境目の物語
2人からの試験
会議が終わり、数人のゴブリン達がこの場を後にしたあたりで俺のメンタルもようやく回復できた。もうここに残る理由も無いのだが、いかんせん話を聞けていなかったので何をすればいいのかがわからない。とりあえずブレイブの家を目標地点に定めて席を立った。
だがそれを成そうと扉の方を見た時、例の2人の存在に気づいてしまった。
「おい我らの弟子よ、待たせ過ぎだぞ!」
「原因のあんた達がそれを言うか?」
「弟子の都合など知った事か!」
酷い言われようだな。こっちの言い分なんて聞いちゃいねえ。
俺が心の中でぶつぶつ言っていると、不意に右腕を掴まれた。
「いきなり何だ?」
「何だ?じゃない!」
「すぐに修行に行って、弟子に我らの妙技をマスターさせるのだ!」
「すぐに行くぞ!」
「ちょっと!?」
今度は掴まれた腕を引っ張られる。もちろん俺は抵抗する。だがあろう事か、今の俺の腕はこのか細いゴブリンの片腕に力負けしていたのだ。
どれだけ抗っても無駄だということを気付かされた俺は敢え無く抵抗を止めて、そのままこいつらに連れて行かれたのだった。
……あれより半時間、俺は何の説明もなしにラプターを繰らさせられ、何度も振り落とされそうになりながら、命からがら目的地に辿り着いた。そこはさっきまでいた黒さが印象的な焦土とは真逆で、緑少なめな林のような場所だった。
ようやくラプターが止まったのを確認して恐る恐る背から降りると、やはり2人が立ちはだかっていた。
「まずは弟子の強さを見るぞ!」
「弟子よ、あれを見ろ!」
片方が向こうを指差す。言われた通りその方向を見てみると、どこにでもいるような野鳥の姿があった。というか、あれってこの前朝食として獲った野鳥と同じ種じゃないか。
「今からあの鳥を五羽獲ってきてもらう!」
「なるべく早く獲って、我らに力を見せてみろ!」
「ヘ〜い了解」
俺はこれまでになくゆるい返事を返す。そしてすぐに小石を拾い上げ、間髪入れずにそれらを投げつける。もちろん小石は直撃したのだが、少し腕が上がったらしく野鳥を気絶させることに成功していた。ただ、起きられても困るのできっちりトドメは刺しておいた。
野鳥の絶命を確認した俺はすぐに他の個体を探す。とは言っても、視界の片隅に飛び立つ野鳥達の姿が映っていたので狙う奴を決める程度のものだったが。
ささっと付近の五羽に狙いを定めて小石を拾い、投げつける。今度は休む間も入れずに次を拾い上げ、他の四羽にも連続で投げつける。
やはり動いている獲物に石を当てるのは難しいものであるが、投げるたびに精度を増す石は偏差撃ちの要領を得ていくものだ。1、2つ目は見事に全弾外れたが、3つ目から命中し、5つ目に関しては頭部に命中して即死させることにも成功していた。
さて、あとは一羽だけだ。俺はふと思いついたように頷いて、石を拾う。ただ今回は一つだけだ。
もちろん舐めプではない。確実に当てる自信があったからだ。
俺は今までと違って大振りな動きで投げる構えを取り、そして力を加減する事なく全力でぶん投げた。
その石は鋭く、なおかつぶれる事なく一直線に飛んで行く。そして、すでに最大速度になって飛び去ろうとする野鳥の胴部に直撃し、今の視力でギリギリ目視できる程の風穴を開けていった。
……これで目標達成だな。
俺は最後の一羽が力なく墜落したのを確認すると、あいつらの方へ振り返る。だがどうした事か、2人とも機嫌を悪そうにしこちらを睨みつけている。どうしたのだろうか?
俺は少し考える。
……あ、分かった。
そういえばあいつらの命令は、野鳥を獲ってくる事だった。つまりちゃんと回収してこいって事か。
それを理解した俺はすぐに足元に転がっている一羽の足を掴んでを拾い上げ、他の四羽の回収に走った。
俺は最後の一羽を拾い上げると、あいつらの元へと戻った。そこへの到着と同時に、2人から終了のコールが流れる。
「終了!試験達成ご苦労だったぜ」
「タイムは31秒! 歴代二位だ!」
嘘!?これで二位なのか。というかこれ試験だったのか。知らされてなかったから少し驚いた。
「じゃあ一位は誰なんだ?」
「もちろん我らの隊長だ。記録は8秒だったぜ!」
8秒だって!?一体どうやればそんな記録が……ていうか隊長って誰のことだろうか。
「弟子よ、気に病むことはないぞ!」
「何故なら歴代三位の記録は16分1秒だからな!」
「あっ、そうなのか…」
俺のそれで二位なものだから、他もそれに近い記録なのかと思ってた。というか、思ったのと真逆で離れているのか。
「まあ何はともあれ合格だ!」
「弟子の投石は奇抜で面白かったぞ!」
「あれだけの力量があれば、我らの妙技も十分に習得可能であろう!」
「本当か!?」
「ああ間違いないとも!」
それは楽しみだ。妙技とやらが何かはわからないが、俺はそれにワクワクしていた。
「では弟子よ、その鳥で飯にするぞ!」
「了解!焼けばいいよな」
「ああそうだ。弟子の焼く肉を楽しみにしているぞ!」
そう言われた俺は少し嬉しくなった。そのためやる気を出して鶏肉を捌き、こんがりと焼いて2人に振る舞った。
なお、捌く際に解体方法についてしつこく言われたのはまた別の話である。
(ryトピック〜【投擲技】について〜
これは現在ラグレスが無意識のうちに用いているスキルの一つであり、ものを投げれば投げるほど習熟させる事ができる。
効果に関しては名前の通り投擲の性能を向上させるものとなっている。
だがそれを成そうと扉の方を見た時、例の2人の存在に気づいてしまった。
「おい我らの弟子よ、待たせ過ぎだぞ!」
「原因のあんた達がそれを言うか?」
「弟子の都合など知った事か!」
酷い言われようだな。こっちの言い分なんて聞いちゃいねえ。
俺が心の中でぶつぶつ言っていると、不意に右腕を掴まれた。
「いきなり何だ?」
「何だ?じゃない!」
「すぐに修行に行って、弟子に我らの妙技をマスターさせるのだ!」
「すぐに行くぞ!」
「ちょっと!?」
今度は掴まれた腕を引っ張られる。もちろん俺は抵抗する。だがあろう事か、今の俺の腕はこのか細いゴブリンの片腕に力負けしていたのだ。
どれだけ抗っても無駄だということを気付かされた俺は敢え無く抵抗を止めて、そのままこいつらに連れて行かれたのだった。
……あれより半時間、俺は何の説明もなしにラプターを繰らさせられ、何度も振り落とされそうになりながら、命からがら目的地に辿り着いた。そこはさっきまでいた黒さが印象的な焦土とは真逆で、緑少なめな林のような場所だった。
ようやくラプターが止まったのを確認して恐る恐る背から降りると、やはり2人が立ちはだかっていた。
「まずは弟子の強さを見るぞ!」
「弟子よ、あれを見ろ!」
片方が向こうを指差す。言われた通りその方向を見てみると、どこにでもいるような野鳥の姿があった。というか、あれってこの前朝食として獲った野鳥と同じ種じゃないか。
「今からあの鳥を五羽獲ってきてもらう!」
「なるべく早く獲って、我らに力を見せてみろ!」
「ヘ〜い了解」
俺はこれまでになくゆるい返事を返す。そしてすぐに小石を拾い上げ、間髪入れずにそれらを投げつける。もちろん小石は直撃したのだが、少し腕が上がったらしく野鳥を気絶させることに成功していた。ただ、起きられても困るのできっちりトドメは刺しておいた。
野鳥の絶命を確認した俺はすぐに他の個体を探す。とは言っても、視界の片隅に飛び立つ野鳥達の姿が映っていたので狙う奴を決める程度のものだったが。
ささっと付近の五羽に狙いを定めて小石を拾い、投げつける。今度は休む間も入れずに次を拾い上げ、他の四羽にも連続で投げつける。
やはり動いている獲物に石を当てるのは難しいものであるが、投げるたびに精度を増す石は偏差撃ちの要領を得ていくものだ。1、2つ目は見事に全弾外れたが、3つ目から命中し、5つ目に関しては頭部に命中して即死させることにも成功していた。
さて、あとは一羽だけだ。俺はふと思いついたように頷いて、石を拾う。ただ今回は一つだけだ。
もちろん舐めプではない。確実に当てる自信があったからだ。
俺は今までと違って大振りな動きで投げる構えを取り、そして力を加減する事なく全力でぶん投げた。
その石は鋭く、なおかつぶれる事なく一直線に飛んで行く。そして、すでに最大速度になって飛び去ろうとする野鳥の胴部に直撃し、今の視力でギリギリ目視できる程の風穴を開けていった。
……これで目標達成だな。
俺は最後の一羽が力なく墜落したのを確認すると、あいつらの方へ振り返る。だがどうした事か、2人とも機嫌を悪そうにしこちらを睨みつけている。どうしたのだろうか?
俺は少し考える。
……あ、分かった。
そういえばあいつらの命令は、野鳥を獲ってくる事だった。つまりちゃんと回収してこいって事か。
それを理解した俺はすぐに足元に転がっている一羽の足を掴んでを拾い上げ、他の四羽の回収に走った。
俺は最後の一羽を拾い上げると、あいつらの元へと戻った。そこへの到着と同時に、2人から終了のコールが流れる。
「終了!試験達成ご苦労だったぜ」
「タイムは31秒! 歴代二位だ!」
嘘!?これで二位なのか。というかこれ試験だったのか。知らされてなかったから少し驚いた。
「じゃあ一位は誰なんだ?」
「もちろん我らの隊長だ。記録は8秒だったぜ!」
8秒だって!?一体どうやればそんな記録が……ていうか隊長って誰のことだろうか。
「弟子よ、気に病むことはないぞ!」
「何故なら歴代三位の記録は16分1秒だからな!」
「あっ、そうなのか…」
俺のそれで二位なものだから、他もそれに近い記録なのかと思ってた。というか、思ったのと真逆で離れているのか。
「まあ何はともあれ合格だ!」
「弟子の投石は奇抜で面白かったぞ!」
「あれだけの力量があれば、我らの妙技も十分に習得可能であろう!」
「本当か!?」
「ああ間違いないとも!」
それは楽しみだ。妙技とやらが何かはわからないが、俺はそれにワクワクしていた。
「では弟子よ、その鳥で飯にするぞ!」
「了解!焼けばいいよな」
「ああそうだ。弟子の焼く肉を楽しみにしているぞ!」
そう言われた俺は少し嬉しくなった。そのためやる気を出して鶏肉を捌き、こんがりと焼いて2人に振る舞った。
なお、捌く際に解体方法についてしつこく言われたのはまた別の話である。
(ryトピック〜【投擲技】について〜
これは現在ラグレスが無意識のうちに用いているスキルの一つであり、ものを投げれば投げるほど習熟させる事ができる。
効果に関しては名前の通り投擲の性能を向上させるものとなっている。
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