日々思うこと

泉 玲

暖かい風

いつもの街並み、いつもの電車。満員電車に揺られながら外を眺める。
こういう時はいつも心に蓋をして感情を動かさないようにする。人に押されたり睨まれたりするのに毎回心を揺らしていると、心がいくつあっても足りないと思うからだ。
そうして電車をやり過ごし、降りて歩いていく。人通りの少ない、緑のある道を選んだ。少し、静かな道で落ち着きたかった。緑を見て慰めを貰いたかったのかもしれない。どんなに感情を抱かないようにと思っても、やはり少しずつ、はっきりと負の感情は積み上がっていく。
ため息をついて顔を上げた、その時だった。優しく風が顔を撫でていったのは。ゆっくりと通っていったその風に、どうしても思いやりを感じてしまうのは私だけだろうか。
自然には心がない、と当たり前に思っているが、こういう時には風や葉が気持ちに寄り添ってくれているように感じ、少し期待をしてしまう。毎日現実に生きている中にたまにはこういう気持ちを抱くことがあってもいいだろうと、そう思うと同時に、自分はまだこのような小さな暖かい気持ちを抱くことが出来るのだと少し嬉しく思う。

風が、今度は軽く爽やかに通り過ぎていった。

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