とある鋭き針の物語

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本性発揮?

 私は怒っていた。

時は今朝…大会から数日後に遡る。女将さんに呼び出された。どうやらこの宿屋に四天王の一人〔偏西のリリム〕が訪ねてきたらしい。名前からある程度察せると思うのだが、彼女も淫魔である。多分、大会に参加していたと四天王が話題として私のことを話したのだろう。
 とりあえず私は、呼びかけに応じてみた。
…のだが、そこからはあまりに酷かった。
「美しさのかけらも感じられてない」
とか、
「男の精を搾らなくて何が淫魔だ」
とか、正直思い出したくないくらい散々に言われた。
そして今に至る。


「いい加減にしやがれ!!」

私の怒りは爆発していた。気づいた時には、彼女を殴り飛ばしていた。四天王とはなんだったのかというくらいあっけなく吹っ飛んでいく彼女を見たとき、はっと正気に戻った。


やってしまった

このままだと、私の力を邪神に報告されてしまう。そうなれば、私が誰であろうと奴は戦いに来るだろう。こんな街中でやり合えば、勝てるかどうか以前に甚大な被害を生んでしまう。
どうしようかと考えていたところ、女将さんが肩をたたいてくれた。


「なに、強くなって自分から行けばいいじゃない。」

「それができたら苦労はしませんよ。」

「強くなる方法ならさっき教えてもらったじゃない。」

さっき?…奴はなにか言ってただろうか…


「あなた淫魔でしょ。人から精を搾れば強うなれるって言ってたじゃない。」

「は?
ええ確かにそう言ってましたけど…仮にその気になったとしても、人里を襲っている間に邪神が来たらどうするつもりですか。」

「なにも人里を襲う必要はないわよ。大会にいたじゃない。」

…えっ!?那宵のこと?…じゃないよね。そういえば明らかに人間な奴が居たような気がする…


「たぶんまだこの区間にいるだろうから、チャチャっとヤってきなさいよ。」

…もう一か八かだ。やるしかない!


「…わかりました、ヤってきますよ。では」

それだけ言った私は、すぐさま宿屋を出た。



外に出ると、多くの亜人種たちが集まっていた。そりゃあ四天王の一人がぶっ飛んでいったのだから、当然だろう。
おっと、どうやらお目当ての人も、そこにいるようだ。とりあえず私は、人混みを避けるために、彼の誘導を試みる。


「ねえ君、ちょっといい?」

「いいぞ…って、あなたはチャンピオンじゃないですか。この件を起こしたのもおぬしか?」

「ええと…うん、まあね。」

「やっぱりえげつない力をお持ちなのだな」

…なんだろう、彼の言動に違和感を感じる。言葉選びが所々間違ってるような…


「あっ、そういえば言い忘れてましたな。儂…じゃなくて、俺の名前は竜也りゅうや。よろしく。」

「よろしく、竜也!」


「ところで、何故四天王の一人が飛ばされたのですか?」

チャンス!うまく口を回して、裏路地に誘い込もう。


「それが…、人前じゃあ言えないようなことだから。人のいない所に場所を移してもいい?」

「ええ、問題ないですよ。おぬしが何をしたのかが気になって仕方がないよ。」

「興味を持ってもらえて嬉しいわ。じゃあこっちにきて!」

こうして私は、彼を連れて裏路地に向かった。



よし、これぐらい奥に行けば大丈夫かな。

私はさりげなく彼の後ろに位置を変え、隙を見て押し倒す。


「なっ!?」

彼は驚いた表情をしている。私は、今しかないと言わんばかりに彼を犯そうとした。
そのときだった。


『ふふっ、おぬしとて所詮は淫魔だったか…。』

彼は、先ほどとはまるで違う言葉遣いで喋り始めた。


「くっ、今更あんたになにができるってんだ」

『確かに儂がただの人間であれば、何もできずに犯されるだけだろうな。今のおぬしに押し倒されては、抵抗できるものなどおらんじゃろう』

ただの人間じゃない!?一体何者なんだ?


『動揺が顔にでとるぞ。まあ儂が勝つとは言い切れないが、教えてやろう。儂らは〔纏竜まといりゅう〕、そして儂の真名は〔時空竜〕。』

纏竜?なんだよそれ!!


『もう付き合うのも面倒じゃ、始めるぞ。纏霊技〔空間咆哮スペースロア〕!』

その言葉と同時に、彼は息を吸い込む。もうこの先の展開が読める私は、ひとまず距離を取る。予想通り彼は叫び声をあげた。
それと同時に、周囲の空間が塗り変わっていく。気づくと私は、全く別の空間に立っていた。目の前には彼がいる。


『戦いの始まりだ!』



咆哮技について

主に、ヘイトを集めるタイプの技のまとまりのこと。今回の場合は例外で、咆哮自体に時空竜の能力が混ざっている。

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