ハーフエルフの少年

リンネ

第23章 語られる少年の過去

「あー」

「どうした?」

「ギルド、報告しに行かなくちゃ」

「俺行ってくるから、レナートは休んでなよ」

「いいの?」

「いいぜ?」

兄ちゃん優しい〜。
じゃお言葉に甘えよう。

「ありがとう!」

「んじゃ早速行ってくる」

「行ってらっしゃ〜い」

兄ちゃんはギルド依頼書を持って、さっさと部屋を出て行った。
今日はお留守番か〜。

「ふぁ〜...」

馬車でも寝たのに、なんか最近すぐ眠くなるや。

「キュー?」

「うん、眠くなっちゃった」

「キューキュ」

「んー疲れてはないと思うんだけど、わかんないや」

「キュー」

「そうするよ、スエールも一緒に寝る?」

「キュ」

もうスエールが何言ってるか9割わかるようになっちゃったなぁ〜。
おかげでいつでも話し相手が居るね!
それはそうと、眠い。

って事でボクはスエールと一緒に寝ることに。

「スヤァ〜....」



「おじさん達だぁれ?」

里の方、煙、凄い。

「な、何?」

手、痛い、引っ張っちゃ、やだ!

「いや、やめて...」

あ、父さん。母さん。
助けて...


「だ、ダメ!いや!やめて!」

父さんと母さんに酷いこととしないで。

「待って!やだ!父さん!」

父さんが...
あ、母さん!

「やめてー!!!!」



「ハッ!?....ハァ...ハァ...」

「キュー!」

「レナート!大丈夫か!?」

なんで...あの時の夢なんか...。

「おい!どうした!?」

「兄ちゃん...ボク...」

「怖い夢でも見たのか...?」

あぁ...汗びっしょりだ...。
兄ちゃんもすごく心配そうな顔してる。

大丈夫...なんて言っても全然説得力ないよね...。

「昔の...夢見た」

「昔の?」



5年前、エルフの里から少し離れた森の中。
ボクはそこで父さんと母さんとで静かに暮らしてた。
ハーフエルフだったボクはエルフの人達から、ずっと冷たい目で見られてたから。

ある日の夜。
里の方がなんか騒がしくて、様子を見てくるからと、父さんと母さんはボクを置いて里の方に行った。

ボクは留守番してたんだけど、しばらくして、家のドアからノックする音が聞こえた。
ボクは父さんか母さんが帰ってきたんだと思って急いでドアを開けた。

でもそこに居たのは両親じゃなく、知らないおじさん達だった。
それも、人間の。

「おじさん達だぁれ?」

「こいつか〜アイツが言ってたガキって」

アイツって誰だろう。
後々、エルフの人だとわかったけど。

「坊や、いいところに連れてってやるからついてきな」

ボクは無理やり、手を引っ張られた。

「な、何?」

ボクは抵抗した。
でも、なんの力もなかった当時は、大人の力に叶うはずもなく。

「大人しくしてろ!」

殴られた。

「いや、やめて...」

そこに父さんと母さんが戻ってきた。

「おい!うちの子をどうするつもりだ!」

「レナート!」

父さん、母さん。
助けて...

すると父さんと母さんはボクを助けようと、おじさん達に向かっていったけど、相手は数人。

「すっこんでろ!」

「ぐっ!」

「だ、ダメ!いや!やめて!」

「クタバレ!」

「あなた!」

「待って!やだ!父さん!」

父さんは切られた。

「そこのエルフも殺せ!ガキだけで充分だ」

「やめてー!!!!」

ボクの叫びも虚しく、目の前で母さんは殺された。
そしてボクも泣きじゃくり、そな旅に殴られて、どこかに連れていかれた。

森を抜けようとした時だ。

「主ら、何をしておる!」

と質問してきた老人。
ただ、質問と同時に魔法を放って、ボク以外のおじさん達は一網打尽となった。

「坊、大丈夫か?」

ボクはもう心身共に疲れ果て、何も答えることができなかった。
そんなボクを見兼ねて、爺ちゃんはボクを拾ってくれた。
最初はずっと無口だった。

喋り方を忘れたように、毎日何も喋らずに過ごした。
1年くらい。



「そんな事があったのか....」

「うん、だからボクは人間があまり好きじゃない」

「....」

「でも婆ちゃんも人間だし、父さんも人間だったから、全ての人間が嫌いなわけじゃないよ?」

「でも、レナートには爺さんも婆さんも居るし、俺も居る!もちろん今はヘレナだって居る」

「うん、ごめんね?今まで黙ってて」

「何言ってんだ。辛い事なんて思い出したくないだろ」

本当に兄ちゃんは優しい。
出会えて本当に良かった。

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