ハーフエルフの少年

リンネ

第18章 エルフの里〜少年の過去〜

ボクはスエールを連れて、エルフの里がある森へとやってきた。
ギン兄ちゃんやヘレナには悪いけど、今回だけはひとりで行かないといけない。
一応置き手紙は置いてきたけど、兄ちゃんの事だから怒って探しに行くだろうなぁ。

「兄ちゃん、ゴメンね...」

「キュー」

見えてきた。
エルフの里、シエルだ。

「止まれ」

尖った長い耳に綺麗な髪。
この里の門番のエルフみたいだ。
弓をボクに向けてる。

「混血が何の用だ」

「族長さんと話がしたいです」

「待ってろ...」

差別的な目だ。
わかってはいたけど、族長さんと話ができるだけマシかな。
しばらく待ってから族長さんらしきエルフが現れた。

「何しに来た。混血の少年」

ボクは今までの事を話した。
魔神が現れ、魔神兵器と戦ったことも。

「して、魔神に対抗する力を求めてここへ来たと」

「は、はい」

「お主、魔神がどう生まれるのか知っておるか?」

「わかりません」

「よかろう、ワシの家に来なさい」

「族長!外部の、それも混血のエルフを入れるんですか!?」

隣にいた門番が非難してる。
それも凄い表情で。

「今回は特別じゃ」

ボクは族長の後をついて行く。
道中エルフ達からの視線を感じるけど、無視しとこう。

「母さんボクと同じくらいの子がいるよ!」

「見ちゃダメ!あれは忌み子なんだから」

わかってはいたけど、うん。
わかってたよ。エルフが1番嫌いな種族。
人間でも獣人でもドワーフでもない。
ボクみたいなハーフエルフだ。

しばらくして、族長の家へたどり着いた。
中にあがり、客間に座る。

「レナート、大きくなったな」

「え?」

なんで、ボクの名前を?

「ボクを知ってるの?」

「知っておるとも」

ボク前に会ったことあるっけ?
え?でもボクは、あれ?

「あれは12年前だ。
この里にレリーメルという名のエルフの女がおった。
レリーメルはこの里にやってきた男に恋をしてな、レヤードという人間じゃった。
周りの反対を押し切り2人は結婚した。
その2年後に子を産んだのじゃ」

「それが、ボク?」

レリーメルにレヤード。
ボクの母さんと父さんの名前だ。

「それから5年はここから少し行ったところの森の中で暮らしておったが、ある日、この森に盗賊が現れた。
お前の父と母はこの里の為に戦ってくれたが、」

「やめて...ください...」

思い出した。
そうだ、ここはボクが生まれた場所。

「まぁ聞きなさい」

思い出したくない!
ボクのせいで父さんも母さんも死んだ...。

「あの夜の真実を教える」

あの夜の...真実...?

「知っての通り、この里の者はハーフエルフを忌嫌う。
おぬしも例外ではなかった。
賊が来た時に、誰かはわからんが、この森の少し行った場所にエルフの子供がひとりでいると告げ口をしよった者がおる。
当然いるのはエルフの子供じゃなく、ハーフエルフ。
すなわちレナート、おぬしがおった」

「それって...」

「賊はハーフエルフだとも思わなかったんじゃろう。
レナートをエルフと思い込み、誘拐した。
そこに君のご両親が助けに行ったが」

「殺された...」

あの時ボクは、目の前で血まみれになる父さんと母さんをただ見てるしかなかった。
そしてそのボクを救ってくれたのが爺ちゃん達。

でも今の話が本当なら...

「父さんも母さんも死んだのは...エルフのせい...って事ですよね」

「うむ、そういう事になる」

でも、なんでボクにそれを話すんだろう。
恨まれるのわかっていて...

「ボクにそれを話していいんですか?
この里を潰すかもしれないんですよ?」

「必要な事じゃ。
そして、それが魔神への道」

え?

「魔神は強い恨みを持ち、晴らそうとしても払いきれずに、憎しみの海に沈んだハーフエルフの、成れの果てじゃ」

そんな...
魔神が、ハーフエルフの成れの果て...?

「そしてレナートよ、おぬしは今の話を聞いてこの里が憎いか?」

「.....わかりません」

「遠慮することは無い。憎ければ憎いでいい」

「憎くない、と言えば嘘になります。
でもボクは、復讐する為にきたんじゃない。
魔神を倒す術を探しにきたんです。
それに、魔神にはなりたくない」

族長は顎に手を当てて考え始めた。

「ならば、この里の北門から道成に進みなさい。
ただし、神聖なエルフの土地じゃ。
他のものに見られてはならぬぞ?
夜に行くのがいいじゃろう」

夜...ボク夜苦手なんだけど...
眠くなるし。

「その道を行くと何があるんですか?」

「行けばわかる。
ただし、準備は怠るなよ。
生半可な気持ちで行けば、死ぬぞ?」

「は、はい」

ボクは族長の家で夜を待つことにした。
族長は優しい人で、爺ちゃんとは親友らしい。

そういえばギン兄ちゃんとヘレナ心配してるかな〜

「キュー...」

スエールはいつの間にか寝てたようだ。

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