境目の物語

(ry

旧友との再会


「…?」

俺の視界が白く染まる。ただこれは…光だろうか?眩しさを感じる。


「…んんんっ、」

 そんな感覚に包まれて俺は目を覚ました。いつの間に寝ていたのだろうか。まだぼんやりしている視界の中、周囲を見渡してみる。

 どうやらここは石造りの部屋のようで、机やベッドなど一通りの家具が揃っている。全て石製だが…
 俺を照らす光は窓から差し込んだもののようで、そこから外の景色を見る事もできる。澄み切った青に夕焼けの色が混ざったような、不思議な光景だ。

 こうして周りを見渡してようやく、足元の小さな人影に気づいた。
 見たところ背丈40cmほどの子供のゴブリンだが、腰を抜かして目を丸くしていた。


•••••••••••••••本当ニ…起キテクレタッ!?

 彼は少し怯えた様子でそう言った。とても不安そうに見えた。なので俺は、大丈夫である事を伝える。


「ああ、大丈…
••••••••••もう大丈夫だ。

 途中で魔物の言語に切り替えてそう言うと、彼は目をうるうるさせて、俺の足に抱きついた。そして、小さな声で泣き始める。

どういう状況なんだ?

 ちょうどその時、ドアの無い扉から俵を抱えた別のゴブリンが入ってきた。逆光でこちらからは見にくいが、大人サイズであることは分かる。


••••••••••••どうかしたか?スタネッ……
……ッ!!」

 彼の口が止まる。抱えていた俵がするりと抜け落ちて、ゆっくりと部屋を転がる。

 俺が何事かと思った瞬間、なんと彼が飛びついてきた。思い切り押し倒されただけでなく、半ば強制的に持ち上げられた足にしがみついていた子供のゴブリンが振り落とされ、俺の顔面に落下してきた。


••••••••••••••••••••••••3日も待たせるなんて酷いじゃないかラグラグ!

「え?••••••••ああ、悪かった
••••••••••••••••••とりあえず助けてくれてありがとな。

 なかなかにひどい体勢であったが、俺たちはこのまま会話を続けていた。


…30分後…


「あ、そういえばシフト使うの忘れてた。
便利スキル【言語シフト】発動!」

 俺はかなり遅れ目でスキルを発動させた。このスキルにはメインの言語を切り替える効果がある。普段人としか話してなかったから忘れてた。


「結構なミスをしてたもんだなラグラグ」

「今はラグだよ、旧友ブレイブくん」

「そうだったな、はっはっは!」

 そう、この会話で思い出した事だが、彼は12年前に知り合っていた友達だったのだ。ゴブリンの年齢的にとっくに大人になってしまったようだが、心はあの時と全く変わっていない。
 それを知った俺は内心かなりホッとしていた。


「っとそうだ!
ラグが起きたら会議をする約束だったのを思い出した。来てくれ!」

 彼は扉の前に立つと俺に呼びかけた。俺はすぐに返事をして、そのあとを追って外に出たのだった。




(ryトピック〜この地について〜

 黒ゴブリンの集落であり、ラグが初めて訪れた町でもある。石材建築で有名であり、100パーセント石材の建築技術に注目が集まる事もある。

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