マスカレイド@異世界現代群像のパラグラフ
35.呪い
「おらっ!」 ブレイズはブレードで攻め、杏香はガウスガドリングで応戦し、カノンは二人のWG―Σの操縦を補助して七つ目の攻撃から身を守る。三人共、WG―Σの操縦に気を抜けない状態が続いていた。
「……間に合わない」 カノンが言った直後、三人のコックピットに衝撃が走った。「うおっ!」「きゃあっ!」「うあ……」 三者三様の悲鳴がWG―Σの中に響いた。七つ目のパンチがWG―Σの胸を直撃したのだ。「くそっ!」 ブレイズが毒づく。「損傷は……」 カノンは思わず損傷度表示モニターを見たが、先に杏香が口を開いた。「軽微よ! このくらいの打撃、WG―Σの装甲ならどうってことないわ。ガウスガドリングは問題無く使えそうよ」
「だが、こいつ……段々動きが良くなってねえか?」「ブレイズも感じた? ……うあっ!」 コックピットに衝撃が走った。カノンがシールドを使い、七つ目の回し蹴りを間一髪のところで防いだのだ。「……ちっ、やってくれるぜ!」 ブレイズが言った直後、モニターに水色と黄色の二色の光が映り、七つ目の側面が爆発した。縦横無尽の魔力砲が命中したのだ。続いて、魔踊剣舞と、魔具を両手に装備したナイトウォーカーが、颯爽と七つ目に急接近し、斬り付けた。
「やった! 効いてる!」 サフィーが叫んだ。「気を抜くな。今のは単に、相手のガワが壊れただけだ!」「俺のはガワすら壊せなかったのかー……」 ブリーツはがっかりした。「通常の武器では太刀打ちできん。ブリーツは魔法を使え!」「了解! ファイアーボールだ! 灼熱の火球よ、我が眼前の者を焼き尽くせ……ファイアーボール!」 ブリーツの魔踊剣舞は、ファイアーボールを放った。そして、それは七つ目に命中すると、覆っていた瓦礫の一部が崩れ落ちた。「おおっ! 魔法はいけるぞ!」 フルキャストであれば、それなりに効果はあった。補助目的ならば十分な威力だろう。
「ブリーツ! 後ろ!」「え? うわっ!」 魔踊剣舞が後ろを向くと、今まさに、巨大な瓦礫が魔踊剣舞に迫っているところだった。ブリーツはとっさに魔踊剣舞を横に跳躍させた。「あっぶねー!」 間一髪、魔踊剣舞を回避させることができた。魔踊剣舞の運動性が無ければ直撃していただろう。「どうなってんだ杏香!」「私に言わないでよ!」 ブレイズと杏香が言った。その二人だけではない。その場に居る全員が、その不可解な現象に戸惑っている。「七つ目に集まってるみたいね」「第二変身的なアレかい?」 杏香とブリーツが話すと、サフィーはナイトウォーカーのブースターの出力を上げ、七つ目へと突っ込んだ。「そんなこと、させない!」 捨て身覚悟で剣を振るうサフィー。そして、マクスンもまた、縦横無尽の魔力砲を引っ切り無しに打っている。が、七つ目は、それよりも早く、周りのナイトウォーカーの残骸や岩塊、そして、もはや遠くに見えるティホーク砦の瓦礫をも吸収している。
「何だか分かんねえが、ヤバそうだぜ。俺らも攻撃だ!」 ブレイズが言うと、杏香、カノンもWG―Σのに搭載されている、稼働し得る限りの武器を七つ目へと叩き込んだ。「……足りない」 カノンが言った。七つ目の再生速度は、以前とは比べ物にならないほど増えている。「不幸中の幸いなのは、相手が足を止めててくれるってことかしら」「攻撃もしてこないわ。この吸い込まれてる瓦礫も含めるんだとすれば、話は違うけど」 杏香とサフィーが言った。七つ目は動かず、吸い込まれている物は常に七つ目を目指して進んでいる。防御面に気を取られることが比較的少なくなったのは、一同にとって喜ばしいことだ。
「てかさ、吸い過ぎじゃね?」 ブリーツがボソリと言った。は、もはや人型を留めておらず、巨大で不秩序な瓦礫の塊になっていた。「なんだ、戦う気がねえのか?」「吸収し過ぎで動けなくなったの?」 ブレイズとサフィーが拍子抜けしている。「要塞化か?」「何か知っているの?」 マクスンに杏香が聞く。「いや……呪いの類だということは、見当がつくが……」「そうよね……」 副師団長ということは、何か情報を掴んでいるかと思って聞いてみた杏香だが、どうやら何も知らないらしい。杏香は更に思考を巡らせる。
「何をしているのかしら。守りを固めている?」「だったら、もう放っておけばいいのか?」 ブレイズの短絡的な答えに、少々イラつきながら、杏香は考えを話す。「少なくとも、準備する時間はとれたのかもしれないわね。一旦後退して、こいつの動きを見張りつつ……」 ブリーツの問いに杏香が答えていた時、マクスンは七つ目に僅かな異変を感じた。
「油断するな!」 マクスンが叫ぶのとほぼ同時に、炸裂音が響いた。巨大な鉄の風船が破裂したかのような、激しい炸裂音が響き渡る。「何だ!?」「……シールド!」 ブレイズが混乱していると、カノンがそう言い、WG―Σのシールドを前に突き出した。 突如として七つ目が弾け、呪いを帯びて赤黒く染まった瓦礫が四方八方に飛び散って、その一部が凄いスピードでWG―Σを襲っているのだ。 ブリーツ達三人のリーゼと違って、WG―Σの体は大きい。いくら機動力があるとはいえ、この数の瓦礫を避けることはできない。「……防ぎきれない」 カノンはそう言い、魔力フィールドを展開しようとした。「あたしがガウスガドリングで撃ち落とすわ。ブレイズ、あんたも!」「お、おう」 杏香はそう言って、シールドの横からガウスガドリングを、迫り来る瓦礫へと打ち付けた。ブレイズもWG―Σの右手に握られたブレードを伸縮させ、しならせながら、器用に瓦礫を切り払っている。
「これなら魔力フィールドを使わなくても何とか……」 杏香が言いかけた時、メインモニターが暗転し、コックピットに激しい衝撃が走った。「ぐおお!」「うわああっ!」「あんっ!」 ブレイズ、杏香、カノンが悲鳴をあげる。「何が起こった!?」「サブモニターを!」「掴まれてる……」 杏香の声で、ブレイズとカノンはモニターを見た。そこには元の体に戻った七つ目の手の平が間近に映し出されている。七つ目は飛び交う瓦礫に紛れてWG―Σに急接近し、右手でWG―Σの頭部を掴み、左手で肩を掴んで思いきり体重をかけ、WG―Σを押し倒したのだ。
「くそっ! ガウスガドリングだ!」「無駄」 ブレイズがガウスガドリングを発射したが、カノンの言う通り、良くて七つ目の肩の上あたりを掠るだけだった。「死角を取られたの? こいつ、学習してる!?」 杏香はそう叫びながらも、WG―Σの手足を動かし続けた。押し戻そうとしたり、踵部のブースターを吹かしたりして脱出を試みたが、七つ目の力は予想以上に強い。「頭部メインモニター損傷」「何て馬鹿力だ!」 カノンに続き、ブレイズが言った。頭部メインモニターは七つ目の手に握りつぶされたのだろうことが、モニター出力画面の一部が暗転したことで分かる。
「あ……! 二番コックピットのハッチ、開いてる」「なっ……杏香!? 大丈夫か杏香!」 杏香の姿が無い。カノンとブレイズは戦慄した。
「……間に合わない」 カノンが言った直後、三人のコックピットに衝撃が走った。「うおっ!」「きゃあっ!」「うあ……」 三者三様の悲鳴がWG―Σの中に響いた。七つ目のパンチがWG―Σの胸を直撃したのだ。「くそっ!」 ブレイズが毒づく。「損傷は……」 カノンは思わず損傷度表示モニターを見たが、先に杏香が口を開いた。「軽微よ! このくらいの打撃、WG―Σの装甲ならどうってことないわ。ガウスガドリングは問題無く使えそうよ」
「だが、こいつ……段々動きが良くなってねえか?」「ブレイズも感じた? ……うあっ!」 コックピットに衝撃が走った。カノンがシールドを使い、七つ目の回し蹴りを間一髪のところで防いだのだ。「……ちっ、やってくれるぜ!」 ブレイズが言った直後、モニターに水色と黄色の二色の光が映り、七つ目の側面が爆発した。縦横無尽の魔力砲が命中したのだ。続いて、魔踊剣舞と、魔具を両手に装備したナイトウォーカーが、颯爽と七つ目に急接近し、斬り付けた。
「やった! 効いてる!」 サフィーが叫んだ。「気を抜くな。今のは単に、相手のガワが壊れただけだ!」「俺のはガワすら壊せなかったのかー……」 ブリーツはがっかりした。「通常の武器では太刀打ちできん。ブリーツは魔法を使え!」「了解! ファイアーボールだ! 灼熱の火球よ、我が眼前の者を焼き尽くせ……ファイアーボール!」 ブリーツの魔踊剣舞は、ファイアーボールを放った。そして、それは七つ目に命中すると、覆っていた瓦礫の一部が崩れ落ちた。「おおっ! 魔法はいけるぞ!」 フルキャストであれば、それなりに効果はあった。補助目的ならば十分な威力だろう。
「ブリーツ! 後ろ!」「え? うわっ!」 魔踊剣舞が後ろを向くと、今まさに、巨大な瓦礫が魔踊剣舞に迫っているところだった。ブリーツはとっさに魔踊剣舞を横に跳躍させた。「あっぶねー!」 間一髪、魔踊剣舞を回避させることができた。魔踊剣舞の運動性が無ければ直撃していただろう。「どうなってんだ杏香!」「私に言わないでよ!」 ブレイズと杏香が言った。その二人だけではない。その場に居る全員が、その不可解な現象に戸惑っている。「七つ目に集まってるみたいね」「第二変身的なアレかい?」 杏香とブリーツが話すと、サフィーはナイトウォーカーのブースターの出力を上げ、七つ目へと突っ込んだ。「そんなこと、させない!」 捨て身覚悟で剣を振るうサフィー。そして、マクスンもまた、縦横無尽の魔力砲を引っ切り無しに打っている。が、七つ目は、それよりも早く、周りのナイトウォーカーの残骸や岩塊、そして、もはや遠くに見えるティホーク砦の瓦礫をも吸収している。
「何だか分かんねえが、ヤバそうだぜ。俺らも攻撃だ!」 ブレイズが言うと、杏香、カノンもWG―Σのに搭載されている、稼働し得る限りの武器を七つ目へと叩き込んだ。「……足りない」 カノンが言った。七つ目の再生速度は、以前とは比べ物にならないほど増えている。「不幸中の幸いなのは、相手が足を止めててくれるってことかしら」「攻撃もしてこないわ。この吸い込まれてる瓦礫も含めるんだとすれば、話は違うけど」 杏香とサフィーが言った。七つ目は動かず、吸い込まれている物は常に七つ目を目指して進んでいる。防御面に気を取られることが比較的少なくなったのは、一同にとって喜ばしいことだ。
「てかさ、吸い過ぎじゃね?」 ブリーツがボソリと言った。は、もはや人型を留めておらず、巨大で不秩序な瓦礫の塊になっていた。「なんだ、戦う気がねえのか?」「吸収し過ぎで動けなくなったの?」 ブレイズとサフィーが拍子抜けしている。「要塞化か?」「何か知っているの?」 マクスンに杏香が聞く。「いや……呪いの類だということは、見当がつくが……」「そうよね……」 副師団長ということは、何か情報を掴んでいるかと思って聞いてみた杏香だが、どうやら何も知らないらしい。杏香は更に思考を巡らせる。
「何をしているのかしら。守りを固めている?」「だったら、もう放っておけばいいのか?」 ブレイズの短絡的な答えに、少々イラつきながら、杏香は考えを話す。「少なくとも、準備する時間はとれたのかもしれないわね。一旦後退して、こいつの動きを見張りつつ……」 ブリーツの問いに杏香が答えていた時、マクスンは七つ目に僅かな異変を感じた。
「油断するな!」 マクスンが叫ぶのとほぼ同時に、炸裂音が響いた。巨大な鉄の風船が破裂したかのような、激しい炸裂音が響き渡る。「何だ!?」「……シールド!」 ブレイズが混乱していると、カノンがそう言い、WG―Σのシールドを前に突き出した。 突如として七つ目が弾け、呪いを帯びて赤黒く染まった瓦礫が四方八方に飛び散って、その一部が凄いスピードでWG―Σを襲っているのだ。 ブリーツ達三人のリーゼと違って、WG―Σの体は大きい。いくら機動力があるとはいえ、この数の瓦礫を避けることはできない。「……防ぎきれない」 カノンはそう言い、魔力フィールドを展開しようとした。「あたしがガウスガドリングで撃ち落とすわ。ブレイズ、あんたも!」「お、おう」 杏香はそう言って、シールドの横からガウスガドリングを、迫り来る瓦礫へと打ち付けた。ブレイズもWG―Σの右手に握られたブレードを伸縮させ、しならせながら、器用に瓦礫を切り払っている。
「これなら魔力フィールドを使わなくても何とか……」 杏香が言いかけた時、メインモニターが暗転し、コックピットに激しい衝撃が走った。「ぐおお!」「うわああっ!」「あんっ!」 ブレイズ、杏香、カノンが悲鳴をあげる。「何が起こった!?」「サブモニターを!」「掴まれてる……」 杏香の声で、ブレイズとカノンはモニターを見た。そこには元の体に戻った七つ目の手の平が間近に映し出されている。七つ目は飛び交う瓦礫に紛れてWG―Σに急接近し、右手でWG―Σの頭部を掴み、左手で肩を掴んで思いきり体重をかけ、WG―Σを押し倒したのだ。
「くそっ! ガウスガドリングだ!」「無駄」 ブレイズがガウスガドリングを発射したが、カノンの言う通り、良くて七つ目の肩の上あたりを掠るだけだった。「死角を取られたの? こいつ、学習してる!?」 杏香はそう叫びながらも、WG―Σの手足を動かし続けた。押し戻そうとしたり、踵部のブースターを吹かしたりして脱出を試みたが、七つ目の力は予想以上に強い。「頭部メインモニター損傷」「何て馬鹿力だ!」 カノンに続き、ブレイズが言った。頭部メインモニターは七つ目の手に握りつぶされたのだろうことが、モニター出力画面の一部が暗転したことで分かる。
「あ……! 二番コックピットのハッチ、開いてる」「なっ……杏香!? 大丈夫か杏香!」 杏香の姿が無い。カノンとブレイズは戦慄した。
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