境目の物語
平たい地竜との戦い
調査に出たラグは里の門を出て、火山の本筋に足を踏み入れる。そして早速、痕跡を探して観察眼をふんだんに発揮した。
麓と比べると溶岩流の規模が大きく、岩肌もより黒さを増す。もちろん地質の差異はあるだろうが、いちばんの要因は火山灰である。
山道は積もりが少ないが、少し外れると目に見える厚さで積もっている。安易に踏み込めば灰が舞い散り、肺への危険性も生じる。焦土でも多少はあった問題が、ここではより色濃く表れていた。
しかしながら、奴の痕跡と思われるものは特に見つからない。生物がけもの道を走った跡は残っているが、槍戦闘に見られる穿ち跡はない。
そもそも、あれだけの破壊をなすほどの力を持った者が、小柄であるとは思えない。それを踏まえて見ると、大型生物の痕跡は一切なかった。
観察の結果をぶつくさ言いながら、少年のんびり歩みを進める。トロッコの使用を断った上で歩く道は、一種の観光気分も味わえる。
だが状況理解は欠かさない。一見緩んでそうな心の内では、いつどこから襲われてもいいように備えがついている。
その警戒心もあわせ持った上で、少年は印の地点を目指していった。
そこからしばらく経った今。
突然、少年が足を止めた。
何かを睨みつけている。捉えているのは、十数メートル先にあるゴツゴツとした岩肌。
常人からすれば、ただそれだけの物体。しかし観察眼を通して見ると、火山灰の積もりが少なく、ゆっくりと上下に揺れていた。まるで呼吸をしているように……
「先手必勝と行くか」
ボソッと呟き、剣の柄に手を掛ける。そして居合術の要領で斬撃波を放ち、そのまま接近戦に持ち込んだ。
風の刃が岩肌を撫でる。するとわずかに赤い水気をまとい、虚空へと消えていった。
ほとんど通りはしなかったが、痛みはあったのだろう。物体だったそれは四足で胴体を持ち上げ、その真の姿をさらけ出す。
外見は昨夜の地竜に酷似する。がそれよりも外皮が黒く、背中に薄く岩石をまとい、二回りほど大きい。また喉元には、黒い鱗が見られない。
「くっ、予想以上にでけぇ……っ!」
想定外のそれに圧倒され、思わず足が止まってしまう。
黄色い輝きを放つ双眸が、同じく予想外の外敵を捉える。そして大口を開けて、猛々しい咆哮を上げた。
だがしかし、そこには圧倒されない。むしろ、
「そこ狙えるッ!」
と声を上げ、即座に閃風斬を繰り出す。
狙いは開かれた口腔部。その刃は二又の舌を裂き、粘膜から血を吹き出させる。
もちろん地竜も黙ってはいない。威嚇の咆哮を無視された挙句、ほぼ全ての生物で弱点となる口を狙われたのだ。いきなり口にナイフを放り込まれたら、俺らでも怒るどころじゃ済まされない。
地竜はすぐ口を閉じ、目を血走らせる。
そして尻尾で地を鞭打ち、巨体を思わせぬスピードで飛び掛かる。
「ここはこうだ!」
振りかざされた左腕、その鉤爪に直撃しない程度に身を躱す。そしてすれ違い様に剣を添え、渾身の一振りをお見舞いし
ガキィィンッッッ!!!
「硬ったぁッ!?」
渾身の一撃、相対速度、硬そうな部分を避けた一振り。そこまでしても、剣は容易く弾かれてしまう。
スコーチフェンリル相手によく使っていた手段が、外皮にすら一切の効果がなかった。
「…っ!? こっちがッ!」
視界に捉えた、本命の攻撃。身体を回すことで遠心力が乗った尻尾が迫る。
反撃に力を削ぎすぎて、今からの回避では間に合わない!
「(こうするしかっ!)」
あえて全身で、受け止める。
張り付くような形で尾撃を受け、ぶっ飛ばされる。そして岩壁に叩きつけられ、背中に激痛が駆け巡った。
「(叩きつけられるのは予想外、でも骨は折れずに済ん)……?なんだ!?」
心の中で安堵の声をあげていたその時だ。
前方から膨大な熱量が発された。間違いなく地竜の予備動作、たぶん火炎を吐く気だ。
咄嗟に背後の岩壁を蹴り、離脱する。と同時にそのめり込んでいた場所に高熱量が浴びせられた。
「う、うっそだろッ!?」
視界に捉えたそれは、火炎の息なんてレベルではない。地竜の口から吐き出された極太の熱線が、俺のいた場所に照射されていた。
もちろんそれだけで終わりではない。地竜は首を動かし、熱線の軌道を大きく変える。
「危ないっ!」
薙ぎ払われた熱線を、間一髪で躱す。だがやはり触れるか触れないかの位置にあった肩を炙られ、痛みを伴う火傷を残す。
「大きく躱さなきゃダメなのか!?」
続く熱線を躱しながら叫ぶ。熱線は縦横無尽に薙ぎ払われ、なおかつ徐々に精度が上がっていく。
このまま避け続けてたら、勝ち目がないどころか負けが近づく。接近しなければ、いつか灼かれる。
「くそっ、やるしかねえ!」
俺は覚悟の声を張り上げ、地竜と向き合い走り出す。
熱線が襲う。衝盾を繰り出して勢いを殺し、閃風斬で盾ごと熱線を断ち切る。
「うおおぉぉッ!!!」
勇気を振り絞って飛び上がり、地竜の頭上で槍を構える。そして
「翡翠刺しッ!」
掛け声と共に急降下、勢いのまま突き刺す。
その穂先は、地竜の硬い外皮すらも容易く穿ち、赤き飛沫を撒き散らす。
だが致命傷には遥かに遠い。
「…っ!?熱っつァッ!!!」
乗り掛かった頭部が熱を帯びる。まさかこの状況で熱線を吐く気か!?
直撃を恐れた俺は、反射的に飛び退く。だがそれが仇となった。
地竜が吐き出したのは熱線ではなく、先入観で思い描いていた火炎そのもの。しかも俺の着地点に向けて吐いたことで、そこ一帯に火の海が広がる。
「ちくしょう!」
俺は真っ先に風の刃を放ち、自らの降り立つ場所の火をかき消す。だがそれが地竜の動きを見逃すことになった。
最初から狙いはそれだった。地竜は驚くほどの機敏さで迫り、着地する直前にあった俺の身体を掴み、叩きつける。
「くっ、こいつ……!」
仰向けの俺に地竜の右腕がのしかかり、槍の柄と右腕の鉤爪が迫り合う。下にいる俺の方が圧倒的に不利だが、潰そうとする力は意外と弱
「……いや、違う!」
地竜の口元が赤熱した。
こいつは俺を踏み潰そうとしてるのではない。腕で固定して動けなくしてから、至近距離で熱線を吐くつもりだ。
そうとわかれば、早急に脱さねばならない。幸いにも力は弱い、熱線に集中しているからこの程度しか使うことができないんだ。
なら瞬間的な力で跳ね除けるのが一番だ。
俺は少し力を抜いて、内に蓄える。腕の拘束力が弱まる、最低限の力しか乗せる気がない。
「……っ、この一瞬だ!」
覚悟を乗せて、俺は全身全霊の抵抗を見せようとした。確かにそうしたはずだった。
しかし次の瞬間、身体にかかっていた力がスッと抜けた。俺自身の力もそうだが、のしかかっていた腕の圧力まで、綺麗さっぱり抜けていた。
視界がモノクロームに染まる。この感覚は、迷いの森でカマキリに捕まった時の……
「……はっ、そうだった!」
状況を思い出す。視界に映る白黒の竜が、今まさに熱量の奔流を吐き出そうとしている。脱さねば命がないのだった。
気づいてからは早い。俺は瞬時に飛び退く。
その時、俺は違和感を感じていた。地竜の腕を通り抜けたような、物体を貫通したような……
だが正常に動けているから問題はない。飛び退き終えるちょうどその時、一瞬だけ視界が真っ暗に。そしてすぐに彩りが元に戻った。
地竜は抑え込むもののない腕に向けて、圧縮された熱線を吐く。
そして回避を終えた俺は、しっかり握り込んだ剣を構える。何故だかいつも以上の力が出せる気がする。
「閃裂斬ッ!!!」
大きく開かれた口めがけて、レッカにぶつけたそれを放つ。感覚をさらに確かなものにした風の刃は、気分の力を乗せてさらに荒れ狂い……
ついには、体内から地竜を切り刻んだ。
内臓を直接ズタズタにされて、地竜は熱線と入れ替わるように大量の血を吐き出す。そしてそのまま倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。
この戦いは、互いの大技が雌雄を決する結果となった。勝者である少年は、息を切らしてへたり込んだ。
その時、彼が気付くことはなかった。自身の青く澄んだ左の瞳が、白い輝きを持った黒に変わっていた事を……。
【おまけ】
きっちりと地竜を解体した少年は、回収されずに余った肉体を見て思いついた。
「こいつを溶岩に投げ込めば、溶岩獣ってやつを拝めないかな?」
恨みもなく、単純な好奇心で生肉の大きさを整える。そして投げやすくしたそれを、思い切って溶岩の池に投げ込んだ。
すると次の瞬間、巨大な溶岩の塊が池から飛び出した。レベル30、その塊の先頭部には、真珠のような白い球体があった。
それは投げ込んだ生肉を呑み込むと、再び溶岩の底に身を潜めた。残ったのはただの静寂。そして呆気にとられた少年だ。
「た、確かに飛び越えるのは危険……だな」
少年は少し震えながら、率直な感想を述べた。そして溶岩の川には近づかないよう心がけて、印の地点を目指すのだった。
(ryトピック〜火山の魔物たちその1〜
【平地竜】平均Lv.80
火山にのみ生息する、オオサンショウウオと爬虫類を足して割ったような見た目の地竜。黒っぽい外皮は成長と共に高度を増し、岩石を薄く纏う物好きもいる。
基本的には、擬態に気付かない獲物を喰らう。また全面的な戦いに移行すると、がっしりした肉体と太い尻尾を武器にする。
さらに対象を危険だと判断した場合、熱線を吐くことで迎撃する事もある。
【風(斬)属性】と【炎属性】にはめっぽう強いが、【土(打)属性】や【雷属性】には弱い。火が効かず土属性を主体とする竜人にとっては、それほど脅威ではないのかもしれない。
【溶岩獣】平均Lv.30
本来の名は【マグマスライム】。真珠のような綺麗な核に溶岩をまとった、核族の魔物である。
彼らは溶岩流の中に身を潜め、頭上を通りかかった者に襲いかかる。勢いは凄まじく、溶岩そのものをまとった攻防一体の身体を持つ。
が、核を壊されると即死する上に力もないので、竜人には返り討ちにされるのがお約束。まったく脅威判定を出されていない。
ただもちろん、生身の人間では最大の脅威となりうる。触れられる前に核を破壊する自信がないのなら、溶岩流には近寄らない方がいい。
麓と比べると溶岩流の規模が大きく、岩肌もより黒さを増す。もちろん地質の差異はあるだろうが、いちばんの要因は火山灰である。
山道は積もりが少ないが、少し外れると目に見える厚さで積もっている。安易に踏み込めば灰が舞い散り、肺への危険性も生じる。焦土でも多少はあった問題が、ここではより色濃く表れていた。
しかしながら、奴の痕跡と思われるものは特に見つからない。生物がけもの道を走った跡は残っているが、槍戦闘に見られる穿ち跡はない。
そもそも、あれだけの破壊をなすほどの力を持った者が、小柄であるとは思えない。それを踏まえて見ると、大型生物の痕跡は一切なかった。
観察の結果をぶつくさ言いながら、少年のんびり歩みを進める。トロッコの使用を断った上で歩く道は、一種の観光気分も味わえる。
だが状況理解は欠かさない。一見緩んでそうな心の内では、いつどこから襲われてもいいように備えがついている。
その警戒心もあわせ持った上で、少年は印の地点を目指していった。
そこからしばらく経った今。
突然、少年が足を止めた。
何かを睨みつけている。捉えているのは、十数メートル先にあるゴツゴツとした岩肌。
常人からすれば、ただそれだけの物体。しかし観察眼を通して見ると、火山灰の積もりが少なく、ゆっくりと上下に揺れていた。まるで呼吸をしているように……
「先手必勝と行くか」
ボソッと呟き、剣の柄に手を掛ける。そして居合術の要領で斬撃波を放ち、そのまま接近戦に持ち込んだ。
風の刃が岩肌を撫でる。するとわずかに赤い水気をまとい、虚空へと消えていった。
ほとんど通りはしなかったが、痛みはあったのだろう。物体だったそれは四足で胴体を持ち上げ、その真の姿をさらけ出す。
外見は昨夜の地竜に酷似する。がそれよりも外皮が黒く、背中に薄く岩石をまとい、二回りほど大きい。また喉元には、黒い鱗が見られない。
「くっ、予想以上にでけぇ……っ!」
想定外のそれに圧倒され、思わず足が止まってしまう。
黄色い輝きを放つ双眸が、同じく予想外の外敵を捉える。そして大口を開けて、猛々しい咆哮を上げた。
だがしかし、そこには圧倒されない。むしろ、
「そこ狙えるッ!」
と声を上げ、即座に閃風斬を繰り出す。
狙いは開かれた口腔部。その刃は二又の舌を裂き、粘膜から血を吹き出させる。
もちろん地竜も黙ってはいない。威嚇の咆哮を無視された挙句、ほぼ全ての生物で弱点となる口を狙われたのだ。いきなり口にナイフを放り込まれたら、俺らでも怒るどころじゃ済まされない。
地竜はすぐ口を閉じ、目を血走らせる。
そして尻尾で地を鞭打ち、巨体を思わせぬスピードで飛び掛かる。
「ここはこうだ!」
振りかざされた左腕、その鉤爪に直撃しない程度に身を躱す。そしてすれ違い様に剣を添え、渾身の一振りをお見舞いし
ガキィィンッッッ!!!
「硬ったぁッ!?」
渾身の一撃、相対速度、硬そうな部分を避けた一振り。そこまでしても、剣は容易く弾かれてしまう。
スコーチフェンリル相手によく使っていた手段が、外皮にすら一切の効果がなかった。
「…っ!? こっちがッ!」
視界に捉えた、本命の攻撃。身体を回すことで遠心力が乗った尻尾が迫る。
反撃に力を削ぎすぎて、今からの回避では間に合わない!
「(こうするしかっ!)」
あえて全身で、受け止める。
張り付くような形で尾撃を受け、ぶっ飛ばされる。そして岩壁に叩きつけられ、背中に激痛が駆け巡った。
「(叩きつけられるのは予想外、でも骨は折れずに済ん)……?なんだ!?」
心の中で安堵の声をあげていたその時だ。
前方から膨大な熱量が発された。間違いなく地竜の予備動作、たぶん火炎を吐く気だ。
咄嗟に背後の岩壁を蹴り、離脱する。と同時にそのめり込んでいた場所に高熱量が浴びせられた。
「う、うっそだろッ!?」
視界に捉えたそれは、火炎の息なんてレベルではない。地竜の口から吐き出された極太の熱線が、俺のいた場所に照射されていた。
もちろんそれだけで終わりではない。地竜は首を動かし、熱線の軌道を大きく変える。
「危ないっ!」
薙ぎ払われた熱線を、間一髪で躱す。だがやはり触れるか触れないかの位置にあった肩を炙られ、痛みを伴う火傷を残す。
「大きく躱さなきゃダメなのか!?」
続く熱線を躱しながら叫ぶ。熱線は縦横無尽に薙ぎ払われ、なおかつ徐々に精度が上がっていく。
このまま避け続けてたら、勝ち目がないどころか負けが近づく。接近しなければ、いつか灼かれる。
「くそっ、やるしかねえ!」
俺は覚悟の声を張り上げ、地竜と向き合い走り出す。
熱線が襲う。衝盾を繰り出して勢いを殺し、閃風斬で盾ごと熱線を断ち切る。
「うおおぉぉッ!!!」
勇気を振り絞って飛び上がり、地竜の頭上で槍を構える。そして
「翡翠刺しッ!」
掛け声と共に急降下、勢いのまま突き刺す。
その穂先は、地竜の硬い外皮すらも容易く穿ち、赤き飛沫を撒き散らす。
だが致命傷には遥かに遠い。
「…っ!?熱っつァッ!!!」
乗り掛かった頭部が熱を帯びる。まさかこの状況で熱線を吐く気か!?
直撃を恐れた俺は、反射的に飛び退く。だがそれが仇となった。
地竜が吐き出したのは熱線ではなく、先入観で思い描いていた火炎そのもの。しかも俺の着地点に向けて吐いたことで、そこ一帯に火の海が広がる。
「ちくしょう!」
俺は真っ先に風の刃を放ち、自らの降り立つ場所の火をかき消す。だがそれが地竜の動きを見逃すことになった。
最初から狙いはそれだった。地竜は驚くほどの機敏さで迫り、着地する直前にあった俺の身体を掴み、叩きつける。
「くっ、こいつ……!」
仰向けの俺に地竜の右腕がのしかかり、槍の柄と右腕の鉤爪が迫り合う。下にいる俺の方が圧倒的に不利だが、潰そうとする力は意外と弱
「……いや、違う!」
地竜の口元が赤熱した。
こいつは俺を踏み潰そうとしてるのではない。腕で固定して動けなくしてから、至近距離で熱線を吐くつもりだ。
そうとわかれば、早急に脱さねばならない。幸いにも力は弱い、熱線に集中しているからこの程度しか使うことができないんだ。
なら瞬間的な力で跳ね除けるのが一番だ。
俺は少し力を抜いて、内に蓄える。腕の拘束力が弱まる、最低限の力しか乗せる気がない。
「……っ、この一瞬だ!」
覚悟を乗せて、俺は全身全霊の抵抗を見せようとした。確かにそうしたはずだった。
しかし次の瞬間、身体にかかっていた力がスッと抜けた。俺自身の力もそうだが、のしかかっていた腕の圧力まで、綺麗さっぱり抜けていた。
視界がモノクロームに染まる。この感覚は、迷いの森でカマキリに捕まった時の……
「……はっ、そうだった!」
状況を思い出す。視界に映る白黒の竜が、今まさに熱量の奔流を吐き出そうとしている。脱さねば命がないのだった。
気づいてからは早い。俺は瞬時に飛び退く。
その時、俺は違和感を感じていた。地竜の腕を通り抜けたような、物体を貫通したような……
だが正常に動けているから問題はない。飛び退き終えるちょうどその時、一瞬だけ視界が真っ暗に。そしてすぐに彩りが元に戻った。
地竜は抑え込むもののない腕に向けて、圧縮された熱線を吐く。
そして回避を終えた俺は、しっかり握り込んだ剣を構える。何故だかいつも以上の力が出せる気がする。
「閃裂斬ッ!!!」
大きく開かれた口めがけて、レッカにぶつけたそれを放つ。感覚をさらに確かなものにした風の刃は、気分の力を乗せてさらに荒れ狂い……
ついには、体内から地竜を切り刻んだ。
内臓を直接ズタズタにされて、地竜は熱線と入れ替わるように大量の血を吐き出す。そしてそのまま倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。
この戦いは、互いの大技が雌雄を決する結果となった。勝者である少年は、息を切らしてへたり込んだ。
その時、彼が気付くことはなかった。自身の青く澄んだ左の瞳が、白い輝きを持った黒に変わっていた事を……。
【おまけ】
きっちりと地竜を解体した少年は、回収されずに余った肉体を見て思いついた。
「こいつを溶岩に投げ込めば、溶岩獣ってやつを拝めないかな?」
恨みもなく、単純な好奇心で生肉の大きさを整える。そして投げやすくしたそれを、思い切って溶岩の池に投げ込んだ。
すると次の瞬間、巨大な溶岩の塊が池から飛び出した。レベル30、その塊の先頭部には、真珠のような白い球体があった。
それは投げ込んだ生肉を呑み込むと、再び溶岩の底に身を潜めた。残ったのはただの静寂。そして呆気にとられた少年だ。
「た、確かに飛び越えるのは危険……だな」
少年は少し震えながら、率直な感想を述べた。そして溶岩の川には近づかないよう心がけて、印の地点を目指すのだった。
(ryトピック〜火山の魔物たちその1〜
【平地竜】平均Lv.80
火山にのみ生息する、オオサンショウウオと爬虫類を足して割ったような見た目の地竜。黒っぽい外皮は成長と共に高度を増し、岩石を薄く纏う物好きもいる。
基本的には、擬態に気付かない獲物を喰らう。また全面的な戦いに移行すると、がっしりした肉体と太い尻尾を武器にする。
さらに対象を危険だと判断した場合、熱線を吐くことで迎撃する事もある。
【風(斬)属性】と【炎属性】にはめっぽう強いが、【土(打)属性】や【雷属性】には弱い。火が効かず土属性を主体とする竜人にとっては、それほど脅威ではないのかもしれない。
【溶岩獣】平均Lv.30
本来の名は【マグマスライム】。真珠のような綺麗な核に溶岩をまとった、核族の魔物である。
彼らは溶岩流の中に身を潜め、頭上を通りかかった者に襲いかかる。勢いは凄まじく、溶岩そのものをまとった攻防一体の身体を持つ。
が、核を壊されると即死する上に力もないので、竜人には返り討ちにされるのがお約束。まったく脅威判定を出されていない。
ただもちろん、生身の人間では最大の脅威となりうる。触れられる前に核を破壊する自信がないのなら、溶岩流には近寄らない方がいい。
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