境目の物語

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第1章【出始めは蛙】

「……んんー、もう朝か。」

 俺は、日の出の光に照らされて目を覚ました。テントも寝袋もなく、そのまま草地に寝転がってたから少し冷えたけど、それ以外は別に悪くなかったと思う。

 俺は伸びをしながら起き上がり、周りを見渡して獲物朝飯を探す。辺り一面の殺風景な草原が映る中、目に入ったは4羽の野鳥。


「やっぱあれを獲るしかないのか〜」

 と、俺は軽くため息をつきつつ手頃な石をいくつか拾う。そして、それらを思い切り投げつける。

 結果、バラバラに飛んでいった石の一つが1羽に命中。他3羽には逃げられてしまうが、仕留めた獲物を確実に抑える。
 俺はほっと息をつく。そして、昨晩この発想に至るまでに2時間もかかったのが馬鹿らしくなった。うん、忘れよう。今はこの肉を食うことが先決だ。

 俺は舌舐めずりをしてからポーチの中を漁り、短剣を取り出した。そして、野鳥の身を雑〜に捌く。素人の俺だと3割も取り出せなかったが、そのわずかな肉を木の枝に突き刺す。
 次に、メンタルツールの【炎石】を起動する。それが淡く光るのを確認してから焚き火に投げ込む。数秒後、それはガスコンロの強火くらいの炎を発生させる。俺はその火で肉を炙り、満遍なくなく焼いた。




 俺はこんがり焼けた肉を食べながら、昨日はできなかった情報整理を始める。


「目的地については多分【魔王城】だな。ギルドで噂になってたから、なんとなく位置はわかる」

「あ、そういえば、ギルドに何も言わずに旅に出ちゃったな。チラッと見た限りだと復興作業中だったからしばらくは問題なさそうだけど、いずれ戻らないとな。心配してるだろうし」


「旅の問題に関しては、今のところ物資不足と武器のリーチに馴染めていないってことぐらいか。後者は元の半分ぐらいになったのが原因だし、慣れるだけで済むけど、前者は店を見つけなきゃな〜。炎石もあと3回で切れちゃうし」

 数自体は少なくても、なるべく早く解決したい課題ばかりか。……っと、頭の中でいろいろなことを巡らせてたら、いつのまにか肉を食い終わっていた。


「これ以上ここに留まる意味もないし、そろそろ出発するか」

 と、独り言を言いながら焚き火の火を消し、野鳥の残骸を遠くに放り投げる。
 後にしても大丈夫そうなことを確認すると、俺は形のない旅の道すじへと戻った。



(ryトピック〜今いる世界区分について〜

 正確な名は【勇者の世界】。〔勇者の呪い〕を賜った人種【神呪族しんじゅぞく】が縛りつけられている世界区分である。
 国を背景に勇者を支持する王国側と、ギルドを中心に勇者になることを否定する反勇者ギルド側の二つに分かれており、今もなお険悪な関係が続いている。

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