境目の物語
救世猫?
『また俺様に頼るのか? 腰抜けが!』
音もなく現れた人面猫は、出会い頭に容赦なく毒を吐いていた。だがその声も耳に入らないくらい、ラグはその登場を喜んでいた。
『チッ、(聞いちゃいねえ。面白え反応期待してたのによ。……あ、いいこと思いついた)』
口を開かずにつまらなそうなジェスチャーをしていた人面猫が、不意にその口元をニヤリとさせる。
それから柄を伝ってラグの目の前まで迫り、
『おいお前、俺様を呼んだってことは、わかってるよな?』
強気な口調で言い放つ。そこでようやくラグの喜びに浮いた意識が戻り、代わりに首を傾げた。
「わかってるよな?……って、何が?」
それを聞いた途端、真っ黒な猫は肩を落として深いため息をついた。
『金に決まってんだろ。相棒の予告なしってことは、有償でいいんだろ?』
「あっ!? そうだった!」
言われた途端、ラグの顔が青ざめる。今の所持金はたったの【1,200.c】。宿には泊まれるが、そこまでの大金ではないのだ。
「ええと……、いくら払えばいいんだ?」
『50,000.cだ。』
「5万!?」
「5万!?」
聞いて即座に返された額を理解し、一緒に聞いていたリティも含めて目を丸くした。
それはラグにとって、今まで稼いだ額を優に上回った数値だった。二人まとめて見ても、ポンと出せるような額ではなかった。
「なんでそんな巨額になっちゃうの!?」
『んだおめえ? 俺様は仕事の真っ最中なんだぜ。こいつが相棒の弟子でなけりゃ、もっと取ってるところだ。』
質問するリティに対しても、全く態度を崩さずに返答する人面猫。聞けば聞くほど、二人の顔は青く染まっていく。
そしてその様子を見て、楽しそうに笑い声をあげるのだ。
『クッヒッヒ! 別に借金でもいいが、払えないのなら俺様は仕事に戻るぜ。まだこんなに配達物があるんだ、こっちに休んでる余裕はねえんだよ。』
人面猫は背中に着けた革の鞄を強調する。それは、中身のもので今にも弾けそうなほど膨らんでいた。
宅配系の仕事だと言うことは見ればわかるが、それを気にする余裕は今のラグにはない。
『助けて欲しいなら早く決めな。俺様はもういくぜ?』
「ま、待って!」
わざとらしくフォークの先に足を運ぶ猫を、ラグは必死に呼び止めた。
金が払えないなんて理由で、この助けを逃していいはずがない。それを一心に、ラグはようやく覚悟を決めた。
「払う、絶対に払うから! だから行かないで!!!」
聞いた猫は足を止める。そして振り返り、
『絶対って言ったな? 後悔はねえんだな?』
圧力を強めてラグに迫る。でも決めた覚悟に、たじろいでなんていられない。
ラグは真剣な顔で対峙する。
「ああ。今頼れるのは、ネコ師範だけなんだ」
『そりゃいい言葉だ。その表情も、実にいい』
歩み寄る人面猫は、そう言いながらニヤリと笑みを浮かべる。
『4万は負けてやる。一カ月以内に1万で契約だ。いいな?』
「ああ。命が助かるなら、安すぎるくらいだ」
『なら5万に戻すぜ?』
「いやいや、今のは例えだから!」
『冗談だ。ほら、契約書だぜ』
揶揄われながらも、取り出された紙はポーチに押し込まれる。これにて契約成立である。
なので早速目的を告げるラグ。
「ネコ師範、あの魔人を倒してください!」
そしてその返答は……!
『んなことできるか!!!』
(ryトピック〜ネコ師範について〜
色原 我道と同じ顔を持つ、全身真っ黒の人面猫。あちらはトレードマークのニット帽で目が隠れているが、こちらはそもそも目がついていない。
我道のことを相棒と呼ぶが、関係性は不明。仕事のジャンルが違い、人前で一緒にいることも滅多にないようだが………
音もなく現れた人面猫は、出会い頭に容赦なく毒を吐いていた。だがその声も耳に入らないくらい、ラグはその登場を喜んでいた。
『チッ、(聞いちゃいねえ。面白え反応期待してたのによ。……あ、いいこと思いついた)』
口を開かずにつまらなそうなジェスチャーをしていた人面猫が、不意にその口元をニヤリとさせる。
それから柄を伝ってラグの目の前まで迫り、
『おいお前、俺様を呼んだってことは、わかってるよな?』
強気な口調で言い放つ。そこでようやくラグの喜びに浮いた意識が戻り、代わりに首を傾げた。
「わかってるよな?……って、何が?」
それを聞いた途端、真っ黒な猫は肩を落として深いため息をついた。
『金に決まってんだろ。相棒の予告なしってことは、有償でいいんだろ?』
「あっ!? そうだった!」
言われた途端、ラグの顔が青ざめる。今の所持金はたったの【1,200.c】。宿には泊まれるが、そこまでの大金ではないのだ。
「ええと……、いくら払えばいいんだ?」
『50,000.cだ。』
「5万!?」
「5万!?」
聞いて即座に返された額を理解し、一緒に聞いていたリティも含めて目を丸くした。
それはラグにとって、今まで稼いだ額を優に上回った数値だった。二人まとめて見ても、ポンと出せるような額ではなかった。
「なんでそんな巨額になっちゃうの!?」
『んだおめえ? 俺様は仕事の真っ最中なんだぜ。こいつが相棒の弟子でなけりゃ、もっと取ってるところだ。』
質問するリティに対しても、全く態度を崩さずに返答する人面猫。聞けば聞くほど、二人の顔は青く染まっていく。
そしてその様子を見て、楽しそうに笑い声をあげるのだ。
『クッヒッヒ! 別に借金でもいいが、払えないのなら俺様は仕事に戻るぜ。まだこんなに配達物があるんだ、こっちに休んでる余裕はねえんだよ。』
人面猫は背中に着けた革の鞄を強調する。それは、中身のもので今にも弾けそうなほど膨らんでいた。
宅配系の仕事だと言うことは見ればわかるが、それを気にする余裕は今のラグにはない。
『助けて欲しいなら早く決めな。俺様はもういくぜ?』
「ま、待って!」
わざとらしくフォークの先に足を運ぶ猫を、ラグは必死に呼び止めた。
金が払えないなんて理由で、この助けを逃していいはずがない。それを一心に、ラグはようやく覚悟を決めた。
「払う、絶対に払うから! だから行かないで!!!」
聞いた猫は足を止める。そして振り返り、
『絶対って言ったな? 後悔はねえんだな?』
圧力を強めてラグに迫る。でも決めた覚悟に、たじろいでなんていられない。
ラグは真剣な顔で対峙する。
「ああ。今頼れるのは、ネコ師範だけなんだ」
『そりゃいい言葉だ。その表情も、実にいい』
歩み寄る人面猫は、そう言いながらニヤリと笑みを浮かべる。
『4万は負けてやる。一カ月以内に1万で契約だ。いいな?』
「ああ。命が助かるなら、安すぎるくらいだ」
『なら5万に戻すぜ?』
「いやいや、今のは例えだから!」
『冗談だ。ほら、契約書だぜ』
揶揄われながらも、取り出された紙はポーチに押し込まれる。これにて契約成立である。
なので早速目的を告げるラグ。
「ネコ師範、あの魔人を倒してください!」
そしてその返答は……!
『んなことできるか!!!』
(ryトピック〜ネコ師範について〜
色原 我道と同じ顔を持つ、全身真っ黒の人面猫。あちらはトレードマークのニット帽で目が隠れているが、こちらはそもそも目がついていない。
我道のことを相棒と呼ぶが、関係性は不明。仕事のジャンルが違い、人前で一緒にいることも滅多にないようだが………
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