前だった。


『ちょっと待ってくれ、話がある』

彼は片手を前に出しつつ、交渉を持ちかけてきた。私は止まるつもりなど無かったのだが、止まらなくてはならない事態が起きていた。
彼の手に、針が握られていたのだ。


「なぜあんたが針を!?」

『捕喰竜があんたの足を喰いちぎった時に、特能をコピーさせてもらった。そういう性質だ。
ついでに解析をしてみたのだが、あんたの特能にはとてつもないほどの効果が隠れている事がわかった。』

彼がこの能力の核心を知っている?ならば私はそれを知らなければならない。


「この針について?…今すぐに教えなさいよ。」

『まあまあ、一旦落ち着いてくれ。こっちにも条件ってものがあるんだよ。』

「…一体何なの?その条件って。」

『ああ、至って単純だ。
一つ目に今の闘いについて、水に流すこと。
二つ目に、俺に邪神退治を手伝わせること。』



「つまり、あんたと仲間になれってこと?

…まあいっか。わかった、あんたを信じてみるよ。」

「了承有難い。
ただ、だいぶ疲れちまった。あんただってそうだろ?だから一旦休ませてくれ。
…あっ、逃げるつもりはないからな。」

とりあえず私は、彼の話に乗ってみることにして、休むことにした。



捕食竜について

竜也が従える纏竜の一匹。喰らった者の能力をコピーし、一定回数使用できるといった能力を持つ。
もっとも気性の荒い纏竜であり、発動する度に他の纏竜が暴走を抑える必要があるため、滅多な事がない限り、使用することはない。

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